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カウンセリングに効果はあるのか?
カウンセリングを受けたいと思いながらも、効果があるのだろうか?どのくらい通えばよくなるのだろうか?と疑問をもたれる方もおられると思います。何をもってカウンセリングに効果があったというかも様々ですが、大きくは悩み事の解消と症状の軽減の2つになると思います。
悩み事は個別具体的なものですので、相談に来られた方の全体的な検証を行うことは出来ません。また悩み事の解消というのは一つの方向性をもたないことが多いものでもあります。例えば、「会社にいけない」という悩みの解消は、また出勤できるようになることかもしれませんし、他の仕事に転職することかもしれません。「家事ができない」という悩みの解消は、また家事が出来るようになることかもしれませんし、家族が手伝ってくれるようになることかもしれません。悩み事をどのように解消するのがいいのかは個々人によって異なり、一つの方向性で測ることは難しいのです。
一方で症状の改善に関しては一つの方向性があるように思います。誰でも病気でいるよりは健康でありたいと思うでしょうし、気分は落ち込んでいるより晴れている方が良いでしょう。不安で落ち着かないよりもこころ穏やかに過ごせる方が良いでしょうし、眠れないよりは眠れた方が良いと思います。
TRACE高宮ではこれまでに来談されたほとんど全ての方に、うつ、不安、不眠のアンケートを継続的に取ってきました。うつはPHQ9、不安はGAD7、不眠はアテネ不眠尺度という、学術的にも使用されているものです。今回2019年8月から2024年2月の間にカウンセリングに来られた296名の方に対するカウンセリングの効果について検証しましたので、参考にされてください。この内容は2024年認知療法・認知行動療法学会で学術的に発表しました。
2019-2024年(カウンセリングの効果)
効果の評価基準にも絶対的なものはないのですが、イギリスのIAPTという大規模な研究では、7-20セッションの認知行動療法を受けると、うつと不安が軽度域まで軽減することが示されています。それを参考にして、初回に中等度以上の症状を示した人を対象に、カウンセリングの経過で軽度以下に症状が下がったことをもって効果ありと評価しました。加えて反応率という指標を採用して、中等度以上の症状を示した人を対象に、得点が半減したことも効果ありと評価することにしました。2回以上アンケートを書いて来なくなった人は効果なしに含めて厳しめに評価しました(通常の研究では最後まで受けなかった人は省かれますが)。1回しかアンケートを書いてない人は検証出来ないので省きました。
うつ症状への効果
PHQ9で初回に中等度以上(10点以上)の症状があった人を対象に、軽度以下(9点以下)になったこと、また得点が半減したことをもって効果ありと評価しました。
初回10点以上を取った人が82名(平均16点)、効果の見られた人が61%(50名)、効果の見られるまでの平均セッション回数は3.3回でした。
不安への効果
GAD7で初回中等度以上(10点以上)の症状があった人を対象に、軽度以下(9点以下)になったこと、また得点が半減したことをもって効果ありと評価しました。
初回10点以上を取った人が76名(平均15点)、効果の見られた人が70%(53名)、効果の見られるまでの平均セッション回数は3.4回でした。
不眠への効果
アテネ不眠尺度で初回6点以上(不眠傾向あり)を示した人を対象に、5点以下(不眠傾向なし)になったこと、また得点が半減したことをもって効果ありと評価しました。
初回6点以上を取った人が90名(平均9点)、効果の見られた人が59%(53名)、効果の見られるまでの平均セッション回数は3.8回でした。
今回は1回しかアンケートを書いていない人は検証から省かれています。しかし得点の推移を見ると1回目から2回目の間に大きな変化が起きることが多く、1回で終わった人を含めて検証出来た場合、実際の効果はもっと高いと考えられます。
うつ、不安、不眠などの症状は、3-4回カウンセリングを受ける間に、6-7割の方に効果が見られるようです。1,2回で判断して辞めてしまわずに、3-4回は通われてみてください。この後に書いているのですが、医療機関で行っていた頃は、うつ症状は11回以内に63%の人に、不安は10回以内に74%の人効果が見られていました。精神疾患があるなど治療中の方は少し長い目で見て通ってもらえると良いと思います。
2016-2019年(医療機関でのカウンセリングの効果)
開業前は医療機関で働きながら2年半、担当したクライエントさんは、カウンセリングを受けて症状が改善しているかをアンケートを用いて地道に検証してきました。この内容は2020年に認知・行動療法学会で学術的に発表したものです。
うつ症状への効果
- 2年半の間、全部で56人の方とカウンセリングを始めていました。
- 年齢は12歳から75歳でした。
- カウンセリングの期間は1か月から23か月の間でした。
- 診断名は様々で、ほとんどの方が何かしらの精神疾患の診断を受けていました。不安症、気分障害にあてはまる方が大多数でした。
- カウンセリングの経過中10点以上(中等度以上の抑うつ症状)を示した方が、56人中27名おられました。以下は27名の特徴を書いてみます。
- カウンセリングと並行して薬物療法がおこなわれていた人が24人でした。カウンセリング開始前より薬物療法が行われていた人が19人、カウンセリングと同時期に薬物療法が開始された人が5人でした。
- カウンセリングの経過で認知行動療法を行ったものは11人でした
中等度以上の抑うつ症状を示した27名の症状の推移をグラフに示しました。横軸がカウンセリングの回数、縦軸が抑うつ得点を示し、得点が高いほど症状が重症であることを意味します。改善につれてアンケートを使った評価はしなくなりましたので、回数が進むにつれてデータは少なくなっています。
赤い線が軽度と中等度以上の症状の境目になっています。11回を超える頃(隔週で6か月目くらい)までの間に、63%の人はうつ症状が軽度以下に落ち着いておられました。なかなか安定しない人が5名、途中で来なくなった人が5名おられましたが、効果なしの方に含んでいます。
不安への効果
カウンセリングの経過中、10点以上(中等度以上の不安症状)を示した方が19名おられました。
1回目から2回目の間に大きな変化があり、10回を超える頃(隔週で5か月目くらい)までの間に、74%の人は不安が軽度以下に落ち着いておられました。なかなか安定しない方が2名、途中で来なくなった人が3名いましたが、効果なしの方に含んでいます。
全体的に見ると、6割から7割の方はカウンセリングを受けると良くなるようです。この割合は不定期に来られた方、協力して取り組めなかった方、途中で来なくなった方なども全て含んでいます。適切な頻度で通い、協力してカウンセリングに取り組めた場合、改善する割合はもっと高いと思われます。
カウンセリングでは何をしているのか?
カウンセラーは「認定行動療法士」という認知行動療法の資格を持っているのですが、カウンセリングの中で認知行動療法を適用したものは11名でした。必要なことがなされれば、特別な技法を用いることなく落ち着いていかれる方は多いようです。
カウンセリングでは何をしているかというと、「話をする」「話を聞いてもらう」「ストレスから離れる」「家族や人間関係のサポートを得る」「自分がどんな状態にあるか理解する」「自分を対象化する」「自分の状態を受け入れる」「問題の仕組みがわかる」「解決方法がわかる」などがなされているように思います。
カウンセリングを受けてみたいと思われた方がおられましたら、予約/申込みをお待ちしております。