前回に引き続いて自主シンポジウムのまとめです
Table of Contents
強迫症/性障害の行動分析学・学習理論
精神医学と行動分析学
- 80年代に、「統合失調症患者へのトークンエコノミー法」の論文を精神神経学雑誌に投稿したらボツになった。人権をないがしろにしていると言われた
- 当時は社会復帰させようとすることは患者を尊重していないとみられてた
- ハトの「自動反応形成」の実験
- 光呈示→5秒後エサが出る。そのうちハトは光をつつき始め、エサが出る時間を過ぎてもつつき続けるようになる
- 光をつつかなくても餌は出てくるので、これはオペラント条件づけではなくレスポンデント条件づけ
どう見てもオペラント行動に思えるのだけど、「実験的に操作できる変数がエサだけしかないからオペラントではない」と言ってるのではないかな?「ストレスがたまると攻撃的になる」という現象は動物であるし、強化子となるものはエサだけではない。「光をつつく→エサあり」→「光をつつく→つつく感覚あり」と随伴性が変わっていくこともあるし、時間の経過と共にエサの強化価が下がるということもあると思うのだけど。まあでも専門家がそういうのだからそうなのだろう
行動分析学から見た強迫
- 強迫性障害は単線でなく複線型の経路ではないか
- 先行刺激→生理的不快感 強迫観念 強迫行為 が独立して誘発されている複線モデルがあるのではないか
認知神経科学に基づく新たな介入法を探る
- 自己注目の神経科学的なアセスメント方法
- 「注意訓練ATT」に自己注目を誘発する刺激をランダムに入れる方法(話し声や心拍音)
この自己注目用のATTがおもしろかった!こういうのって、心理教育とかフォーミュレーションなしに練習しても効果ないのかな?
- 「Brain based CBT」
- 脳を用いることで手続きの異なる心理療法全体をまとめて理解出来る
これもおもしろかった!脳の活動領域の上に、CBTの技法を配置した「Brain based CBT」のマッピングが圧巻だった。広島の横山仁史先生という若手の先生、かなり優秀な方だと思った。
臨床場面における準シングルケースデザインの活用と臨床判断のプロセス
個人に介入を最適化する、というのがシングルケースデザインの主張みたいなのだけど、個人差をフラットに介入の効果を見るというのが、マニュアルベースドな介入やRCTという方法の良さなんじゃないのかな?情報収集やケースフォーミュレーションに個性を出さずに介入出来るということが。大規模研究で除外されてきた群に対して単一事例で効果を見ていく、とかならわかるのだけど。
事例発表はおもしろかった。アプリとかうちも使って行こうと思います。
臨床心理情報学 ― 臨床実践と研究に活かす情報技術 ―
「親密な他者とのVRセルフカウンセリング」というのが興味深かった。詳しくは説明がなかったのだけど、VRに映した家族や親友に相談をする、みたいなこと?
テクノロジーを駆使した認知行動療法:強み・可能性・課題
高階光梨さんという若手の研究者が「心理支援アプリマッチングサービス」というのを紹介されてた
強迫症の認知行動療法ユビキタス社会
- CBT実施医療機関は全国で6.2%
- 強迫症へのERPの反応率60%
- ERPベースのCBTへの反応性に、WAISの「語音整列」とAQの「コミュニケーション」が影響した
- 抑うつと不安の重症度は影響しない
- OCDのサブタイプは影響しない
- 性別は影響しない
言語と行動 発達障害・知的障害支援の現場から
- VB-MAPP(言語オペラント行動のアセスメントとプログラム)
- 言語行動とは他者によって強化される行動すべて
- 言葉でないコミュニケーションも言語行動
- 自己刺激行動は言語行動ではない
- マンドの先行刺激は動機
- タクトはコミュニケーションによって維持される
マインドフルネス・アプローチの奥行きースピリチュアリティ再考ー
スピリチュアリティとは
- 超越的な存在とのつながり
- 探求やつながりに伴われる体験や感情
- 超越的な考え方や実践を含む人間の体験
- 宗教は超越的な存在に基づく実践活動
- スピリチュアリティは日常に存在する、個人的で主観的な体験や態度。宗教を介さない
- 交通事故で最愛の人を失くすなど、自分にはコントロールできない問題に遭遇した時、自分の意思や思考を超えた存在が前提になる
- 自分は自分ではコントロールできない
- 人生は思い通りにならないことが起きる
