これからカウンセラーとして独立するにあたって、お金を払ってカウンセリングを受けるということを、自分自身が体験しないといけないと長いこと思っていた
そのことは以前にも書いている
しかしわたしの住んでいる地域柄カウンセリングを受けることが容易でないことと、この人からカウンセリングを受けたいと思えるカウンセラーを見つけることが出来なかった
そんな中今回学会参加することになり、名古屋で電車を乗り換えるなら竹内さんのカウンセリングを受けられることにふと気づいた
竹内成彦さんについては以前に紹介している
実際の所、開業した心理士のほとんどがアルバイトにいそしみながら開業カウンセリングを続けている中で、竹内さんは20年以上フルタイムの開業カウンセラーとして食べていっている
この事実を知って、竹内さんのカウンセリングを受けてみたいという思いがわたしにはあった
それと、カウンセリングの方法として最も王道の傾聴型のカウンセリングを体験したいと思ったのもある
今日はこのカウンセリング体験について書いていこうと思う
予約をするにあたってまず迷ったのが面接時間に60分と90分があること
わたしは初回面接でも50分以上時間をとることがないし、この先もその予定がない
普段私のカウンセリングを受けているクライエントが、50分間をどのように体験しているのかを知りたかったのもあって、60分で予約することにした
予約が決まってから当日までは何の心配もなく、楽しみでしょうがなかった
当日は移動時間が長かったのもあり、1時間余裕をもって金山駅に着いた
名古屋駅から1駅離れているので勝手にローカルなイメージをもっていたけど、予想以上に人が多かった
付近を歩いたり公園のベンチに横になったりしながら時間を過ごした
わたしは普段クライエントに許可をもらってカウンセリングの音声を記録させてもらっている
それは今後のカウンセリングに生かすためでもあるし、自分のトレーニングとしてでもある
今回音声をとらせてもらおうかどうかは迷った
カウンセリングを受けるほとんどのクライエントは、録音した音声を聞き返すことはせず、カウンセリングでの何かしらが心に残っていくのだと思う
音声を振り返ると、自分が何を言い、カウンセラーは何を言ったか、など会話の細かい部分や面接のプロセスを客観的に見ることはできるけど、その分経験に対して抱く主観的な体験は変わりにくくなり、それは多くの人が経験するカウンセリング体験と異なってしまうように思える
自分のためにカウンセリングを受けることと、勉強のためにカウンセリングを受けることを1度で得ることは難しいと思えたので、何も持たずに体験することにした
時間が近づき建物の前にくると、さすがにいくらか緊張してきた
頭の中では面接が始まって主訴を語る自分を何度もリハーサルしていた
そして、自分の話を聞いて、先生はどう思われるかの心配が思いのほか強くあることに気づき、これは面接前も面接中もずっとあった
そうして時間になり、カウンセリングが始まった
結果的に言うと、面接中にカウンセラーが言ったことや自分が言ったことの具体的なほとんど全てが記憶に残らず、あいだあいだに起きた気づきが言葉として残る、それがわたしのカウンセリング体験だった
自分との対話が多くの時間を占めていたのだと思う
自分の話した言葉は覚えていても、それに対してカウンセラーが何と言ったのかを覚えてない
スキナーの言語行動でいうと、カウンセリングでのクライエントの発話の多くは、自分自身に対するタクトとして機能している部分が多いのだと思う
いくつか残っていることを書いていく
主訴として何を話すかは迷った
独立への不安を話そうかとも思ったけど、そうするとコンサルになっていきそうに思えたのでやめて、もう長いこと仕事に熱意をもって取り組めないでいること、毎日毎日、早く時間がたつことを望みながら過ごしていることを話した
面接中最初に起きた気づきは、困りごとを話しながらも、自分はその解決を望んでいないことだった
相談に来ていながら相談を受けてもらおうと思っていないという状況に、面接中に気づいた瞬間のことは、今も憶えている
今回の主訴に関しては、来年独立するという解決が自分の中ですでに確立している悩みだったという見方もある
じゃあカウンセリングとしてすることがないかというとそうでもないと思う
今の時間が過ぎるのをじっと待つ状態とか、お金を貯めるために生活の端々で我慢することが多いとか、2次的なストレスをとりあげて進めることも出来ると思うし、わたしの普段のカウンセリングだったらそうすると思う
次に先生から、自分の役に立つ感じとか会社に貢献する感じが持てないのではと話された時に、そもそも会社に貢献したいという欲求をもったことがないことに気づいた
葛藤というよりも欠損から悩みが生まれている
この後話がどう進んだかは憶えていない
ただ、悩みのルーツに向かわず、未来に向かったように思う
会社に貢献したい思いはないけど、社会に利益を作り出したい思いはあるし、それが思うようにできないので独立しようと思っている自分がいる
カウンセリングを受けて、自分はすでに次のステージに進んでいて、そこから悩みが起きていると思えた
面接終盤では特別促された印象なく来年に向けての話になっていた
気づいたのは、お金を払ってカウンセリングに通うという経験をしておくことが役に立つと改めて思えたこと
このカウンセラーに受けたいと強く思える人でなくても、カウンセリングを受けるという経験は役に立つだろうと今は思えている
現実的な制約があって受けられるかは別だけど(わたしの住んでる所は冬になると雪で街から出れなくなる笑)
他にも個人的に考えることはあったけど、それはプライベートなことなので、書かないでおくことにする
残念だったのは終始モノローグだったことかな
カウンセラーとしての竹内さんの話の聞きかたを、もっと記憶に残せたらよかったなとは思う
傾聴型のカウンセリングを受けた一番の印象は、カウンセラーのミスが少ないことが思いのほか大事だということ
カウンセリングが終わってからも電車の中で考えが進んだ
カウンセラーがミスをしたり、余計なことを言ったり、やたら印象に残ることをしていたら、カウンセリング後の連想は進まないと思う
良い傾聴型のカウンセリングってのは、おいしい中華そばみたいなものだと思う
お店を出てしまうとその味は思い出せないけど、おいしかった記憶はある
味にインパクトがあって、強烈に記憶に残ることが売りの料理もあるけど、薄味であることがおいしい料理もある
カウンセリングってのはそんなものだと思った
カウンセラーとして勉強になったことをまとめると、
- クライエントはカウンセラーにどう思われるかを思いのほか気にしてるかもしれない
- 思ったことを何でもカウンセラーを気にせず話すことは難しい
- 面接中思ったことのほとんどをクライエントは話していないかもしれない
- カウンセリングのほとんどは具体的な記憶として残らないかもしれない
- クライエントが改善しようと思わないという状態は、意欲がないとか抵抗があるだけでなく、自分の中にすでに確立した方法をもっているのかもしれない
- カウンセリングの後も連想は続き、そこも含めてカウンセリングは進む
受けたい人は、お金を払えばだれでもカウンセリングを受けられるということのメリットは、思いのほかあると思った
病院でも開業でも、多くの所は継続相談を前提としないと受け付けないと思うけど、1回だけ受けてみたいとか、不定期で受けたいという人に答えて、効果や改善だけでなく「カウンセリングという体験を売る」という側面は、開業カウンセリングでもっと重視されていいと思う
私は今回カウンセリングを体験することが出来てよかったと思えたので、独立したら、1回だけの希望でもカウンセリングを受けられるサービスを作ろうと思う