うつ病や不安症が女性に多い心理的な理由は

 精神疾患の有病率は男性よりも女性が高く、うつ病や不安症では2倍になるとも言われています。明確な理由はわかっていませんが、思考や行動など心理的な特徴、脳や神経、ホルモンバランスなど身体的な特徴、社会的な役割の特徴があると言われています。その中でも主に心理的な特徴について書いてみます。

 そもそも女性は男性よりも強く感情が喚起されやすいなど生物的な違いがあると言われていますが、感情やストレスへの処理方略も男女で異なると言われています。

 男性はストレスに対して行動的で問題解決的な対処をとりやすく、女性は認知的な対処(考えて解消しようとする)をとりやすいと言われています。言い換えると、男性はストレス自体をどうにか軽減しようと試み、女性は自分を変えることで適応しようと試みやすいと言えます。そして適応の努力がうつ状態を起こしやすいと言えます。

 男性のストレスが仕事上の問題であるのに対して、女性のストレスは家庭や対人関係上の問題であるなど、主要なストレスに違いがあるとも言われています。

 女性は人と情緒的なつながりを求める傾向が高く、そのため対人関係に対してストレスを感じやすいと言えます。女性は結婚、出産、育児と進むにつれて、家庭にいる時間が多くなり、家族や親せきなど身近な人と接触してストレスを抱える機会が増えます。仕事がストレスになっているのであれば、業務を軽減してもらったり、配置換えをお願いしたりと、環境を変えてストレス自体を減らすこともできますが、相手が人であると思い通りにいかないことも多く、身近な他者とのストレスは、軽減が難しいものもあると思います。まじめに新しい環境に適応しようと努力される方は多く、その努力によって疲労してしまう方もおられます。相談に来られる方を見ていても、家族のサポートが得られるかどうかというのは、精神的な安定に大きく影響を与えているように思います。家庭のストレスとしては、夫婦双方の求める役割や、家庭に対して持つイメージの相違、親や親せきから求められる役割に強いストレスを感じておられる方は多いです。

 カウンセリングでは何がなされるかですが、家族や身近な人のサポートを得られるかどうかが優先されるように思います。症状が高く見られるときは活動量を減らす必要があるので、ご家族の協力を得て、一時的に家の仕事を減らしてもらったり、ストレスとなっている人がいるなら離れることが出来るかを考慮します。心理的な問題の前に、ストレスは減らせるのなら減らすほうがいいと思っています。

 家庭や育児にストレスを感じる女性の中には、自分の受けてきた教育や自分の育った家庭、理想とする家庭など、本人にとっての家庭のイメージが確固としてあり、新しい家庭と自分のイメージの相違にストレスを感じている方もおられます。自分が思っていることと違うことが起きるということを受け入れられるようになると楽になるように思います。
 また経過を聞くと「以前の自分はいい加減だった」と報告される方もおられます。昔から性格的な問題があるのでなく、抑うつ症状が高まることで、強迫性が高まっている状態なのだと思います。

 うつ状態というのは様々な背景の結果であって、その解決も様々です。同じうつ状態にあっても、必要以上に適応の努力をすることで疲労している方や、無力感を感じて必要な行動をとらなくなってしまっている方、場面場面によってそのどちらもが見られる方など様々おられます。個人がどんなことに困っていて、それがどのように起こっているのかを明らかにしながら、カウンセリングは進んでいきます。その中でも認知行動療法の、行動活性化法と認知再構成法というのは、うつ病の方の思考やイメージ、活動の問題を、幅広くカバーできているように思います。

女性のうつと不安 2009 渡辺・阿南 創元社