- うつ病にマインドフルネスが効果があるのは、3回以上再発している人
- 自分の無力さを受け入れる
- 自分は相手に対して徹底的に無力である
- コントロールを手放すというコントロール
親子相互交流療法(PCIT)による保護者支援
- 1970年代に開発
- 反抗挑発症の幼児に有効
- 破壊的行動のある子どもが適用
- 対象は2から7歳
- 週1回60分、12から20回で終了
- 自由で創造的な遊びを行う。トランプやルールのある遊びは避ける
- タイムアウトの椅子、タイムアウトの部屋が備えてある
- 「子ども指向相互交流」と「親指向相互交流」からなる(子ども主導で遊ぶか親の指示に従うか)
子ども指向交互交流(CDI)
- 批判、指摘、質問、命令、指示、提案をしない。具体的賞賛を行う
- 「特別な時間」と子どもに教示し、特別な時間以外では質問も命令もしていい
- CDIではコミュニケーションの開始を子どもに移す
親指向相互交流(PDI)
- 親の指示を子どもが聞く
- 効果的な命令とタイムアウトを使う
- 間接的命令はしない(~しない?でなく、~しなさい、してくださいという)
- 指示に従えば具体的賞賛。従えないとタイムアウトの椅子へ座る
総合討論
- 親の受容度の測定はどうか(理論、方法、セラピストに対して)
- CDIで自信をもちセラピストを信頼できると、PDIやタイムアウトが受容される
- スキルを教え理論は入らない
この大会で一番系統的な発表だった。PCIT、セッションの構造と役割が素晴らしくしっかりしてる!親がスキルを身に付けるということを徹底的に行う
認知行動的睡眠支援の新たな可能性~痛みの緩和へ果たす睡眠の役割とは~
- 不眠は疼痛の発症リスクを2から3倍に高める
- 痛みへの耐性と痛みの閾値は違う
痛みには睡眠負債が関連している
- 不眠の改善は痛みの改善へさほど影響を与えない
- 不眠障害は主観的不眠
- 客観的な睡眠不足(睡眠負債)と痛みが関係するのではないか
- 睡眠時間が長くなると(10時間で)うつ症状が高まる
- 睡眠時間が7.8時間を超えると痛みが増える
- 睡眠時間と痛みはU字関係。睡眠負債が痛みの問題とはいいがたい
睡眠障害患者の抱える痛みと心理社会的支援
- 睡眠障害は大きく6つ。細かくわけると80種類ある
- 睡眠不足症候群は過眠障害に入る
- 痛みの測定はPHQ15とSF8を使う
- 過眠には、カファイン、モダフィニル
- 日中の覚醒度あげると痛みが緩和する
- 睡眠に関する心配が減ると日常生活が活動的になる
地域での睡眠健康支援
- 高齢者は中途覚醒が多い
- 高齢者13時~15時に30分居眠りして、夕方レクレーションをして覚醒をあげる
- 夕方以降の居眠りは加齢以上に悪い
- 「不眠症状の改善」には、夕方の運動、寝る前のリラックス、寝床に入る前にタバコを吸わないがよい
- 「睡眠時間の増加」には、午前中に光をあびる、朝食をよく噛んで食べるが良い
総合討論
- 寝ない方がパフォーマンスがいいと思っている人がいる
- 治療後どのくらい記録を続けるのか
- リラクセーション。良かったら課題にしなくても家でするようになる。今日はしてきませんでした、と言う時は良くなってきている時
- 痛みに意味を見出す(頑張ってきた証だ)、痛みを大事にしだすと気にならなくなる
この発表もかなり興味深かった。現状ちゃんと治せる悩み事はちゃんと勉強せななと思った
双極性障害に対する補助療法としての認知行動療法
双極性障害への推奨される治療
- APA 認知療法
- NICE 認知行動療法、対人関係療法
双極性障害の質問紙
- ISS(活性化、葛藤、ウェルビーイング、抑うつ)
- MRS(躁状態)
- 前駆症状に気づく(イライラ、多弁、仕事時間、買い物、睡眠時間)
- 気分モニタリング -10から+10
- リチウム単独では40%の再発を防ぐことが出来ない
- 副作用に耐えていると服薬コンプライアンスに障害がでる
- CBT実施で再発率半減する
- 躁とうつ双方向の気分を評価する
- 日本の精神科の診察は平均8.3分でアメリカより30分短い
パラパラと全発表を見てみた。今年はオンラインで事例がないのもあって、行動分析が減って認知行動療法が増えた印象。領域としては圧倒的に医療が多いですね。あとは、医者と共同でやってる人は、どうしても心理としての主張が控えめになるんだなーと考えていた。発表としてはPCITと睡眠がよかったと思います。