双極性障害の薬物治療で第1選択の薬は何か?(2020/5/29)

 双極性障害は、カウンセリングよりも薬物治療が優先される精神疾患です。うつ病と間違われることが多く、精神科に通って5年10年経った後に診断されることもあります。そしてうつ病よりも自殺リスクの高い精神疾患でもあります。
 今日は、日本うつ病学会の発行する「双極性障害の薬物治療ガイドライン」を参考にして、双極性障害に対して標準的に推奨されている薬物治療について書いてみます

双極性障害とは

 双極性障害には、「激しい躁状態と激しいうつ状態が循環するⅠ型障害」と、「軽い躁状態と激しいうつ状態が循環するⅡ型障害」があります。躁状態の時には気分が高揚し、お金を浪費したり、人間関係でトラブルを起こしたり、職業を失ったり、社会的信用を失いやすい状態になります。

双極1型障害 躁病エピソードの診断基準 DSM-5

以下のA~Eをすべて満たす必要があります。

A.気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的で、またはいらだたしい、いつもとは異なった期間が少なくとも1週間持続する(入院治療が必要な場合、持続期間は関係ない)。

B.気分の障害の期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上)が持続しており(気分が単にいらだたしい場合は4つ)、はっきりと認められる程度に存在している。

  1. 自尊心の肥大、または誇大
  2. 睡眠欲求の減少(例:3時間眠っただけでよく休めたと感じる)
  3. 普段よりも多弁であるか、喋り続けようとする
  4. 観念奔逸(考えがまとまらず発言がバラバラ)、またはいくつもの考えが競い合っているという主観的な体験
  5. 注意散漫(注意があまりにも容易に、重要でないかまたは関係のない外観刺激によって他に転じる)
  6. 目標志向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加、または精神運動性の焦燥
  7. まずい結果になる可能性が高い快楽的活動に熱中する(例:制御のきかない買いあさり、性的無分別、ばかげた商売への投資などに専念すること)。

C.症状は混合性エピソードの基準を満たさない。

D.気分の障害は、職業的機能や日常の社会活動または他者との人間関係に著しい障害を起こすほど、または自己または他者を傷つけるのを防ぐため入院が必要であるほど重篤であるか、または精神病性の特徴が存在する。

E.症状は、物質(例:乱用薬物、投薬、あるいは他の治療)の直接的な生理学的作用、または一般身体疾患(例:甲状腺機能亢進症)によるものではない。

<注:身体的な抗うつ治療(例:投薬、電気けいれん療法、光療法)によって明らかに引き起こされた躁病様のエピソードは、双極Ⅰ型障害の診断にあてはまらない>


双極Ⅱ型障害 軽躁病エピソードの診断基準 DSM-5

以下のA~Eをすべて満たす必要がある。

A: 異常かつ持続的な、高揚し・開放的または易怒的な気分、そして異常かつ持続的な増大した活動または活力が一日のうち殆どほぼ毎日存在する、いつもと違った期間が少なくとも4日連続で持続する。

B: 気分の障害と活動と活力の増大の期間中、以下の症状のうち3つ(またはそれ以上、気分が単に易怒的な場合は4つ)が、はっきりと認められる程強く、通常のふるまいからの変化として持続して存在したことがある。

  1. 自尊心の肥大、または誇大
  2. 睡眠欲求の減少(例えば、3時間眠っただけでよく休めたと感じる)
  3. 普段よりも多弁であるか、しゃべり続けようとする
  4. 観念奔逸、またはいくつもの考えが競い合っているという主観的な体験
  5. 注意散漫(すなわち、注意があまりにも容易に、重要でないかまたは関係のない外的刺激によって他に転じること)が報告されるか観察されること
  6. 目標志向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加、または精神運動性の焦燥
  7. まずい結果になる可能性が高い楽しい活動に熱中すること(例えば制御のきかない買いあさり、性的無分別、またはばかけた商売への投資などに専念すること)

