京都CBTセンターの「模擬面接で学ぶ認知行動療法セミナー」に参加したのでその感想を書いてみる
普通だったら、カウンセリングの研修に参加するってのはものすごいお金がかかるものだ
例えば今回の研修も現地で受けるとしたら、京都までの往復交通費、前泊するだろうから宿泊費、研修費、平日だとしたら1日は仕事を休まないといけないので、最低3、4万は費用がかかる所だ
それが今回は、なんと3000円で受けられた
家でのんびり空いた時間に録画が見れる、そしてさらに臨床心理士更新ポイントまでつくというお得企画だ
そんな企画なので参加者は500人とかになったらしい
会場費もいらない、資料もない、身内しか出演者もいないみたいなので、間違いなくぼろ儲けだったのだろう
今回出演してた岡村さん料崎さん坂田さんってのはわたしと同年代の人たちで、わたしはほぼ独学だけど、皆さんはCBTの本場でトレーニングを積んでる
どんな面接をするのか見れるというのを楽しみにしていた
今回の動画は何回か見返して勉強させてもらったので、細かーく感想を書いてみることにする
一応断っておくと、批判ではなく疑問と感想です
1ケース目 強迫症の初回面接 岡村さん
クライエントさんは、強迫症に理解あり、認知行動療法に意欲あり、人も良くコミュニケーションもとりやすいと、誰がやってもうまくいきそうな事例だった。岡村さんの人柄の良さで終始にこやかにカウンセリングは進み、そのまま終わった。
何か言うなら、このセッションの位置づけは何か?ということだ。ケースフォーミュレーションか?心理教育か?モニタリングを課題に出して終わったけど、この回に出てきた情報自体は使わない感じだったので、モニタリングの練習のセッションだったのかな?
強迫症に達者な先生だったら、このくらい理解と意欲のあるクライエントさんだと曝露課題を出すということもあるのだろうけれど、今後のセッション数にも余裕があるので、安全に進めたのだろうなと思った
あとは、強迫のモデルって確立されてると思うのだけど、岡村さんの出した課題は「どんな時に、どんなことを考えて、どんな強迫行為をしたかのモニタリング」としてたので、なんで強迫のモデルを使ってモニタリングしないのか気になったかな
2ケース目 うつ病の初回面接 料崎さん
2ケース目はうつ病の人の「やる気がおきない」という困りごと。一転してこちらは、「進められたから来た」という感じでコミュニケーションがとりにくそうなケース。この役はシンプルにうつ病なのか?疑問だ。意欲低下はすっきりしないし手ごわいので、結構カウンセリング難しいよね。
面接。1日の生活、起きる時間、食事など聞いていくので、行動活性化かなーと思っていたらやっぱり行動活性化だった。
あえて言えば、なぜ行動活性化に行ったのか?その判断のプロセスがわからなかった。マニュアルに基づくCBTだったら、マニュアルでそう決まってるので行動活性化から入る、でいいのだけど、「やる気が出ない」という困りごとから始まり、それはどのように維持されているのかを概念化して、他の方法に行きつくこともあったと思う。
行動活性化は、「行動を変えて気分が変わる」というようなものなので、「やる気が出ないから出来ない」と言っている人に「やってみましょう」と言ってもなかなか乗ってくれないことも多いだろう。あんまり押すと反感を買うこともある。行動活性化をするにしても、マニュアルCBTのように、活動記録表を使って生活の活性化のようなものもあるし、第3世代のようにTRACモデルでフォーミュレーションすることも出来る。
標的行動として一日のどこが変わればいいかを話し合われていたけれど、クライエントは復職のこと言ってた気がしたので、復職につながる活動がいいんじゃないか?と思った。復職を目標にするのかの合意もとってなかったような記憶
行動活性化というと、活動と気分をつけるのが定番だと思うけれど、料崎さんは「意欲」をつけるように教示されてた。意欲は感情ではないと思うので、これをどう使うのか気になった。
終盤で出した課題に対して「つけられそうにない」とクライエントに言われた時に、「つけられる所だけでいい」とすぐに引いた所も気になった。この課題はしたほうがいいのか?しなくてもいいのか?モニタリングの範囲を絞ることも出来ただろうし、大事なことなので頑張ってやってくるように動機づけることも出来たと思う。
中間企画 精神分析の人へのインタビュー
ツイッターでチラシを見た時、CBTの模擬面接に、精神分析の人がどんなコメントをするのかという企画だと思っていたのだけど、違った
インタビューは全体的に、CBTサイドが精神分析のことほとんど知らない感じだった。わたしは精神分析マニアがたくさんいる大学院にいたので、ある程度知ってるのだけど、精神分析に触れてないとこんな感じなのかな?
