カウンセリングを受ける場所の違い

 「カウンセリングを受けたいけどどこに行ったらいいのか」「カウンセリングは受ける場所によって何か違うのか」気になる方も多いと思います。

 カウンセラーと言えば心理士さんの仕事ですが、その職場は、医療、教育、福祉、産業、司法矯正と幅広く、カウンセリングを受けられる場所は世の中にたくさんあるように見えます。しかし、症状や疾患がないと病院には通えませんし、社会的な問題をもってないと福祉や司法矯正機関と関わることはありません。学校や会社のカウンセリングは所属してない人は受けられません。「希望する人が誰でもカウンセリングを受けられる場所」というのは限られているのです。

 ここではわたしのこれまでの経験をもとに、カウンセリングを受けられる場所とその特徴について書いてみます。


大人がカウンセリングを受けられる場所

 大人がカウンセリングを受けられる場所としては、病院、大学の相談室、市や町の無料相談、そしてカウンセリングルームなどがあげられます。

病院

 精神科や心療内科には比較的高い確率で心理士がいます。心理士の替わりに、看護師やソーシャルワーカーがカウンセリングをしているところもあります。
 病院でのカウンセリングは、診察とセットで行われることが多いです。医師が診察をし、心理士がカウンセリングをする、というのが一般的です。病院でカウンセリングを希望するなら、予約をとり、検査や診察を受け、主治医からカウンセリングの許可が得られたらカウンセリングは受けることが出来ます。
 ほとんどの病院は保険診療の範囲でカウンセリングを行っています。そして心理士のカウンセリングは保険診療に含まれていません。病院という場所では、医師の診察としてカウンセリングの費用がかかりますが、心理士のカウンセリング自体は無料なのです。わたしがこれまで働いた病院も全て心理士のカウンセリングは無料でした。算定科目や医療費の負担割合にもよりますが、薬や検査料を除くと1000円前後でカウンセリングが受けられる計算になると思います。
 保険診療外でカウンセリングを設けている所では別にカウンセリング料がかかります。病院でカウンセリングを受けたいのであれば、一度確認されてみるといいと思います。

 無料というのはメリットですが、全くもって何らの疾患も症状もない場合は病院でのカウンセリングは受けられません。そして病院の初診は思いのほか料金がかかります。カウンセリングが目的で経済的に余裕があるのなら、カウンセリングルームにこられることもいいと思います。

大学の相談室

 臨床心理士を養成している大学院には相談室が付属しています。「心理教育相談室」と名前がついていることが多く、申込みをすると誰でもカウンセリングが受けられます。相談室は学生の実習が目的のため、比較的安価にカウンセリングを受けることが出来ます。料金は1000円から2000円台のところが多いです。担当するカウンセラーのほとんどは経験の浅い学生さんです。わたしも大学院で5年間相談員をしていましたが、相談員の実力に個人差が大きいです。大学院は学校ですので、1年ほどでカウンセラーが交替してしまいます。長期的に相談を希望される場合はデメリットかもしれません。

市役所や精神保健センター

 お住いの地域によっては、市役所や精神保健センターで、定期的に無料相談を行っているところがあります。月に1、2回程度カウンセラーが来る曜日があり、その日に予約がとれるとカウンセリングを受けることが出来ます。担当者が毎回変わったり、予定以外の日はカウンセリングが受けられないことがデメリットかもしれません。わたしも2年間市役所で担当していましたが、同じクライエントさんに2度会うことはありませんでした。


子どもがカウンセリングを受けられる場所

 子どもがカウンセリングを受けられる場所としては、学校、大学の学生相談、病院、大学の相談室、カウンセリングルームなどがあります。

学校

 小学生から高校生であれば、ほとんどの学校でスクールカウンセラーと会うことが出来ます。しかし学校にスクールカウンセラーが来るのは月に1,2回のところが多く、定期的なカウンセリングを受けることは難しいようです。カウンセラー1人で数百人の生徒と職員を担当している計算ですから、無理もないことだと思います。料金は無料です。