C: そのエピソードが、症状が無いときのその人の性格特性ではない、機能における明確な変化を示している。

D: 気分の障害と機能の変化が他者によって観察できる。

E: 気分の障害は、社会的または職業的機能に著しい障害を起こすほど、入院が必要であるほど重篤ではない。もし精神病性の特徴が存在するのであれば躁病と定義する

<注:身体的な抗うつ治療(例:投薬、電気けいれん療法、光療法)によって明らかに引き起こされた躁病様のエピソードは、双極Ⅰ型障害の診断にあてはまらない>

飯田橋東口診療所HPを一部改変

 
 躁症状の有無に気づくことがうつ病との鑑別に重要となりますが、躁症状は本人から自発的に語られることはなく、気づかれにくいです

 「双極性障害の薬物治療ガイドライン」では、「躁病エピソード/うつ病エピソード」に分けてそれぞれに対する第1選択薬が書かれています


1.躁病エピソードの治療

 リチウムはおよそ 60 年にわたって躁病治療の第一選択薬としての立場を維持してきています。有効な薬物の中でリチウムが最も廉価であるという医療経済学的な観点から、まずはリチウム単剤を第一選択薬と考えるべきです。


躁病エピソードの第1選択薬(軽度の場合)

  • リチウム(リーマス)


 リチウムが無効の場合にはバルプロ酸を考慮することになります。
 非定型抗精神病薬(AAP)(リスペリドン(リスパダール)、オランザピン(ジプレキサ)、アリピプラゾール(エビリファイ)、クエチアピン(セロクエル)、パリペリドン(インヴェガ)、アセナピン(シクレスト))の単剤投与も選択肢になります。
 AAP自体に気分安定薬様の作用があることが期待されています。世界のさまざまなガイドラインでは、躁病エピソードの第一選択薬として、AAPの単独投与が候補に挙がっています。AAPの方が気分安定薬よりも効果的であったとの報告も出ています。

 躁病エピソードは急速に悪化することがあるため、外来治療では対応できず、入院になることもあります。気分安定薬では即効性が期待できず、鎮静作用の強い抗精神病薬を併用することが多いです。安定した地点で抗精神病薬を漸減中止し、気分安定薬単剤で維持していく方法が一般的です。AAPが選ばれることが多いですが、どのAAPを選ぶかについて明確な指針はなく、副作用によって選択することになります。


躁病エピソードの第1選択薬(中等度から重度の場合)

  • リチウム(リーマス)+非定型抗精神病薬(AAP)の併用
    (オランザピン(ジプレキサ)、アリピプラゾール(エビリファイ)、クエチアピン(セロクエル)、リスペリドン(リスパダール))


薬剤ごとのエビデンス

気分安定薬

リチウム(リーマス)
 プラセボよりも有意に大きな抗躁効果を発揮します。およそ60年にわたって、リチウムは躁病治療の第一選択薬としての立場を維持してきました。しかしリチウムに即効性はないため、興奮や易怒性の激しい場合にはAAPを併用することが必要になります。

バルプロ酸(デパケン)
 プラセボよりも有意に大きな抗躁効果を発揮します。再発回数が多い躁病患者にも抗躁効果を発揮し、焦燥感の強い患者、混合状態、ラピッドサイクラーにも奏効する場合があります。
※混合状態
 うつ状態と躁状態が混じって出現すること
※ラピッドサイクラー(急速交代化)
 躁病エピソードと抑うつエピソードを1年に4回以上繰り返すこと

カルバマゼピン(テグレトール)
 プラセボよりも有意に大きな抗躁効果を発揮することが確認されています。

非定型抗精神病薬(AAP)

オランザピン(ジプレキサ)
 プラセボよりも有意に大きな抗躁効果を発揮します。食欲増加や体重増加、脂質異常、血糖値上昇など糖尿病の増悪を来たしやすく、糖尿病の患者には投与禁忌です

アリピプラゾール(エビリファイ)
 プラセボよりも有意に大きな抗躁効果を発揮します。アカシジアの頻度が高いとされています。
※アカシジア
 抗精神病薬の副作用で起こる錐体外路症状のひとつ。「座ったままでいられない」「じっとしていられない」「下肢のむずむず感」「灼熱感」「下肢の絶え間ない動き、足踏み」「姿 勢の頻繁な変更」など。薬物の投与開始や増量後「数日以内」に出現することが多いのですが、数カ月間以上服用を続けた後に出現することもあります。

クエチアピン(セロクエル)(保険適用外)
 プラセボよりも有意に大きな抗躁効果を発揮します。リチウムまたはバルプロ酸に対する付加的治療でも有効性が認められています。錐体外路症状や高プロラクチン血症が生じにくいのも特徴です。糖尿病では投与禁忌です。

