統合失調症の薬物治療で第1選択の薬は何か?(2020/6/14)

 統合失調症ではまず薬物治療が優先されることもあり、カウンセリングでお見かけする方は少ないです。
 統合失調症の方が医療機関でカウンセリングを受ける場合、症状の改善よりも、社会生活機能の改善を目的としてカウンセラーが付く、という形が多いように思います。

 お薬での治療が非常に重要になりますので、今日は日本神経精神薬理学会の「統合失調症の薬物治療ガイドライン」を参考に、統合失調症に標準的に推奨されているお薬についてまとめてみます。このガイドラインは書籍として出版されているのもあり、あまり多くを書くことが出来ませんので、関心のある方は文献を読まれてください。


1.初発精神病性障害

 統合失調症の薬物治療ガイドラインでは、「初発精神病性障害」「再燃/再発時」「維持期治療」「治療抵抗性」にわけて、それぞれの時期に推奨されるお薬が書いてあります

 初発精神病性障害とは、幻覚、妄想、興奮、混迷、緊張病症状などの著しい行動障害を初めて呈した状態です

初発精神病性障害の分類

  • 統合失調症
  • 統合失調感情障害
  • 妄想性障害
  • 統合失調症様障害(症状持続期間が1か月以上6か月未満)
  • 短期精神病性障害(症状持続期間が1か月未満)

 初発の時点では持続期間の情報がないため鑑別出来ないことが多いです

初発精神病性障害の薬物療法

 抗精神病薬を単剤で、適切な用量を、適切な期間使用することが基本です。初発精神病性障害は抗精神病薬への感受性が高いため、慢性期の統合失調症よりも低用量で有効性を示します。

 抗精神病薬は、脱落率、症状の改善率、治療反応率から、FGAs(第1世代抗精神病薬)よりもSGAs(第2世代抗精神病薬)が推奨されています。


初発型精神病性障害での第1選択薬

  • SGAs(第2世代抗精神病薬)


FGAs(第1世代抗精神病薬)

 クロルプロマジン(コントミン)、フルフェナジン(フルメジン)、ハロペリドール(セレネース)など

SGAs(第2世代抗精神病薬)

 アリピプラゾール(エビリファイ)、ブロナンセリン(ロナセン)、クロザピン(クロザリル)、オランザピン(ジプレキサ)、パリペリドン(インヴェガ)、ペロスピロン(ルーラン)、クエチアピン(セロクエル)、リスペリドン(リスパダール)など

 SGAs間の効果比較では、特定の薬剤として勧められるものはありません


初発型精神病性障害での抗精神病薬 最適用量/1日

  • アリピプラゾール(エビリファイ) 9.9-20mg
  • オランザピン(ジプレキサ) 8.7-17mg
  • パリペリドン(インヴェガ) 6.4mg
  • クエチアピン(セロクエル) 311.4-506mg
  • リスペリドン(リスパダール) 2-4mg
  • ハロペリドール(セレネース) 2-8mg


 治療開始後2から4週の間に60から70%の患者さんが治療反応を認めることが示されています。
※治療反応
 PANSS(Positive and Negative Syndrome Scale)で20%以上の改善

 再発予防のため、服薬は1年以上、出来るだけ長期間継続するほうがいいです。服薬をやめた場合、1年で78%、2年で98%が再燃/再発することが示されています。


2.統合失調症 再燃/再発時

 統合失調症は慢性疾患であり、薬物治療を継続していても、再燃、憎悪をきたすことも少なくありません。
※再燃
 寛解、部分寛解で3から6か月以上経過した後、悪化を示した症例

 再燃/再発時に、薬剤を増量するか切り替えるかは難しい問題です。服薬がきちんとできており、かつ血中濃度も有効域にあるのに反応がない場合は切り替えを考慮します。増量の余地があり、忍容性に問題がなければ増量が望ましいです。増量後2から4週間観察して、最大8週で反応がなければ切り替えを考慮します。

 投与開始2週間において反応不良の場合、残念ながらその後の経過は約80%の確率で改善しないとされています。

 再燃/再発時においても、薬剤選択は個別の要因を検討する必要があり、推奨されるものはないとされています


再燃/再発時の第1選択薬

  • SGAs(第2世代抗精神病薬)


再発/再燃時の抗精神病薬 有効用量/1日

  • アリピプラゾール(エビリファイ) 10mg
  • プロナンセリン(ロナセン) 2.5-10mg
  • ハロペリドール(セレネース) 10mgもしくは4mg
  • クエチアピン(セロクエル) 250mgもしくは150mg
  • リスペリドン(リスパダール) 2mg
  • ゾテピン(ロドピン) 150mg


併用療法

 抗精神病薬の併用治療が有効であることもありますが、効果は不確実で副作用は増強する可能性があります。抗不安薬、抗うつ薬、気分安定薬との併用も効果は不確実です。再燃/再発時は併用療法は推奨されていません


