「模擬面接で学ぶ認知行動療法セミナー2」に参加した感想

 京都CBTセンターのオンラインセミナーに参加してきたので、いつもながら疑問と感想を書いてみようと思う
 同年代の人がやってるというのもあって、割とこの研修は楽しみにしています

 企画は前回と同じで模擬面接
 前回が初回面接で、今回は介入編という位置づけらしい
 「認知再構成」「曝露反応妨害法」「行動活性化」などのメジャーな言葉が並びなんか楽しそうだ


1ケース目 うつ病の男性への行動活性化 りょうざきさん

 カウンセリングは、活動記録表に「活動と憂うつの強さ」をつけてきた所から始まる。…なぜあえて、憂うつをつけたんだ?わたしも憂うつをつけてきてもらうことはあるけれど、マニュアルでも行動活性化と言えば楽しさや達成感をつけるのがスタンダードだ。ネガティブとポジティブを1次元の気分と考えるならあまり気にしなくていいのかもしれない。だけど、認知再構成法もそうだけど、「どの感情を問題とするか」というのは割と重要な所なのではと思う。わたしの場合、楽しさが良いか達成感が良いかでも結構悩んだりする。そして楽しさや達成感を感じる活動は正の強化で般化していくけれど、憂うつを和らげる行動は負の強化なので展開しづらいとも思う

 クライエントさんは、「活動記録を書いてきてない」「さっきまとめて書いた」と課題に全然乗ってきてないという設定。わたしは最初からクライエントが書いてこなかったという経験がないのだけど、この展開はあるあるなのか?りょうざきさんは心理教育し直して、「課題を書きやすい時間を決める」などされていた。

 最終出された課題は「朝6時に起きる」になった。やっぱり憂うつを問題にすると義務的な行動が課題になりやすいな。
 朝起きるところから組み立てようということみたいだけど、記録を見る限り日中の活動が何も詰まってないので、続かないんじゃないかと思う。
 朝起きれないクライエントさんには、「うつ症状で起きれない」って人もいるけれど、「早く起きると1日が長くなるから起きたくない」みたいな人も多い。楽しみなことでいいので正の強化で日中の活動を作っておいて、それから義務的な活動でパリッと引き締めていくのもいいと思う


企画 看護師と心理士の協同

 看護師の人を招いて心理師への要望など聞かれてた。「心理士が病棟に来ない」という精神科あるある?を看護師の人が言われてた。確かに心理士は個人主義というか人見知りが多いというのはあると思うけど、それが全部心理士の特性によるものかというとそうでもないと思う。精神科と言っても病棟の雰囲気はかなり違う。管理が中心の閉鎖病棟と、退院が目的の開放病棟は違う。そういった業務上の理由もあれば、看護師が女性だけか男性が中心にいるかなど、人間が作りだす入りにくさを感じる所もある。
 看護師さんって仕事中は忙しそうだし近づきにくいけど、個人で話すと結構いい人だったりする。なので、話しかけやすい人を1人つくって、その人を経由して病棟に関与できるようになる、ってのが人見知りにはおすすめ。それが師長とかだとなおさらいい。看護師さんは自分の担当する患者さんの管理に気を付けてるので、患者さんに接触するときは担当の看護師さんに許可をとる、とか必須だし、そうやって患者さんの様子をきいたりしてると仕事してるって思われていいと思う。


2ケース目 うつ病の男性への認知再構成法 岡村さん

 これを見たくて申し込んだ!うちのカウンセリングルームでも認知再構成法をやるので、自分との違いを見たかった。

 1ケース目のうつ病の男性の続きという設定。開始してすぐ模擬面接を止めて、「主訴が心配だと認知再構成しにくい」と岡村さんが力説される。未来への不安は検証しにくいということらしい。何となく言ってることはわかる。不安や恐怖が対象であれば和らげるよりも受け入れる方が最近の流行りだ。方法としては認知再構成法よりもエクスポージャー法になるかな。

 ただ、必ずしも心配には認知再構成法が適用できないかというとそうでもないとわたしは思う。「心配」という感情は不安や恐怖のようなハラハラとした感じではなく、どんよりとした覚醒度の低い感覚であって、それは憂うつや落ち込みなどの鬱々とした感覚に近いから、というのが一つだ。

 もう一つは、本人が「心配」と報告する時でも、実際にモニタリングしてみると心配でないということが多々ある。悩み事というのは思考も感情もごっちゃになっている。コラムに書きだしていくと感情と自動思考は複数出てくるし、結局のところ本当に困っている感情は心配じゃなかったりする。そして出てきたどれかしらの感情には認知再構成法が適用できる。