学生相談

 大学生になると大学の学生相談室でカウンセリングを受けることが出来ます。「保健管理センター」などの施設を設けて、常勤のカウンセラーが常駐していることが多いです。担当するカウンセラーは、大学でカウンセリングを教えている著名な先生だったりします。在学生であれば無料で受けられます。外部でカウンセリングを受けたい特別な理由がないのなら、学生相談に行ってみてもいいように思います。


受ける場所でカウンセリングの内容は変わるか

 よほど専門に特化している機関を除いて、受ける場所でカウンセリングの違いはないように思います。それほど専門性に特化したことの出来る心理士は多くありません。

 カウンセリングの内容は、受ける場所よりも、「カウンセラーの違い」によって変わるように思います。わたしも大学院や病院でカウンセラーをしていましたが、同じ場所で働いていても、同僚のカウンセラーと行っているカウンセリングは大きく異なっていました。

 場所の違いで一番変わるのは、内容よりも「設定」のように思います。「設定」とは、「何回までカウンセリングを受けられるのか」「どのくらいの頻度で受けれるのか」「どのくらいの時間話が出来るか」などになります。病院で同じ日に診察とカウンセリングが続けて行われる場合、診察の時間が遅れることでカウンセリングの時間も遅くなったり、最悪その日は受けられなくなることもあります。わたしが病院にいた時に数えた限りでは、カウンセリングが時間通りに始まったのは全体の43%でした。

 このような設定の制限はいいことではないので、納得してカウンセリングを受けたいと思うなら、個人経営のカウンセリングルームがいいように思います。


カウンセラーに料金を払うことの意味

 病院や公的機関でのカウンセリングと、個人経営のカウンセリングルームでの最も大きな違いは、カウンセラーに対して料金を払うことのように思います。

 カウンセリングが有料の機関はありますが、あなたの支払うカウンセリング料は機関に対するものであり、カウンセラーのお給料は別のところから確保されています。一方で個人経営のカウンセリングルームの場合、あなたの支払うカウンセリング料はそのままカウンセラーの収入になります。

 カウンセリングの料金がクライエントさんと別のところから支払われている場合、そのカウンセリングは、「クライエントさんのため、かつ雇い主のため」にもなることが必要になります。例えばあなたが職場の制度を使ってカウンセリングを受ける時、カウンセラーは企業から依頼を受けてカウンセリングをしているため、そのカウンセリングは「あなたのためになり、かつ雇い主である企業のためにもなるように」行われる必要があります。そのためカウンセリングの目的も両者の利益を踏まえたものであることが望ましくなります。もちろんそれがすなわち悪い結果になるということではありませんが、カウンセリングルームの方が、「クライエントさんのためのカウンセリング」をしやすいように思います。


プライバシーの守られ方

 プライバシーの守られ方についても違いがあるように思います。ほとんどの機関は人が集まって仕事が成り立っていますので、プライバシーを全く秘密にすることは難しいように思います。例えば病院を受診すると、受付、医師、看護師、検査技師など多数の職員と遭うことになりますし、診察の時は看護師や事務スタッフが背後に同席しています。わたしが以前働いていた田舎の病院では、患者さんと職員が親戚や顔見知りということはよくあることでした。またカウンセリングを実施したらその内容は少なからずカルテに残す必要があります。
 意図的にプライバシーが漏れるということはないと思いますが、自分の悩み事が特にプライバシーを守りたいものであるなら、個人経営のカウンセリングルームがいいかもしれません。


まとめ

病院や公的機関のカウンセリング

  • 料金は無料か比較的安い
  • カウンセラーがどんな人かわからない
  • カウンセラーを選べない
  • 希望した時間や頻度、間隔で受けにくい
  • 情報の共有・連携をしてもらいやすい

カウンセリングルームのカウンセリング

  • 料金がかかる
  • カウンセラーがどんな人か事前に調べられる
  • 受けたいカウンセラーを選べる
  • 時間や頻度、間隔が柔軟に決められる
  • プライバシーが守られやすい


おすすめのコラム