日頃から部下を叱責していると、コロナウイルスに感染した時報告してくれなくなるよ
ツイッターで筑波大学の行動科学の先生が書いた、「感染した人を非難してはいけない」という趣旨のnoteが流れてきたので読んでみた。
すごいたくさんリツイートされて、すごいたくさんいいねがついてて、大学の先生とかが「すばらしい」「最高!」とか言ってるんだけど、わたしからすると違和感満載の内容で、素人はもちろん学問の世界にいる人でも、応用行動分析のこと、よくわかってない人が多いんだなーと思ってみていた
でも考えてみるとわたしの方が素人で、わたしの知識の方がアップデートされてない可能性もあるので、ちょっと文章で書いてみることにした
先に基の記事を読んでから下に行ってもらえるといいと思う
なぜ、感染した人を非難してはいけないか?人間行動の法則から解説する
内容を簡単にまとめると、「部下が感染したことを報告した時、上司が叱責すると、その後部下は感染したことを報告しなくなります。しかし、部下が感染を報告した時に、上司が褒めたら、部下はその後も感染したことを報告するようになります」という感じで、まずどんな現象を想定してるんだか疑問だ
普通に考えると、コロナウイルスに感染したことを上司に何回も報告するということが想定出来ないし、1回きりの報告行動が結果の操作によって起きていると仮定しているところに無理がある
図を用いて随伴性の説明がなされているのだけど、特に気になるのが図3と図7
図3:後続事象によって行動は変容する(2)
恐怖条件づけの過程で生じる回避行動のような説明だけど、普通に考えて、「ミスを報告せずにデータ入力」という行動は、「叱責なし」と何らの随伴関係にもないので、「叱責がないこと」が「データ入力」を制御してるとは考えられない。この場合、データ入力行動には別の随伴性が働いていると考えるのが自然だと思う。上の宿題の図も同じく
「増やす」と書いてあるので、松田さんはこの随伴性を「負の強化」として考えているのだと思うけれど、負の強化というのは、「直前にあったものが、ある行動をとることで消失し、その経験によって行動が増加すること」をいう。
「叱責を受けている時に、データ入力を始めると、叱責がなくなった」という現象が見られた時、データ入力は叱責によって制御されている、と考えるのであれば負の強化であるが、そのような説明ではない
同様の随伴性で図が描かれているのが図7
図7:感染者への非難は、感染に関する隠蔽を増やす
普通に考えて、自宅で休むことと叱責は場面が離れすぎてるし、どちらの行動も直前直後に叱責も非難もないので、直接的な随伴関係にはない。自宅で休むことが行動と言えるのかも疑問だ。「出勤行動が弱化された」とかならギリオッケーかも。ACTとかはこのくらい適当でいいみたいだけど
ここからはわたしのアイデアだけど、松田さんは普段の報告行動を例に挙げて説明されているので、「普段の報告行動とコロナウイルス感染の報告行動は、同じ行動クラスにある」という趣旨で書くのが応用行動分析的にいいのではと思った。以下に書いてみる
日頃から部下を叱責していると、コロナウイルスに感染した時報告してくれなくなるよ
上司が部下を叱責するということは、どの職場でもあるのではないでしょうか。例えば「部下が仕事のミスを報告した時に上司が叱責する」これは応用行動分析からすると以下のような関係にあります
図2:後続事象によって行動は変容する(1)
「ミスを報告した時に上司から叱責を受ける」という体験を繰り返すと、その後部下はミスをしても報告しなくなっていきます。だって叱られたくないから。それでも部下がミスを報告してくる時は、職務上の義務というルールによって維持されています。
月日が経ち、部下がコロナウイルスに感染してしまい、上司に報告しないといけない時が来ました。この時以下のような関係になることが予測されます
感染を報告する→叱責あり
「ミスをしたという報告」も、「コロナウイルスに感染したという報告」も、内容が変わっただけで部下にとっては同じ報告行動になるでしょう。報告すれば、おおよそ叱責されることが予想できますので。
そうなると、部下は感染したことを報告しなかったり、叱責を避けるために嘘の報告をするようになります。
そしてこのようなことが起きると、営業停止になったり、悪いうわさが流れたり、ニュースで連日見られるように、とんでもない損害を会社にもたらしかねません。
大事なことは、感染したことをすみやかに報告してもらえることなのです。
では何をしたらいいかというと、日頃から、部下の報告行動を褒めることです。
図4:後続事象によって行動は変容する(3)
褒めないにしても、叱責まではしなかったら、職務上の義務というルールにのって報告してくれるでしょう。
そしてコロナウイルスに感染しても、上司にすみやかに報告したら褒められる、ないしは叱責まではされないことが予期できれば、部下は感染したことをすみやかに報告してくるでしょう
図8:言ってくれて、ありがとな
終わり
みたいな感じですかね
しかし、今回のように突然の未曽有の事態になった時は、世間のムード、会社組織の作り出しているムードによって感染報告が抑制されるのだと思うので、そのような大規模な現象を相手に、応用行動分析に何か出来るかというと微妙
「感染しても正直に報告してください。絶対叱ったりしません」と上司が毎朝訴えるとか、感染したことを報告する場面の寸劇をみんなでおもしろおかしく練習するとか、そんなことの方が役に立ちそうな気がするのですが、そういうのが応用行動分析的な制御といえるのかは、ほぼほぼ素人のわたしにはわからないなー
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