リスペリドン(リスパダール)(保険適用外)
 プラセボよりも有意に大きな抗躁効果を発揮します。錐体外路症状や高プロラクチン血症を生じることが比較的多いです。

パリペリドン(インヴェガ)(保険適用外)
 プラセボよりも大きな抗躁効果を発揮します。頭痛、眠気、アカシジアが比較的多いです。

定型抗精神病薬(TAP)

 クロルプロマジン(コントミン)、スルトプリド(バルネチール)、ハロペリドール(セレネース)、レボメプロマジン(レボトミン)、チミペロン(トロペロン)(注射剤のみ適用)、ゾテピン(ロドピン)(保険適用外)なども古くから用いられてきました。錐体外路症状や過鎮静、うつ転の危険性などから、慎重に選択すべきです。


2.抑うつエピソードの治療

 クエチアピン(ビプレッソ)、リチウム(リーマス)、オランザピン(ジプレキサ)、ラモトリギン(ラミクタール)による単剤治療が推奨される治療です。しかしオランザピン、クエチアピン以外の薬剤は保険適用外です。


抑うつエピソードの第1選択薬

  • クエチアピン(ビプレッソ徐放錠)
  • オランザピン(ジプレキサ)
  • リチウム(リーマス)
  • ラモトリギン(ラミクタール)
  • リチウム(リーマス)+ラモトリギン(ラミクタール)の併用療法


薬剤ごとのエビデンス

抗精神病薬

クエチアピン(ビプレッソ)
 有効であったという報告があります。またリチウムと比較しても有効だったという報告があります。

オランザピン(ジプレキサ)
 有効だったという報告があります。

アリピプラゾール(エビリファイ)(保険適用外)
 単独での効果は示されていません。

気分安定薬

リチウム(リーマス)(保険適用外)
 プラセボと比較して有効であったという報告と、有意差を認めなかったという報告があります。

ラモトリギン(ラミクタール)(保険適用外)
 有効であったという報告と、有効でなかったという報告があります。治療前のHRSD(ハミルトンうつ病評価尺度得点)が24点以下(軽症から中等症)の症例群に対しては効果がなく、25点以上(中等症から重症)の症例群に対しては有効であった、という報告があります。

カルバマゼピン(テグレトール)(保険適用外)
 有効性を示した小規模な研究が1つあります。

バルプロ酸(デパケン)(保険適用外)
 有効であるという報告と有効でないという報告があります。

抗うつ薬

 fluoxetine(未承認)、パロキセチン(パキシル)、イミプラミン(トフラニール)、tranylcypromine(未承認)が、プラセボよりも有効であるという報告があります。
 抗うつ薬を用いる際には、躁転また急速交代化のリスクを常に考慮すべきです。躁転のリスクは、SSRIは2~3%、三環系抗うつ薬は11.2%という報告です。
 気分安定薬との併用により躁転のリスクが回避できるという報告があります。急速交代型では、気分安定薬との併用であっても経過を悪化させるという報告があります。

 躁転や急速交代化のリスクを考慮すれば、抗うつ薬(特に三環系抗うつ薬)を単独で治療に用いることは推奨されません。急速交代型の場合には、気分安定薬との併用であっても、抗うつ薬の使用は推奨されません

併用療法

気分安定薬+抗うつ薬の併用
 臨床現場では、リチウムやバルプロ酸をはじめとする気分安定薬と、SSRI(セロトニン再取り込み阻害薬)などの抗うつ薬を組み合わせて、抑うつエピソードの治療をしていることが多いです。しかし、併用療法の有効性に関してはエビデンス・レベルの高い報告はされていません。気分安定薬と抗うつ薬の併用は、気分安定薬の単独治療と比較しても、効果において有意差が認められていません。

気分安定薬+気分安定薬の併用療法
 気分安定薬同士の併用治療の有効性に関しては、リチウム(リーマス)+ラモトリギン(ラミクタール)がプラセボよりも有効であったという報告を除き、エビデンス・レベルの高い報告はされていません。

双極Ⅱ型障害の薬物治療

 fluoxetine(日本未発売)とベンラファキシン(イフェクサー)が有効で、かつ軽躁転のリスクが低いという報告があります。しかし同様の報告はないことから、双極Ⅱ型障害に関しても、抗うつ薬の使用は慎重に行うべきとされています。


3.維持療法(再発予防)

