不安症/強迫症の薬物治療で第1選択の薬は何か?(2020/5/2)

 カウンセリングルームには精神科/心療内科へ通われている方も多く見えられます。来た方には飲んでいるお薬や治療の経過について尋ねるのですが、推奨された治療がなされていない方もおられます。
 投薬というのは疾患に対して一対一でなされるものではないのですが、その疾患に対して「標準的に推奨されている治療」というのは知っていても損はないように思いますし、これまでなされていない場合は一度医師に聞いてみるといいと思います。
 今日は学術論文を参考にしながら、精神疾患に標準的に推奨される薬物治療について書いてみます。

不安症の薬物治療

 不安症に対する薬物治療は、ベンゾジアゼピン系抗不安薬(BZD)を用いることが主流でした。しかしBZDは依存性の高さや副作用の問題があり、また全ての不安症に対して効果が見られるわけでもありません。そのため治療薬としては推奨されなくなりました。特にデパスを代表する短時間作用型の抗不安薬は依存性が高く、急性期的な使用(1か月)に限定することが推奨されています。平成30年より向精神薬を多剤併用をした場合に診療報酬が減額されるようになりました。

 一方で抗うつ薬であるSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)は全ての不安症への有効性が示されており、副作用の面からも安全性が高いものです。またSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)も有効性と安全性の高さが確認されています。

 なぜ抗うつ薬であるSSRIが不安症に効くのかというのははっきりとは明らかになっていませんが、SSRIが作用するセロトニンという物質が衝動性を静めるためと考えられているようです。

 薬物治療は海外の研究が参考にされることも多く、効果が確認されていても日本では保険適用でない薬物も多くあります。
 治療に使われる第1選択の薬剤というのは、まず忍容性(副作用や身体疾患、他の薬との飲み合わせ)を考慮して、保険適用があるもの、そして適用外でも効果が認められているものから選択されます。

 日本で使用可能なSSRIは、フルボキサミン、パロキセチン、サートラリン、エスシタロプラムの4種類、SNRIはミルナシプラン、デュロキセチン、ベンラファキシンの3種類ですが、その中で不安症治療に保険適用となっている薬剤はSSRIです

スクリーンショットの画面  自動的に生成された説明

 不安症の薬物治療では保険適応のあるSSRIを用いた単剤治療を最初に行い、十分な効果の見られない場合に他のSSRIに変更する、または効果はあるが適応外のSNRIや三環系抗うつ薬への変更を行うことが標準的には推奨されています。


不安症/強迫症治療の第1選択薬

パニック症/恐怖症の第1選択

  • パロキセチン(パキシル)
  • セルトラリン(ジョイゾロフト)

社交不安症の第1選択

  • フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)
  • パロキセチン(パキシル)
  • エスシタロプラム(レクサプロ)

強迫症の第1選択

  • フルボキサミン(ルボックス、デプロメール)
  • パロキセチン(パキシル)


一般名(商品名) 開始容量、最大容量

SSRI

  • パロキセチン(パキシル) 10-20mg、40mg
  • フルボキサミン(ルボックス、デプロメール) 50 mg、150 mg
  • セルトラリン(ジョイゾロフト) 25 mg、100 mg
  • エスシタロプラム(レクサプロ) 10 mg、20 mg

SNRI

  • デュロキセチン(サインバルタ) 20 mg、60 mg
  • ベンラファキシン(イフェクサー) 37.5 mg、225 mg
  • ミルナシプラン(トレドミン) 25 mg、100 mg

三環系抗うつ薬

  • イミプラミン(トフラニール、イミドール) 30-70 mg、200まれに300mg
  • アミトリプチニン(トリプタノール) 30-75mg、150まれに300mg
  • クロミプラミン(アナフラニール) 50 mg、225 mg
  • ノリトリプチリン(ノリトレン) 10-25mg、150mg
  • アモキサピン(アモキサン) 25-75、150まれに300mg

 単剤で効果のない場合には多剤併用がなされることもありますし、BZDが用いられることもあります。しかしそれは医師の経験と勘に頼った処方になっていきます。余談ですがカウンセリングはもっとそんな感じです

副作用

 薬物治療は、有効性と安全性を勘案して処方され、副作用が強い場合は服薬が難しくなります。24歳以下では自殺のリスクが増加したという報告もあり、説明書にも注意点として書いてあります。生活状況や身体疾患、他の薬との飲み合わせで禁忌になるものもありますので、自分の状況について医師に正直にお話されたほうがいいです。薬剤の主な副作用をあげます

SSRIの副作用
 吐き気、嘔吐、食欲不振、性機能障害、下痢、不眠

SNRIの副作用
 吐き気、嘔吐、食欲不振、性機能障害、下痢、不眠、頻脈、血圧上昇、排尿障害

三環系抗うつ薬の副作用
 頻脈、口が乾く、便秘、排尿障害、記憶障害、眠気、めまい、体重増加

BZDの副作用
 依存性,認知機能障害,筋脱力,自動車の運転ができない


 標準的に推奨される薬物治療について書きましたが、薬物治療自体の反応率や寛解率の低さ、再燃再発の高さが問題とされているのも事実です。24歳以下には有効性が確認されなかったという結果も出ています。お薬は、ある人には効くけども、ある人には効かないということがよくあるのです。
 大事なことは、特定の方法にこだわるのでなく、良くなっているのかきちんと評価しながら、納得して治療を進めることです。生活環境の調整や、社会経済的支援、カウンセリングも検討されるといいです

薬物治療の知見は更新されていきますので、また付け加えます

文献