3ケース目 強迫症の2回目面接 坂田さん
1ケース目の強迫症のクライエントの2回目面接。
「自転車乗ってる時の確認の回数と、歩く時の確認の回数」とか、やたら絞った選択肢で質問を繰り出される。ホームワークで書いてきたものは基本使わない感じで、面接中に頑張って思い出してもらって話を進めていく。不思議な展開のさせ方だ。強迫症には曝露反応妨害法という型があるし、クライエントもそれを知って受けたくて来てる様子なのだけど、一向にそこに乗せようとはされない。普通に良くなることを普通にしたらいいように思うのだけど、なんか工夫を加えて進まない感じだ。
課題としては確認の妨害に力を入れて出されてるのだけど、たぶんこの場合は、不安の対象を問題にしないと進まないんじゃないかな?確認はゼロにしたらいいので。「焦ってる時だと課題がやりやすい」となんか促すのは、カウンセラーの思いつき?なのか?
坂田さんも、課題はやれるならやったらいいという感じで、クライエントのペースに任せすぎてる感じを受ける。クライエントのペースを尊重するってのは、カウンセリングの必要条件だけど、十分条件ではない。クライエントのペースに任せていたら良くなるのではなくて、適切な課題設定があって良くなるのだと思う
最終終わった後に、「強迫はあまりやったことがない」とぶっちゃけられてて笑、模擬面接(お手本)という企画じゃなかったのか?まあでも、CBTセンターくらい有名だったらスタッフ研修を動画にするだけでも稼げそうだから、それもありだなと思う
4ケース目 うつ病の2回目面接 坂田さん
2ケース目の2回目面接。
書いてきた課題を振り返りながら、食事をちゃんととれてるとか、生活リズムが整ってるとか、コツを教えて欲しいとか、やたら頻回に褒めながら進められる。解決志向アプローチ?みたいな展開かな?
行動活性化の標的行動としては、ゴルフと釣りとかになったみたいだけど、割と日常的ではない活動の類で、負担もかなり大きいと思うのだけど、なぜそこにしたのか?疑問だ。
クライエントとのコミュニケーションは、前半は褒めて乗せていく感じで、後半は行き詰まったのか一問一答で、カウンセリングの時間はセラピストが考える時間になってしまってる。CBTは困りごとがどのように起きているのかを理解して解決に向かうのだと思うのだけど、フォーミュレーションの共有なく解決を押し進めようとして、行き詰まったのだと思う。終盤でもクライエントは「活動して気分を変える」というところに乗ってなくて(第3世代では気分も変えないらしいけど)、「やる気がないからできない」というところに留まっているように見える。
最終的な課題は「土日庭いじりをする」になったけど、それが出来ると何に般化していくのか?次は何に向かうのか?疑問だった。土日の庭いじりが復職につながっていくのか?クライエントはそう思えているのかな?
5ケース目 うつ病の2回目面接 岡村さん
急きょ交替して同じクライエントを相手に岡村さんがカウンセラー。
面接の雰囲気が良く、詳しく話を聞き、クライエントに関心を示される。岡村さんもとにかく「ちょっとやってみる」押しで進められてて、クライエントは「やる気が出ないからできない」から抜け出せてる感じはない。最終課題設定を丸投げして「椅子に座ってネットする」をクライエントから引き出されたけど、その活動は何につながるのか?その課題を通してクライエントは何に気づくのか?疑問に感じながら見ていた
ライブ配信での模擬面接というチャレンジで楽しく拝見しました
CBTセンターの皆さんお疲れ様でした。
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