「つらいと言えない人がマインドフルネスとスキーマ療法をやってみた」まとめと感想

買い過ぎた本を読んでいってます

今日はこれ

つらいと言えない人がマインドフルネスとスキーマ療法をやってみた。

スキーマ療法で著名な伊藤絵美さんの本
伊藤先生の本を買うのもわたしもう6冊目です

伊藤先生と言えば一番有名な本は「事例で学ぶ認知行動療法」だと思う

 CBTと言えば短期的、マニュアル的な心理療法のイメージが強いのだけど、あの本で伊藤先生がカスタマイズ型のロングタームな事例を複数書かれて、ロングタームなカウンセリングをしている日本の心理士たちがCBTに関心を持ったと思う

 さらにあの本にはコラムが複数ついていて、次の日から印刷して使ってみた人も多かったのではないかと思う

 そんな背景があって伊藤先生はいろんな学派の人から親和性のある人だ

 そして今回の本はさらにさらにロングタームなスキーマ療法の話

 スキーマ療法、わたしも年に1回くらい関心を持つ時期があって、そのたびに覚える言葉の多さに挫折してきた

 今回の本は2つのカウンセリングの話で、主にスキーマ療法について書いていきます

2章 スキーマ療法

 2章は疼痛を主訴に来談した自己愛性パーソナリティ障害の男性への、CBTからマインドフルネス、スキーマ療法へ、4年間のカウンセリングの経過です。疼痛からパーソナリティ障害へ移っていく過程を読むと、診断ってのはこういう風にも役に立つのかー、ってのがわかります

 スキーマ療法で扱うのは、「人生早期に形成され、後にその人を生きづらくさせるスキーマ」です。これを「早期不適応的スキーマ」と呼びます。

 認知行動療法ではなかなか解消されない慢性的で強固な問題の背景には、早期不適応的スキーマがあると仮定します。

 スキーマ療法では、早期不適応的スキーマがなんであるかを理解し、乗り越え、慢性的な問題や生きづらさを解消し回復を図ります

 中核的感情欲求が子ども時代に満たされないと早期不適応的スキーマが形成されてしまいます

5つの中核的感情欲求

  1. 愛してもらいたい。守ってもらいたい。理解してもらいたい
  2. 有能な人間になりたい。いろんなことがうまくできるようになりたい
  3. 自分の感情や思いを自由に表現したい。自分の意思を大切にしたい
  4. 自由にのびのびと動きたい。楽しく遊びたい。生き生きと楽しみたい
  5. 自律性のある人間になりたい。ある程度自分をコントロールできるしっかりとした人間になりたい。

早期不適応的スキーマ

 人生早期に形成され、後にその人を生きづらくさせる深いレベルの認知。18のスキーマがあります

スキーマ療法のすすめ方

  1. 安全なイメージと安全な儀式
  2. 過去体験のヒアリング
     過去の自分に会いに行くような気持ちで取り組む必要があります。その時々の自分に直接会いに行き、その時々の自分がその体験をどのように感じていたのか、生々しく理解できるようなヒアリングである必要があります
  3. 早期不適応的スキーマの理解とスキーママップの作製
     自分の中の早期不適応的スキーマを理解し、生きづらさが見えてくると、しだいにスキーマを手放したくなります
  4. 様々な技法を用いてのハッピースキーマの形成
  5. 治療的再養育法
     中核的感情欲求を満たしてもらえなかった心の傷つきを癒し、ハッピースキーマを形成します。傷ついた子どもの部分を治療の中で健全な方向に育成していきます

スキーマモード

 今現在の感情状態。あるスキーマが活性化されると、様々な自動思考、気分、感情が発生します。それをひっくるめてモードと呼びます

5つのスキーマモード

  1. 傷ついた子どもモード
  2. 傷つける大人モード
  3. いただけない対処モード
  4. 幸せな子どもモード
  5. ヘルシーな大人モード

モードモデルに基づくスキーマ療法のすすめ方

傷ついた子どもモードに対して

 「さみしかったんだね。それはつらかったね。寂しい思いをさせちゃってごめんね。でももう大丈夫だよ。わたしがついているから。わたしが一緒にいるから」などの言葉を傷ついた子どもモードに話かけ、癒す

傷つける大人モードに対して

 「なんてひどいことを言うの!あなたの言い分を聞けば聞くほど傷つくばかりだから、これ以上聞きたくない!出ていって!もう2度と来ないで!」など言い、傷つけるオトナモードを撃退する

いただけない対処モードに対して

 「対処しようとしているのはわかるけれども、そのやり方では、本当の助けにはならないんだよね。引退してくれる?」など言い、いただけない対処モードに退いてもらう

安全なイメージ安全な儀式

 スキーマ療法では幼少期の痛かった体験にしっかり向きあうため、自分が壊れてしまわないように、痛みに耐えて進めていけるように準備します

安全なイメージ

  • 例 長男や次男が無事生まれて病院ですやすやと眠っていた時のイメージ
  • 例 妻が長男や次男を抱いて授乳している時のイメージ

安全な儀式

  • 例 幼少期の自分の写真を見る
  • 例 子どもたちが小さかった頃に撮った家族写真を見る


 本の中は事例になってるのだけど、かなりロングタームに、詳細に記録を残しながら進めるのもあってか、エピソードの書き出し方が素晴らしく出来てると思った。
 スキーマ療法の特徴は、問題の徹底的な対象化、徹底的な外在化、そしてバランスをとることや客観視を重視せず、徹底的に自分を守るということだと思う。
 傷ついた子どもの頃の自分を守るということには体験的な機序もあるのだと思うけれど、対人的な機序もあるのではないかと思う。つまり、人を見下して生きてきた人が、小さい頃の傷ついた自分に優しくすることを通して、人にやさしく接することへの抵抗を和らげ、人にやさしく接するスキルを獲得する、というのがあるように思った。

3章 慢性的ないきづらさ

 3章は心理士さんへの月1回のスーパービジョンの中で行ったスキーマ療法。本を読んで自分で勉強してもらいながら行うなど、2章のカウンセリングとは介入の姿勢が異なります。週1回は週1回なりに、月1回は月1回なりに、面接設定で内容を変えているところがさすがベテランだなと思った。スキーマ療法については2章で書いたので、マインドフルネスのワークで良さげなものを書き残しておきます

葉っぱのエクササイズ

  1. 流れる川をイメージする
  2. 流れる葉っぱをイメージする
  3. 注意を認知に向け、出てきた自動思考をキャッチし、流れる葉っぱに乗せる
  4. 自動思考を葉っぱに乗せ続ける


 「頭に浮かぶ言葉をすべて葉っぱに乗せる」というのが重要点です。すべてを乗せようとすることで気づきのスキルが上がると思う。確かフロイトも自由連想では、「思い浮かんだことをすべて話してください」と教示していたと思う。「思考を葉っぱに乗せて、流す」でなく、「先に葉っぱを流しておいて、そこに乗せる」というのも重要だなこれは。
 マインドフルネスは、全ての感覚を言語化していくことで、自動思考や身体感覚をキャッチする訓練になる。そして気づきに集中することでコントロールを手放し、感情的に反応しなくなるのだと思う

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