「セラピストの技法」を読んでみる

 TRACE高宮は大人の方が1人で相談に来られることが多いのですが、たまに「家族療法を受けたい」と申し込まれる方がおられます

 そう言われると「家族療法はしていません」とまじめに答えそうになるのですが、クライエントさんの言う家族療法は、「家族でカウンセリングを受けたい」という意味であることが多いです

 振り返るとわたしがこれまでにしていた家族面接は、悩み事のある当人の問題の仕組みを明らかにして、ご家族に理解を促して、記録をお願いしたり、なにかしらのアドバイスをする、というようなことなのですが、それは個人カウンセリングの延長であって、家族を扱おうとする家族療法とは違いますね

 少し前に閉店するジュンク堂に行った時に、家族療法の本が目に留まり買っていました

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新版 セラピストの技法 システムズアプローチをマスターする

 家族療法で一番有名な先生です

 実は東豊先生の勉強をするのは全く初めてではなくて、今から4年前、職場の上司に借りてロールプレイのDVDを見たことがあります

 その時は東先生を見てもあまり上手には見えなかったんですね

 家族を前に東さんがずっとしゃべっておられて、それを見てると水に落ちたセミがバタバタもがいてように見えて、あまり上手には見えなかったんですね

 終始ノリノリでIPに対して、「君、今不安出てこなかった?」と言い出して、その子も、「今不安になりました」とか話を合わせ始めて、「それはないだろう…」としらけたのを憶えています

 まあでもそれは自分に家族療法の知識がなさ過ぎたと言うのが正確かもしれないので、また勉強に読んで書き残してみることにします

セラピストの技法

第1部 理屈編

 システムズアプローチ(SA)は、社会構成主義的なものの見方とシステム論、コミュニケーション論をベースにした現象理解のための1つの考え方、接近法です

 最大の特色は、「問題はない」「問題のない人はいない」と本気で考えていることです

 ただし、「とりあえずこれを問題にして」というスタンスをとることはあります

 「~であることにして」これの使い方になれることがSA習得のコツです

 方便的にそれらを問題であることにして、そこから問題持続システムの在り方に影響を与えようとします

 「問題である」と意味づけられた現象そのものが消失する、あるいは「問題である」との意味が消失します

 SAには「認知的な枠組み」と「関係の枠組み」があります

 SAは認知の枠組みが問題や症状の原因だなどとは全く思っていないので、それを理由に認知的な枠組みを変える必要を説くものではありません。これは認知療法との比較の上で非常に重要なポイントです

 認知的な枠組みを補強するエピソードを聞き続けていても、ジョイニングにはなっても新たなパターンを作ることにはなりません

認知的な枠組みを変える方法

  1. 例外を見つける、例外を問う
  2. 工夫を問う
  3. 円環的な質問を行う
  4. 外在化、影響相対化する質問を行う
  5. 新しい意味を付与する

 意図的にその枠組みに合致しないような出来事、エピソードに興味を持ち光を当てること、それが「例外を見つける、例外を問う」ということです

 本当は問題や問題のある人が好きな人でもなんちゃってSAを行うことが出来ますが、「外在化技法」に出会うとたちまち正体がばれてしまいます

 外在化が得意なセラピストはかなりSAの本質が身に付いた人です

 SAでは問題持続システムの一部としても「内在化と呼びうる認知的な枠組み」を見立てたので、その枠組みの変更を目的として外在化と称する会話をクライエントと行っているだけのことです

 クライエントによっては問題の内在化が出来て初めて問題解決システムがしっかりと機能すると言ったことも当然ありえます

 肯定的意味付けの真骨頂は「あなたは今のままでいい」、このメッセージを届けることです

 「あることを問題だとみて、変えようと努力するけども変わらない状態」、これが問題維持システムの本質的な在り様です

 「見方を変えるか努力の仕方を変えるか」、このどちらかが問題維持システムが変わることにつながります

 かなり上級クラスの技術ですが、「セラピストからの心理教育的な指導」もクライエントの認知的枠組みを変える一つです

 ただしこれらはセラピストの説得力、説明力、講義力といった能力が必要とされるので誰でも出来る方法であるとは言えません

 ジョイニングが出来たということは、セラピスト自身も問題維持システムの一員になれたということで、問題維持システムを操作する影響力を持てるに至ったと言うことです

 家族療法の掟は、「観察に基づく」と言う所ですね。本人が語る家族像から家族関係をわかった気にならないで、それは「認知の枠組み」としておくところが徹底的に重要なのかな。「ジョイニングでうまく入り込めると問題に関与できるようになる」とかの話はおもしろいかな。でもやっぱり、個人の問題を考えるかどうかで他の心理療法とは併用できないところはありますね。昔から思っていたのですが、家族療法って病院とかではどうなるんですかね。個人の病理を考える世界で家族療法はどうなるのか。問題はない、となると、病理モデルもない、となって研究も進まないんでしょうし。疾患に対するエビデンスとかってどうなってるのか、こういう話こそ研修でまとめて聞けたらいいですね。自分で調べるとめちゃ大変なので笑。結局のところ家族療法というよりも家族面接をしている人が多いのかな。それは心理療法全般にそうなのだけど

続きは次回、事例に進みます

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