慢性痛のセミナーに出ているので、読んでなかったUPの慢性痛の章を読んで重要点を書き残してみます
Table of Contents
慢性疼痛
慢性疼痛は、組織の損傷が確認できない3か月以上続く痛みです
アメリカでは1億人が影響を受けており、医療費および生産性の損失により最大6350億ドルの損失が発生しています
痛みは感覚的側面と情動的側面を含む多次元的な構成概念です
「痛みと感情の根底には共通の機序がある」と言う考えが支持され始めています
神経症傾向と痛み
神経症傾向は25年後の身体的障がいを予測します
神経症傾向は「痛みの破局視」と「痛みの不安」の両方を独自に予測し、この予測は抑うつや自己報告による痛みの強度を統制しても維持されています
神経症傾向は精神障害と痛みの発症の両方に決定的な役割を果たしています
事例
リサ 25歳女性
絶え間ない全身の痛みと極度の疲労を訴え、少しでも負荷のかかる活動(5から10分間以上立つ、早歩き)をした後は、首、背中、肩が痛くなると語りました
痛みや疲労によりほとんどの身体活動を避け、痛みが耐え難くなって帰宅困難になる恐怖のために予定をキャンセルすることも多く、社会生活が狭まっていました
アセスメント
NRS 数値評定尺度
- 前週の全般的な痛みの程度を0から100で評価します
PASS-20 痛みに対する不安症状尺度
- 痛みへの恐怖と痛みに関する不安症状を測定します(認知、逃避/回避、恐怖、生理的不安)
治療アプローチ
モジュール1 目標を定め、動機づけを保つ
リサは「痛みから解放される」という目標だけを記入してセッションに現れました
治療者は協同して目標の具体化に取り組みました。「犬の散歩、運動療法の実施、美術学校への参加」といった特定の活動に焦点をあて具体化しました
次に目標達成に向けた一連のステップを検討しました。「治療セッションに参加する、美術学校の空き状況を調べる、週に1度は家から出る、近所を週に2度散歩する、毎日犬の散歩をする」というものでした
また痛みから完全に解放されるという目標が現実的に達成可能かを話し合いました。痛みは適応的な生活を過ごすために必要で、誰もが経験しているためです。リサの目標は、「より対処できるくらいに痛みを抑えること」に修正されました
治療者は不安の軽減にも取り組みたいか尋ねました
治療者は不安が学位の取得や、友人と時間を過ごすことを妨げていないか尋ねました
リサはそうした活動を主に妨げているものは、あくまで痛みと痛みへの不安であるという点にこだわりました
不安に取り組むために必要なステップは、「不安への気づきの練習、完璧主義的な行動を変える、不安や心配のために社会的状況を回避しない事」などです
モジュール2 感情を理解する
痛みは有害な刺激による組織損傷の可能性、またはその発生を示す信号です
痛みへの反応は、「大声をあげる、泣く、痛みを無視する」などの形で現れます
痛みが慢性(3か月以上)になり機能不全に陥ると、有害な刺激や継続的な組織の損傷がないにも関わらず、脳が痛みの信号を送り続けることがあります
治療の目標はこの痛みの信号伝達システムがうまく機能するように戻すことであり、完全に取り除くことではありません
モジュール3 感情へのマインドフルな気づき
一次感情と二次反応がどのように痛みや不安と関連しているかについて心理教育を受けました
リサには鋭く刺すような首の痛み(一次体験)を感じることがあり、その一次体験はほぼ瞬間的に不安と絶望感(二次反応)を引き起こしていました
治療者は痛みに対する断定が身体と身体機能への注意を高め、それが不安を強めるサイクルになっているのを観察するよう促しました
痛みに対する感情反応への気づきを練習するために、気分と痛みの誘導エクササイズに取り組みました
体に痛みを感じ始めるまでゆっくり手足を伸ばし、しばらくその感覚と感情反応を意識した後、再度身体を休める練習をしました
UPはいろいろなエクササイズをするけれど、実験的に痛みを誘発して、そこから生じる自動思考をモニタリングする、という課題が重要なように思う。慢性痛のCBTの方は悩み事の生活上の文脈から離れたエクササイズはしないんじゃないかな?痛みを下げるのでなく、痛みの行動への影響を和らげるという目標は共通している。「痛みを訴えてるから痛みを問題にする」、というわけではなくて、「痛みは生活に支障をきたしている一部であって、他の問題についてもアセスメントする」、というのがスタンスだ。精神疾患をもつ人は併存疾患を持っている人も多いので、治療のターゲットについて時間をかけて丁寧に話し合われている