認知・行動療法学会46回大会 視聴まとめ

認知・行動療法学会に参加してます
といってもコロナの影響でオンライン開催なので、ビデオ見てるだけなのだけど

来年資格の更新があるので、参加してついでに発表するのが専門家の義務なのです

ポスター発表の105番と結構後ろの方なので、まあ目に付かないなこれは笑
グレーと藍色をベースに結構イケてると思ってたのだけど、たくさん並ぶとめちゃ地味で失敗した

学会は全てビデオ視聴なので、いつもなら横並びで見れない発表が全部見れます
ということで気になったものをパラパラと見て書いていきます

脳から見た認知行動療法とその近未来的展開

  • CBTの効果研究。2種類以上の抗うつ薬が効かなかったうつ病患者が、10回のCBTで50%が寛解
  • 思春期青年期の抗うつ薬使用は自殺リスク増大

思考感情衝動すべてをオペラント行動に還元する支援としての認知行動療法

「文脈」「確立操作」「弁別刺激」「セッティング事象」「行動」「結果事象」の、オペラント行動で把握することを主張されていた。この視覚的なケースフォーミュレーションは初めて見たのだけど、神村先生独自に作成したのかな?

SSTを例に挙げ、

文脈「委員会」
確立操作「不満あり」
弁別刺激「これもよろしく」
セッティング事象「このままだと押し付けあり」→行動「ちょっと待って」→結果事象「押し付け停止」

セッティング事象って初めて聞いたけど、先行事象と同じでいいのか?

  • 選択できない反応がレスポンデント
  • レスポンデントに指示を出さずにオペラントに支援を出す
  • マイナスの認知の反芻は将来への不安を緩和する
  • 諦めると深刻な不安なし


問題の事象がオペラントかレスポンデントか、ってことは、ちょっと本を読んだだけの人だとケースでは全くわからないと思う。例えば「選択」という行為は、結果とセットにするとオペラントだ。しかし結果を抜きに応答を求めても何かしらの「選択肢が思い浮かぶ」という現象は起きると思うので、それはレスポンデントなのではと思わなくもない。よく言われる、操作と状態、手続きと現象は異なることをあらためて考えていた。確立操作だと、「エサを抜く」という操作と「飢餓状態」という現象はことなるとかそういうことです

強迫症の認知行動療法の実際

古い研究だけど、強迫症のRCTのグラフがきれいすぎて感動した。このRCTは前から知っていたのだけど続きがあって、対象群に回っていた人たちにその後行動療法を実施したら、きれいに得点が下がっていたことを知った

山上先生の言葉、

「問題は何か、それが問題でなくなるには
誰の
何を対象にして
どのような目標に向けて
どのような方法を用いて治療すると良いか
それはどのように可能であるか」

久しぶりに見た

笑顔を育む眠育と家族の健康

睡眠負債の話

  • 4時間睡眠、6時間睡眠では数週間後も「眠気」は出ない
  • 4時間睡眠で1週間、6時間睡眠で2週間後、「パフォーマンス」は落ちる

睡眠を改善するためには、

  • 平均睡眠時間+30分でセットする
  • 15分ずつ伸ばす
  • 希少後30分朝日を浴びる
  • 夜間はつまらないテレビを見る
  • 1週間続ける

が大事とのことです

抑うつ研究の最前線

ここは自分の専門でもあるので真面目に全部見てみた

計算論的アプローチから見た抑うつと認知行動療法

アンへドニアには3種類ある

  1. 完了
  2. 動機づけ
  3. 意思決定

完了のアンへドニア

 好みに対応している。甘みに対する快度を評価した研究では、うつ病群と健常群に差なし

動機づけのアンへドニア

 欲することに対応している。「簡単な課題で100円」「難しい課題で200円」を選択すると、うつ病の人は、「努力が少なく報酬も少ない課題」を選ぶ傾向がある。

意思決定のアンへドニア

 学習に対応している。顔の写真を提示して、口の長さを評価する課題。長い、と評価すると報酬がもらえるように設定すると、長い方を選ぶようにバイアスが出るが、うつ病の人ではその反応バイアスが弱い。


単純に、報酬への感受性が下がってるという問題では?と思ってしまうのだけど、きっともっと意味のある話なのだろう。うつ病になると感情が動かなくなり、正の強化子を私的には正の強化子と感じられなくなっているので、外的な強化子を随伴させたり、カウンセラーと取り組むというルールをつくって、行動の頻度を上げていく、というのが行動活性化という方法だと思う。行動活性化をしたら楽しさを感じられるかというと必ずしもそうではないなとか考えていた。

