医学系学会の症例記載の規定から、カウンセリングの事例報告を考える

今年医学系の学会に発表に行くことになった

わたくしごとだけど医学系の学会で発表するのは初になる

あと10日で抄録を作らないとなので症例記載の規定を見ていたら、細かい決まりごとがあることを知る

引用は精神科医学会のウェブサイトから

精神科医学会

必須:年齢、性別、最終診断(ICD-10診断が必須)、家族歴、既往歴、生育・生活歴、現病歴、初診時所見、診断とその根拠、治療方針、治療経過、考察

必須ではない:主訴、病前性格

診断はICDを使うのがスタンダードみたい

DSMの評判があまり良くないってのはたまに聞く

名前を忘れたけど、アメリカの大規模な研究のリーダーがDSMを使わないって宣言したとかなんとか

診断は最終的に確定したものを書いて、その後に必要であれば初診時の所見を書くって流れがセオリーみたい

カウンセリングの事例発表だとプロセスを大事にする文化があるので、「初回面接で○○だったので最初はこう見立てた…」とあますところなく書いてる人が多い

わたしも大学院の時に習ってたけど、初回面接の後に見立てを考えるってのは心理のセオリーになってると思う

事例報告であればそうなのかもしれないけど、事例研究でもそのまま逐一時間に沿って書いてる人は多い

主訴が必須ではないってのも特徴的

治療者がどうアセスメントしたかの方が重視されてる

カウンセリングだったら語りを重視する人が多いので、本人の話した言葉のままに書かれてる方が多い

注意書きで、「症例の言葉そのままではなく、簡潔に記述する」って書いてあるので、何かしら過去の教訓があって規定されるに至ったんだと思われる

病前性格も必須じゃない

性格って精神医学的にあまり重視されなくなってるのかな

メランコリー親和型はうつ病の病前性格じゃない、とか聞いたことがある

一方でマニー型は実際にあるとか聞いたことあるけど

個人的には、性格を押さえると困りごとの予想がつくのでアセスメントするけど

細かいことが気になる、強迫的、完璧主義的、過剰適応的なタイプか、面倒くさがりでおっくうさを感じやすい、いい加減で大雑把なタイプか、終わったことを長い時間考え込みやすいタイプか、一人でいるのが多いか、人と接するのが好きかとか

例えば、同じように「うつ状態」という困りごとだとしても、過剰適応の結果うつっぽくなってる人だったら少し手を抜いて過ごせるようになるって方向に進むし、何をするにもおっくうになって進まなくなってる人だったらもう少しシャキッとして予定通りに過ごせるようになるって方向に進むと思う

後は自分の性格を自分でどうとらえているかとかも聞く

よくわかってるなら目標設定に進みやすいし、わかってないなら自分を知ることで改善が見られたりする

性格や傾向って臨床的には役に立ってるとわたしは思う

薬物療法に関しては「薬剤選択の理由・思考過程を明確に記述する」ってなってる

何をしたか、では不十分で、何を意図して何をしたのかを書きなさいということ

こういうことコメンテーターから指摘されたことがあった

あの先生は医学系の先生だったんだなあ

使用薬剤は「用いた全ての薬剤を記載する必要はなく、治療上重要な薬剤を記載する」ってなってる

つまり治療上重要な薬剤が自分でもわかってないときは議論にすらならない可能性がある

症例を検討するのでなく、見い出した臨床的な知見を検討するのが研究発表の場

当たり前っちゃ当たり前か