伊藤絵美先生の認知再構成法のワークショップに参加してきたのでまた書いてみます
伊藤絵美と言えば認知行動療法をやっていて知らない人はいない
わたしも何冊も本持ってるし、ロールプレイのDVDも見たし、学生時代に講演を見に行ったし、学会でも良く見る
だけど、ワークショップに参加するのは初めてです
伊藤先生と言えば「事例で学ぶ認知行動療法」が代表作です
それまで日本のCBTには短期療法の印象が強かったのですが、この本でロングタームなCBTの事例を紹介されました
そして、マニュアルベースドな印象が強かったCBTに、カスタマイズ型のCBTを紹介されました
日本の心理士は半永久的にカウンセリングをする人が大多数なので、この本で始めて見るロングタームなCBTに親近感を感じた人は多かったと思う
わたしは行動療法から入ったのもあり、目的をもって短期間での改善を目指す方です
ロングタームなCBTは目指すカウンセリングが違うと思っていたのだけど、今回はオンラインで参加できるので参加してみることにしました
いつもながら重要点を書き残していきます
- 自動思考は環境とスキーマどちらからも発生します
- スキーマはアイデンティティです。いきなり変えると否定されたと感じます
- 自動思考をモニタリングすると、自分の反応を「状況と自己」の双方に帰属させることが出来るようになります
- 発達障がいの人も人の気持ちに気づく前に、自分の自動思考のモニタリングが大事です
- 自動思考についてのブレインストーミングは、アイデアを散らかすのが目的です
- 「主訴の同定→アセスメント→問題の同定→目標設定」と進みます
- 目標を図的にイメージさせます
- やる気を出すことを目標にはできません
- 取りあげる自動思考を決める際は、「この自動思考がなければどうか?」シュミレーションします
- 他の人ならどうするか?もっと短気な人なら?もっとおおらかな人なら?もっと謙虚な人なら?など、自分より悪い場合、良い場合どちらも考えます。
- フレンドクエッションは対話です。対話の中で本当に気がかりなことに気づきます
- 代替思考を作ったら、タイムマシンで当時の状況に戻り、代替思考を読み上げます
- 3クール(9か月)取りくめばホームワークで出来るようになります
- セッションとホームワークで3回、ホームワークで5-10回くらいすると、脳内で出来るようになります
気になったことを書いていきます。まず、ツールの「行動」に入れるものは死人テスト全く関係ないみたいだった(「仕事が手に着かない」「行動が止まる」など)。「怖い」は認知、「恐怖」は感情に入れたりもされてて、後の操作よりも概念化を重要視されてるのだと思った
伊藤先生のシートには「サポート資源とコーピング」が入ってるのだけど、わたしはカウンセリングで書いたことがない。「行動とサポート資源とコーピング」の違いがよくわからないけど、コーピングは問題の後に発生するものなのかな?考えていると、サポート資源やコーピングはポジティブな概念なので、「問題をそこに入れると問題でなくなる」、と言う使い方が出来るように思った。例えば「リストカット」なんかはそれ自体で問題だけど、コーピングに入れることで問題でなくなる、という使い方が出来る。
「主訴の同定→アセスメント→問題の同定→目標設定」と進む流れも、わたしはちょっと違う。アセスメントは循環的にやっていくので、順序を気にする意味はそこまでないのだけど、わたしの場合、「主訴のヒアリング→生活上の目標設定→アセスメント→問題の同定→治療上の目標設定」になるかな?わたしの場合、悩み事というのは全てを解消すればいいわけではなくて、その人望む「こうなれたら」という生活上の目標があって、それに支障になる悩みを問題にすればいいと思ってる。なので、悩み事をすべて扱うわけではないし、その人の主訴というものがあるとも思わない。まあでも、主訴に関する目標設定と生活上の目標設定と2つあると考えると特別変わりはないかもしれない
ブレインストーミングでは、1つの自動思考に対して複数の質問をぶつけて進められていた。わたしは1つの自動思考に1番フィットする反論をぶつける練習をして、自分に合った代替思考の算出方法を学習することを目指す派なのだけど、カウンセラーが多数の質問方法を頭に入れておかないと柔軟でないので、自動思考への全部の質問を試してフィットするものを探す、と言う方法も、時間をかけて進めるのならいいのかもしれないと思った
フレンドクエッションを対話で進めるというのも独特だった。わたしの場合は実用性重視なので、困っているその時にどんなことが出来るようになるといいかを重視するのだけど、伊藤先生のすすめ方は対話というセッション内での体験的なワークが治療的に作用しているように思えた
最終的な代替思考は「助言、励まし」が多かったのも印象的だった。わたしの場合は、「Aと思ったけれどBだと思う」のような自問自答の形に収まることが多い。これは前段階の過程に違いがあって、伊藤先生の方法では、自分の中に対象をおいて、その対象と自分との対話の中から代替思考を算出するのだけど、わたしの場合は、自分の思考を自分で検討するという自問自答の過程から算出されているからなのだと思う。しかしよくよく考えてみると、認知再構成法は思考の変容よりも、その後の行動につなげてなんぼのようなところがあるので、代替思考の内容の違いはそこまで問題にしなくていいのかもしれないとも思った
自動思考の検討は、「その状況に対して別の捉え方は出来ないか」という思考内容の検討と、「その思考を持っているメリットデメリットはなにか」という思考の機能の検討の2つの方法があるとあらためて思った
という感想でした。130枚以上のスライドが手に入ったのが何よりも収穫だったので、折りをみて見返して考えようと思います