 4年転帰を調べた研究では72%が再発しており、双極性障害には維持療法(再発予防療法)が重要です。

 リチウム(リーマス)、ラモトリギン(ラミクタール)、オランザピン(ジプレキサ)、クエチアピン(セロクエル、ビプレッソ)は、躁病および抑うつエピソード両方の再発予防効果が、アリピプラゾール(エビリファイ)は、躁病エピソードの再発に対して予防効果が示されています。


維持療法(再発予防療法)での第1選択薬 

  • リチウム(リーマス)


薬剤ごとのエビデンス

気分安定薬

リチウム(リーマス)(保険適用外)
 プラセボ薬、バルプロ酸(デパケン)に比べて、再発までの期間を有意に延長することが確認されています。またリチウムには自殺予防効果も示されています。

ラモトリギン(ラミクタール)
 躁病エピソード、抑うつエピソードのいずれにおいても再発予防効果が認められています。抑うつエピソードの予防効果がより顕著です。リチウムとラモトリギンの併用療法にも有効性が示されています。

バルプロ酸(デパケン)(保険適用外)
 再発までの期間に有効性は示されていませんが、治療からの脱落率は有意に低いことが示されています。

カルバマゼピン(テグレトール)(保険適用外)
 リチウムと同等であったことを示す研究もありますが、再発予防に大きな効果は示されていません。また脱落率はリチウムよりも高いです。

抗精神病薬

オランザピン(ジプレキサ)(保険適用外)
 再発予防効果が示されています。躁病エピソードの予防効果ではリチウムに勝り、抑うつエピソードの予防については差がありません。

クエチアピン(セロクエル、ビプレッソ)(保険適用外)
 抑うつエピソードに再発予防効果が見られた一方、躁病エピソードには効果が見られていません。

リスペリドン(リスパダール)持効性注射薬(保険適用外)
 再発率が有意に低かったとの報告があります。

アリピプラゾール(エビリファイ)(保険適用外)
 再発予防効果は躁病エピソードのみに見られ、抑うつエピソードへの効果は見られていません。

パリペリドン(インヴェガ)(適用外)
 再発までの期間を有意に延長させることが示されています。効果はプラセボより長く、オランザピン(ジプレキサ)より短いことが示されています。

その他(保険適用外)

ラメルテオン(ロゼレム)
 不眠を伴う寛解期の双極性障害患者に対して、再発までの期間を有意に延長させたとの報告があります。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬(BZD)
 長期経過に良い影響を持つ証拠はありません。ストレスに伴って不眠が生じ、再発のリスクが高まることが懸念される場合、などには一時的に使用する場合もありますが、漫然と長期的に投与すべきではありません。

併用療法

リチウム(リーマス)+バルプロ酸(デパケン)の併用
 バルプロ酸単剤に比べて再発リスクが有意に低いことが示されています。リチウム単剤との間に有意差は見られていません。

気分安定薬+クエチアピン(セロクエル、ビプレッソ)の併用
 再発が減少することが示されています。

気分安定薬+アリピプラゾール(エビリファイ)の併用
 リチウムに反応しなかった患者にアリピプラゾールを追加投与し、予防効果が認められています。


双極Ⅱ型障害の維持療法

 双極Ⅱ型を対象とした臨床試験は少なく、Ⅰ型に比べるとその判断は難しいです。リチウム(リーマス)、ラモトリギン(ラミクタール)、カルバマゼピン(テグレトール)の有効性が示唆されています。SSRIを推奨する論文も報告されていますが、躁転あるいは悪化を懸念する意見もあります。

急速交代型の維持療法

 クエチアピン(セロクエル)が有効であったという報告があります。三環系抗うつ薬は急速交代化を惹起するため中止する必要があります。ドーパミン作動薬,エストロゲンなどは急速交代化を喚起することが指摘されています。

 甲状腺機能低下症が急速交代型の危険因子になるとされています。治療抵抗性の急速交代型では、甲状腺ホルモン剤の投与が有効な可能性があります。


4.気分安定薬治療のガイドライン

 2から3ヶ月に1回をめどに、リチウム濃度測定を行います。投与初期、又は用量を増量した時には1週間に1回程度をめどに測定します。必ず朝方服薬前の血中リチウム濃度を測定します。増量時、再発時、相互作用が疑われる薬剤の併用開始時、身体疾患合併時、服薬不遵守が疑われる時、副作用発現時、中毒が疑われる時などにも測定を行います。血中濃度は、トラフ値(最低値)を測定します。朝方服薬前に測定することが多いです。

