「抑うつ気分」「抑うつ症状」「うつ状態」「うつ病」
似たような用語が使われるのですが、その違いについて書いてみます
Table of Contents
抑うつ気分
抑うつ気分というのは、楽しい、嬉しい、悲しい、怒り、などの気分/感情の一つの状態を表します。抑うつ気分は誰でもが経験することのあるものです。気分と感情の違いは明確ではありませんが、気分の方が比較的長く持続し、感情ほどはっきりとわかれていないものを表しているように思います。
抑うつ症状
抑うつ症状は症状の集まりを指します。抑うつ症状には、
憂うつ/気分の日内変動/悲しみ/睡眠障害/食欲減退/性欲減退/疲労感/思考の混乱/絶望感/焦り/空虚感/自殺念慮
などが含まれ、抑うつ気分は抑うつ症状の1つになります。抑うつ症状も程度の差はありますが、誰でも経験することがあるものです
うつ状態
うつ状態は抑うつ症状の高い状態を表します。正常か異常か、というラインが出てくるため、うつ状態という言葉を使うときは何らかの判断の1つの基準になっています。症状の重症度を基準にすることで、うつ状態にある人とない人に分類が出来るようになります。当ルームでは初回カウンセリングでPHQ9という抑うつ症状の心理尺度を使ってクライエントさんの重症度を見ています。
抑うつ気分、抑うつ症状は誰もが経験することはありますが、うつ状態に入る人となると少なくなります。うつ状態といった場合、症状の高さに加えて、持続期間が基準に入ってくるように思います。
うつ病
うつ病は精神疾患の名前になります。かつてのうつ病はうつ状態の病因と考えられていましたが、診断基準が変わり、症状の有無と日常生活の支障の程度から診断がなされるようになりました。
診断基準としては、「持続する憂鬱な気分」または「物事への興味関心の喪失」のどちらかにあてはまること、そして「その期間はほとんど一日中、2週間持続していること」が必要とされています。そのためうつ病であっても憂鬱な気分が見られない方もおられます。
うつ状態にあってもそれがイコールうつ病によるものとは限りません。例えば高齢者のうつ病と認知症は同じような状態像を示し、鑑別が困難であることが示されています。症状の程度だけでなく、「うつ病のエピソードにあたるかどうか」が判断されます。そして診断にあてはまるかどうかと、他に可能性のある身体疾患、精神疾患を除外することが重要となります。
うつ病は以前は気分障害という診断分類でした。うつ病、双極性障害、気分変調性障害を含んで気分障害と言われていましたが、最近気分障害という分類はなくなりました。
近年は重症化する典型的なうつ病は減り、軽度から中等度の症状が残りながらも社会生活を送れているものが増えたと言われています。また、診断の確定が治療効果にそれほど影響していないことを示した研究も出てきています。精神疾患の細かい分類も増えていますし、診断も難しくなっているようです。
カウンセリングの場合、正確な診断があると、その人がどんなことに困りやすいか、今後どのような経過をたどるのかを予測しやすくなるように思います。カウンセリングでは、「どのような理由で抑うつ状態に陥っているのか、そしてそれがどのように続いているのか」を明らかにして、改善方法を考えていきます