話題の本を図書館で借りて読んでみた
分厚い本だけど2日くらいで読み終わった
すごいわかりやすい本だった
第1世代の行動療法から第3世代の臨床行動分析まで網羅的に書いてある
気になった所がいくつかあったので書いてみる
P18,23に、「要素的実存主義と文脈主義」「方法論的行動主義と徹底的行動主義」「イギリスとアメリカ」「治療対象の違い」など、行動療法を対比的に描かれた図が乗っている
でも、こういう風にきれいにわかれるのかな?
レスポンデント条件づけ、ウォルピ、不安症などは要素的実存主義に分類されてるけど、ウォルピに学んだ山上先生は「認知も行動(刺激と反応)としてとる」って言われてたので、徹底的行動主義だと思う
イギリスが要素的実存主義になってるけど、方法論的行動主義のワトソンはアメリカだし
認知療法と行動療法の対比なのかな?と思ったけど、ベックはアメリカだ
…
三田村先生、お話したことはないけれど、いつか機会があれば聞いてみよう
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P82の負の強化の例が典型的な例ではなかったことが気になった
太郎からかまわれそうになる→お母さんのところに駆け寄る→かまわれることなし
が負の強化の例に挙げられてるけれど、負の強化の典型例と言えば
電気ショックを受けている→レバーを押す→電気ショックが止まる
レバーを押すと電気ショックが止まる、を経験するとレバー押し行動が強化される、ってのが典型的なものだと思う
載っていた例を使うなら
太郎からかまわれている→お母さんのところに駆け寄る→かまわれることなし
だと思う
あとは、
太郎の接近あり→お母さんのところに駆け寄る→太郎の接近なし
太郎からかまわれる不安あり→お母さんのところに駆け寄る→太郎にかまわれる不安なし
とかになるかな
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確立操作の説明が詳しくされていた
動機づけを高める操作が確立操作、動機づけを低める操作が無効操作と言われることを初めて知った
余談だけど、弱化子の弱化力を高める操作は確立操作と読ぶのか?別の用語があるのか?ちゃんとした専門家に聞きたいんだけどまだ実現していない
確立操作の作用は、
強化子の機能を低減させることを価値変更効果
行動が増加することを行動変化効果
と呼ぶらしい
…説明の違いはわかるのだけれど、結局は行動の増加によって判断されるのだろうから、この2つの弁別って何によってなされるんだろうか?
授業とかだったら聞いてみたい
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この本の中で一番好きな所はP81だった
「お母さんが子どもの宿題を強化しようとして子どもに提示するなにかは、強化子として機能するだろう刺激なのであって、強化子と読んでしまうわけにはいかない。そこで仮定の強化子と読んで実際の強化子と区別する」ってところがよかった
三田村先生、ラディカルだ
行動療法の本でこの重要な部分を書かれているものをみたことがない
認知行動療法家を自称する人はたくさんいるけれど、これを知っているかどうかで行動療法家としてのレベルが判明するとさえ思う
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P147から巨視的アプローチという言葉が出てきて急展開する
巨視的アプローチでは、3項随伴性は役立つかどうかが重要であり、いくらか離れた関係にあっても、機能的な関係があり、行動の予測と影響に有用であれば問題ないらしい
「強化の60秒ルール」とかわたしは勉強したけれど、人間の場合近接性は必ずしも重要ではないらしい
確かにそうなんだけど、第3世代に渡るところで実験的機能分析も捨ててしまって、臨床行動分析は応用行動分析とはだいぶん違うモノになったんだなあ
これって第1世代の人たちはどう思ってるんだろうか
わたし、認知療法寄り人たちが臨床行動分析を推しているのかと思ってたんだけど、臨床行動分析って、関西学院大学とかの行動療法の本場の人たちが中心になってやってるみたいだ
行動療法の人たちが受け入れるに至ったニーズがあるのだろうから、日本での歴史的な流れも気になる
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読み進めるにつれてここから臨床行動分析に入っていくのだけど、9章から、覚えないとその先が全く理解できない、たくさんの内的な概念が出てくる
特にP192からの「体験の回避を支える3つの文脈」はマストな気がした
字義的な文脈
言葉を文字通りに受け取らせるまじめな文脈、例えばNHKのキャスターが真剣な表情で原稿を読み上げるという文脈。しかしニュースキャスターを模したお笑い芸人がちょんまげ頭で読み上げても誰もいそいそと雨戸を締めたりはしない。ルールを真に受けさせる雰囲気や状況は認知的フュージョンを強める
理由づけの文脈
公的行動の原因は私的事象であるというルールを支える文脈。「気分が良くならないと外出は出来ない」といった理由を信じたり、他者がその理由によって対応をかえたりする文脈「具合が悪いならしかたない」など。理由とされているものが変わらない限り自分の行動も変わらないという強いフュージョンが維持される
コントロールしようという文脈
私的事象をコントロールすべきだというルールを支える文脈。「落ち込むな。元気を出せ」「ネガティブな考えは良くない事だ」といったルールを支える文脈。薬のCMや自己啓発本や助言など。体験の回避と認知的フュージョンを支えている
…
1日たつと忘れそう
P163からのセルフモニタリングの話も、知っておいたほうがいい話だった
- 行動療法のセラピストの仕事は、クライエントの体験に耳を傾け、純粋タクト→トラッキングのループをクライエントが作り上げられるようにサポートすること
- セラピストは、クライエントが今この瞬間を純粋タクトできるように促し続けることでセルフモニタリングのスキルを高めることが出来る
臨床行動分析と応用行動分析との相違は結構なもので、結構な量の新しい知識を詰めないと理解できないように思う
逆に言うと、関心を持った人は誰でも、第3世代に転学して始められるのだとしたら、それはそれでいいのかもしれない