 低用量に比べ、高用量の方が有効性は高いですが、副作用も強いです。低用量で予防できるなら低用量でよく、効果が不十分な場合に高用量を検討します。

 急激な中止は再発のリスクを高めます。中止する場合は、2週間~1ヶ月以上かけゆっくり減量します。リチウム中毒の危険性が生じるため、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は併用すべきではないとされています。

気分安定薬の有効血中濃度

リチウム

 0.4から1.0mEq/L(mM)(躁病エピソードの場合には1.0mEq/L(mM)前後)

バルプロ酸の血中濃度

 70から100µg/mL (120µg/mLを超えないように)

カルバマゼピンの血中濃度

 5から10µg/mL。気分安定薬としての有効血中濃度は厳密には検討されていません。

気分安定薬の副作用

リチウム(リーマス)の副作用

 手指の微細な振戦(27%)や多尿(30~35%)、甲状腺機能低下(5~35%)、記憶障害(28%)、体重増加(19%)、鎮静(12%)及び消化器症状(10%)などがあります。まれに、徐脈、洞機能不全症候群、腎機能障害を生じることがあり注意が必要です。リチウムに特異的なものとしてはEbstein奇形があり、妊婦への投与は禁忌になっています。腎濃縮能低下、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、体重増加が生じることがあります。GFR(糸球体濾過量)、TSH測定、血中カルシウム濃度がスクリーニングに役立ちます。

バルプロ酸(デパケン)の副作用

 嘔気(7~34%)や過鎮静(7~16%)、血小板減少(27%)や白血球減少、頭痛(10%)などがしばしば生じます。多嚢胞性卵胞症候群、高アンモニア血症、膵炎、薬疹にも注意が必要です。催奇性も比較的高く注意が必要です。バルプロ酸は薬物代謝酵素を阻害するため、併用薬の濃度を上げることがあります。
※催奇性
 奇形を生じさせる性質や作用のこと。胎児に奇形を生じる危険性。

カルバマゼピン(テグレトール)の副作用

 めまい(44%)、SIADH(バゾプレシン分泌過剰症)(5~40%)、傾眠(32%)、嘔気(29%)、嘔吐(18%)、薬疹(13%)。肝機能障害、血小板減少や白血球減少などを認めることもあります。稀に全身症状を伴う重篤な薬疹(スティーブンス・ジョンソン症候群)を生じることがあります。カルバマゼピンは薬物代謝酵素を誘導するため、併用薬の濃度を下げることがあります。

ラモトリギン(ラミクタール)の副作用

 皮膚粘膜眼症候群(スチーブンス・ジョンソン症候群)や中毒性表皮壊死症(ライエル症候群)などの重篤な皮膚障害が現れることがありますので十分に注意すべきです。少量からの開始と緩徐に漸増することが推奨されています。

妊娠・出産期の注意

 リチウム、バルプロ酸などの気分安定薬は、妊娠の最初の3ヶ月に服用した場合に危険性が増します。服用中は原則避妊をする必要があります。カルバマゼピン(テグレトール)、ラモトリギン(ラミクタール)、および非定型抗精神病薬(AAP)も安全性は確立していません。
 授乳中はリチウムを投与すべきではありませんが、バルプロ酸、カルバマゼピンは、問題となることは少ないとされています。


気分安定薬の一般名(商品名) 開始用量、最大投薬量/1日

  • リチウム(リーマス)  400から600mg、1200mg
  • バルプロ酸(デパケン)  400から1200mg
  • カルバマゼピン(テグレトール)  200から400mg、1200mg
  • ラモトリギン(ラミクタール) 25mg、400mg

抗精神病薬の一般名(商品名) 開始用量、最大投薬量/1日

  • オランザピン(ジプレキサ) 10mg、20mg(躁病エピソード)、5mg、20mg(抑うつエピソード)
  • クエチアピン(ビプレッソ) 50mg、300mg(抑うつエピソード)
  • アリピプラゾール(エビリファイ) 12~24mg、30mg(躁病エピソード)

 
 双極性障害は悪化した状態ではコミュニケーションをとることも難しく、カウンセリングよりも優先して薬物治療が重要になります。症状がある程度落ち着いた後は、カウンセリングや社会経済的支援も効果を発揮できます。カウンセリングで再発や悪化の兆候に気づけるようになると、自分で自分をコントロールしやすくなり、社会生活も維持しやすくなります。


文献


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