うつ病と重要な他者からの拒絶

 わたしは大学院の時から抑うつの研究をしていましたので、うつ病や気分障害への関心はもう10年になります。その頃に書いたものは論文には至らなかったのですが、興味深い情報もあるので書き残してみようと思います

うつ病と重要な他者からの拒絶

 うつ病や気分障害などの精神疾患には、対人関係上の出来事が関係していることがあります。その中でも「重要な他者からの拒絶」は精神的に大きな影響を与えます

 拒絶経験には、断られる、無視、仲間はずれにされる、などの日常経験しうる出来事から、離婚や親子の縁を切るなど重大な出来事まであります

 他者からの拒絶経験は、悲しさ,怒り,嫉妬,孤独感,罪悪感,恥などの感情を喚起し、自尊心を下げ,自分を拒絶した相手を否定的に評価し、関係を壊す行動を促進します

 拒絶経験には、拒絶に対する過敏性、つまり、些細な出来事を経験した時に「拒絶された」と主観的に強く感じてしまう個人内のプロセスと、実際の拒絶経験、つまり、実際に対人関係において他者から拒絶されている、という2つの異なるプロセスがあります

 カウンセリングを進める上でも、クライエントさんが感じている拒絶経験が主観的な問題なのか、実際に拒絶されているのかを把握することは重要です

 主観的な経験の問題であるなら、本人の認知を変化させるカウンセリングが有益ですし、実際の対人関係上の問題であるなら、本人の対人行動に加えて、パートナーやご家族にご協力いただくことも有益になります

 実際の拒絶経験を対象とした研究は、「ストレス生成モデル」と呼ばれるものがあります。ストレス生成モデルに基づく研究では,うつ病の患者さんの対人行動の特徴が,重要な他者からの拒絶を引き起こし,サポートに乏しい社会環境を生みやすく,結果として抑うつ症状が長期化・深刻化することが示されています

 重要な他者からの拒絶を引き起こす対人行動として、「reassurance-seeking(承認や愛情を過度に求める行動傾向)」や「negative feedback seeking(自分を否定的に評価する相手との接触を求めるために、相手から否定的な評価を引き出してしまう)」が示されています

 当ルームではうつ病や気分障害に悩む方を引き受けています。個人カウンセリングでは改善が難しい時でも、パートナーやご家族の協力があれば改善が進むことがあります。当ルームへいらっしゃる時はぜひご協力いただけたらと思います。