3.統合失調症 維持期治療

 統合失調症の病期は、急性期、安定化期、安定期に分類されます。安定化期と安定期を合わせて維持期と呼ばれることが多いです。

  • 急性期 症状が活発で不安定な時期
  • 安定化期 症状が改善し安定しつつある時期
  • 安定期 症状が消失し安定している時期

 統合失調症を発症した場合、5年以内の再発率は81.9%です。再発予防が維持期治療の最重要課題の1つです

 SGAsは再発予防の観点においてFGAsより優れており、SGAsを選択することが望ましいです。維持期治療の薬剤選択も個別の要因を検討する必要があり、推奨されるものはありません。


維持期治療での第1選択薬

  • SGAs(第2世代抗精神病薬)


4.治療抵抗性統合失調症

 初発、再発の時期において十分な治療を行っても奏功しない症例は少なくありません。

※治療抵抗性
 複数の抗精神病薬を、十分量、十分期間投薬しても改善が認められない群。2種類以上の抗精神病薬を、クロルプロマジン換算600mg/日以上、4週間以上投与して、GAFが41点以上になったことがないことが基準です。

 治療抵抗性統合失調症に対して有用であると認められている薬剤は、世界中においてクロザピンのみです。クロザピン治療が他の治療法と比較して有用であるという多数の良質なエビデンスがあります。クロザピンは他の抗精神病薬と比べて、死亡リスク、自殺リスクが有意に少ないことが示されています


治療抵抗性統合失調症治療の第1選択薬

  • クロザピン(クロザリル)


クロザピンには無顆粒球症という重篤な副作用があり、そのモニタリングが必要です
※無顆粒球症
 血液中の白血球のうち、体内に入った細菌を殺す重要な働きをする好中球(顆粒球)が著しく減ってしまい、細菌に対する抵抗力が弱くなった状態のことです。体内に入った細菌を殺すことができなくなるため、かぜのような症状として「突然の高熱」「さむけ」「のどの痛み」などの感染に伴う症状がみられます。原因となる医薬品の服薬開始後2から3か月以内に発症することが多いです。重症の感染症を起こして命の危険にさらされる場合もあります。

 統合失調症患者の20から30%が治療抵抗性ですが、クロザピン治療の許可を受けている施設が少なく、1から2%ほどしか治療を受けていません。

 忍容性の問題でクロザピンが使用できないもしくは無効な場合、m-ECT(修正型電気けいれん療法)が推奨されています。しかし、中長期的な期間で見るとm-ECTも十分な効果は確認されていません。

 クロザピンやm-ECTが無効もしくは適応できない場合でも、気分安定薬、抗うつ薬、抗不安薬などの薬剤との併用療法は推奨されていません。

 クロザピンが使用できず、現在の治療では予後不良が予測される場合、他の抗精神病薬への切り替えを考慮し、それでも効果が得られない場合は抗精神病薬の併用が考慮されます

統合失調症の抑うつ症状

 統合失調症の抑うつ症状は25%ほどに見られ、社会生活の困難や自殺リスクの増大をもたらします。

 薬剤性の抑うつ症状が疑われる場合は抗精神病薬の減量が推奨されます。ハロペリドールが使用されている場合はSGAsへの変更が推奨されます。抗うつ薬やリチウムの併用は推奨されていません。ECTは統合失調症の抑うつ症状への抗うつ効果が認められておらず推奨されていません。


抗精神病薬一般名(商品名) 開始用量、最大投薬量/1日

  • アリピプラゾール(エビリファイ) 6-12mg、30mg
  • オランザピン(ジプレキサ、ジプレキサザイディス) 5-10mg、20mg
  • クエチアピン(セロクエル) 50-75mg、750mg
  • クロザピン(クロザリル) 12.5mg、600mg
  • ゾテピン(ロドピン) 75-150mg、450mg
  • パリペリドン(インヴェガ) 6mg、12mg
  • ブロナンセリン(ロナセン) 8mg、24mg
  • ペロスピロン(ルーラン) 12mg、48mg
  • リスペリドン(リスパダール) 2mg、12mg
  • ブレクスピプラゾール(レキサルティ) 1mg、2mg
  • アセナピン(シクレスト) 10mg、20mg
  • ハロペリドール(セレネース)  0.75-2.25mg、6mg

 
 統合失調症の治療は薬がうまく効けばいいのですが、薬の効果も個人差が大きく、なかなか良くならない方もおられます。
 統合失調症の方がカウンセリングに来られたら、朝起きる、食事をとる、入浴する、寝る、余暇を楽しむ、などの生活機能の改善、仕事や人間関係など社会的機能の改善、自分の症状を理解して、受け入れ、どんなふうに人生を生きていくかを考えられるようにサポートします。


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