ポジティブ価システムに焦点をあてた認知行動療法

  • 抑うつ研究は増えているが有病率には変わりがない
  • 研究が役に立ってない
  • うつ病は異質性が高い
  • 理論上うつ病には16400通りある
  • スターD研究に参加したうつ病患者の組み合わせは1030通りで、501通り(46.6%)は1人ずつしか示さない組み合わせだった

 「PoCot」という新しい心理療法の研究について話されてた。

  • うつ病になると、ネガティブシステムが強くポジティブシステムが弱くなる
  • ネガティブシステムとは「不快・脅威の回避」
  • ポジティブシステムとは「快・報酬への接近」

 うつ病になると、

  • コストを高く見積もる
  • 長期的な利益に動機づけられにくくなる
  • ポジティブな側面に注意が向きにくい
  • 過去や将来志向なしに「今ここ」を体験しにくい
  • ネガティブな結果は自分に帰属し、ポジティブな結果は自分以外に帰属しやすくなる
  • この辺りをカバーするのがPoCot

ゲームを利用した抑うつ症状に対する認知行動療法

「SPARX」というゲームを押されてた

総合討論

  • 子どもの抑うつ研究では、回復してもポジティブな自動思考は、うつ病群は健常群より低い。その結果はポジティブシステムに焦点をあてる介入ととどうすり合わせるか
  • ゲームの世界の行動のリアルへの般化の問題。実際はゲーム社会になりリアルで弱くなっている

発達障がい児支援の最前線

  • 「正の強化でお互いの行動が維持される社会」を行動分析学は目指す
  • 般化は自然に起こるものではない。般化を促進する技法をあらかじめ考えておく


谷先生のコメントを聞きたくて見てみた。谷先生と言えばコロキウムで初めてライブで見て「心理療法とは正の強化によって維持される生活の形成です」というようなことを言われてた。あれは印象的だった

インターネットを用いた認知行動療法の実際と課題

オンライン心理療法の倫理的課題

  • オンラインでは完全な機密保持は不可能であることを免責事項に明記する

社交不安症の遠隔CBT

  • 社交不安症への個人CBTの効果は集団CBTより大きい
  • NICEガイドラインでは、認知行動療法に乗らない場合に薬物治療を検討する
  • 診療報酬下でのCBT。2010年が最多で年々減っている
  • 自己学習モジュールで、対面と同等の効果が確認されている

指定討論

  • イギリスのオンラインカウンセリングは、カウンセラーが会ったことがあるか、会ったことのある人の紹介に限る
  • 全くあったことのない人をオンラインではやらない
  • イギリスではかなりの時間をかけて対面のトレーニングを積み、そしてさらにオンラインのトレーニングを積んだ人が始める。簡単に始められるものではない


TRACE高宮は店舗があるので、全国からお客さんを集める必要もないのだけど、オンラインに対応はしてるので見てみた。イギリスと比べると日本のオンラインカウンセリングは無法地帯なので、心理士が、手軽に誰でも空き時間に開業していく社会になっていってる。店舗をもつのは絶対的に利点だなーとか考えていた

認知行動療法のスーパービジョン

愛と勇気が治せる認知行動療法家を育てる

  • スーパービジョンでは、心理教育のポイントを伝える
  • カウンセリングの陪席許可率。病院100% 名古屋オフィス50% 東京オフィス20%


この数字わかる!TRACE高宮もトレーニングのためにカウンセリングは録音させてもらっているけれど、病院にいた頃はほぼ100%許可してもらえてたのに、開業してからは半分しか許可してもらえなくなった。病院とかってスタッフがたくさんいるのでそもそもプライバシーがないのだと思う。カウンセリングルームは、秘密の話をしに来る、という意味合いが強いのだと思う

ACTの立場から

  • ACTはエクササイズでなく「ACTの視点」を学ぶことが大事
  • ACTのスーパービジョンでは、「大切なことに近づく行動か離れる行動か」の弁別が問われる
  • 大切なことに向かう行動をする時に出会う障壁を考える

総合討論

  • カウンセリングがうまくいかないのは、情報収集と「心理教育の不足」が圧倒的
  • エクササイズのやり方、スキルはスーパービジョンでなくワークショップで学ぶもの
  • ケースコンサルテーションとスーパービジョンをわける

2019年度内山記念賞受賞者講演

幼児期の社会的スキルと問題行動が児童期の社会的スキルと抑うつに及ぼす影響

  • 児童青年期の抗うつ薬使用は自殺企図を高めるリスクがある
  • SSRIでも自殺念慮を高める可能性がある
  • 心理療法単独でも薬物療法と同等の効果がある
  • 抑うつ予防プログラムの対象年齢は、10から19歳がほとんど


オンライン開催ということもあって、事例の話がほとんどないですね。あとはオーディエンスがいないので緊張感がない。自主企画シンポジウムについてはまた後日書きます

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