 面接はその後何度か打ち合わせをされて、最終は「食道でご飯を食べてるときの孤独感」をとりあげることにされた。…孤独も認知再構成難しそうだけど…

 ガイドの仕方を見ていると、自動思考の切り出し方がわたしと岡村さんとは違うと思った

わたしだと

自動思考
一人ぼっちなのかな → 「一人ぼっちだ」
自分は溶け込めない → (どうできないということか?具体的に書き直す)
話しかけないほうがいい → (話しかけるとこうなる、と書き直す)

みたいに切り出すと思う

 岡村さんは、認知再構成法は数回では変わらないので、カウンセラーがあまりガイドせずに繰り返し練習するものだ、と言われていた。そこもなんかわたしは違って、変わるときは1回でガラッと変わるのが認知再構成法だと思うし、それをできるだけ早く体験してもらえるほどクライエントの動機づけになる。最初におもしろいと思えるとか、思考が変わって気分が和らぐということを体験出来たら、クライエントも頑張って書いてこられる。逆に言うと、クライエントの努力に任せて適切にガイドしないと、モニタリングスキルも反証のスキルも全く身につかないのが認知再構成法だと思う。残りセッション数がどれだけもてるかでもガイドの仕方は変わる。「休職期間残り3か月、毎週カウンセリングに来ます」とかだとじっくりも出来るのかな。カウンセリングをどこでやるかというのもある。無料でそう簡単に中断しないならのんびり進めることもできるけれど、有料だと最初にパリッとしないと途切れやすいと思う。


3ケース目 社交不安症の男性への行動実験 坂田さん

 前回のセッションでケースフォーミュレーションを作成した次の回という設定。フォーミュレーションしてるのに、また情報を付け加える所から始められる。なぜだ?

 最終行動実験は、「みんなでいる時に口火を切って話す」という課題をカウンセラーから提案される。結構、その課題は難しくないか?クライエントも乗ってきてないように見える。

 社交不安症のケースフォーミュレーションは「自己イメージ」が中心に置かれているように、クライエントは、自分に対する主観的なイメージに没入してしまってる。なので評価の対象が自分の思考である間は何を実験しても検証され難い。まずやるべきは、評価の対象を自分の思考から周りの反応に移すことだ。わたしだったら「話している時の友人の表情や様子を観察してくる」みたいな所から始めて、周りの反応を見れるようになってから、何を検証する?というところに移る。話をするはなかなかハードル高いし、出来たという感覚を持つことで良くなっていくとしても、行動実験的な機序で良くなっていくのは期待しにくいように思う。

 行動実験には未来予想図というシートを使われていた。このシートの使い方もわたしとは違うんだなと思った。坂田さんは良い予想も悪い予想も複数あげられてたけれど、わたしは、「良い予想を1つ、悪い予想を1つ」にする。記述が多いと1つ1つの意味が薄れるというか、2択で詰めて検証した方がインパクトが大きい。このケースの場合だと「返事がある」「ない」くらいシンプルなのがいいと思う。そして予想のところを自分の思考や相手の思考にせずに、具体的なまわりの反応にするのがコツだと思う。


4ケース目 社交不安の行動実験 岡村さん

 3ケース目のセカンドセラピストをされる。時間軸を遡ったり、最悪の結果とか聞かれてた。現実と思考をわけるような、「そんなことは起きない」みたいな不合理感をうまく引き出されてた気がする


5ケース目 確認強迫への曝露反応妨害法 坂田さん

 買物時のレジ後の確認症状に対して曝露反応妨害法を導入する面接。坂田さんの経験から?「やりやすくする」ということを終始話題にされる。曝露というのはやりやすいよりも、「困難なことにチャレンジしていく」という方が発展していく気がするのだけど、どうなのか?

 課題としては、「落としたんじゃないか落としたんじゃないか」と思いながらレジを離れる、と教示されてた。認知再構成法もそうだけど、疑問文だといつまでも解消しない弱い不安が続くので、「落とした落とした」と言い切って受け入れる方がいいと思う。

 でもこのレジ課題のSUDはそもそもどのくらいなのか?不安はある程度上がらないと下がらないという法則があると思う…と思ってたら、終わって岡村さんが同じような解説をされてた。


 いろいろ疑問と感想を書いてみましたが、いつもながら同年代の人のカウンセリングは興味深いですね。わたしは基本独学なので、仲間がいるってのはうらやましいものです

 お疲れ様でした。

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