「慢性痛の認知行動療法マニュアル」を読んでみる

 慢性痛の認知行動療法マニュアルが発行されたと知ったので読んでみました
 慢性痛という疾患名になるとカウンセリングではあまり見る機会がないのだけど、「痛みの問題」と思うと使える所は多いように思います

 そういえば今年の抱負を書くと言いながら書いてないのですが、今年は本を読んで文章にまとめてを去年よりやっていこうと思います
 うつと社交不安についてはうちに来たらどんなカウンセリングをするか書いているので、近いうちに強迫と不登校について書く予定です

 振り返ると昨年は研修によく参加した1年でした
 臨床心理士という資格は更新制なので、5年で15ポイントとらないと更新できません
 5時間の研修に参加したら2ポイントもらえると言うのがスタンダードなのですが、わたしは去年1年で5年分のポイントをとり終わってしまったので、今年は極力研修には出ずに昨年買い過ぎた本達を読んでいこうと思います

 なんか、心理士さんの中には5年で更新ポイントが貯まらない人もいるみたいなのですが、言い換えるとそれは年に1回も学会も研修も出ていないと言うことなので、どうなってるんでしょうね?


ではマニュアルから重要点を抜き出して感想を書いてみます
低強度マニュアル(6セッション)と高強度マニュアル(16セッション)が作られてるみたいなのでどちらも読んでみます

慢性痛の認知行動療法(低強度マニュアル)

セッション1 目標設定

  • 慢性痛の認知行動療法は、痛みを除去するのでなく、活動性をあげて生活の質を改善するように計画されています
  • 痛みをきっかけとした、認知、行動、気分、身体反応の循環をみます

セッション2 心理教育

  • 慢性疼痛を有する患者さんは、一般人口の13~24%です
  • 怒りは交感神経を更新させ痛みを増強させる要因となります

セッション3 認知行動モデル

  • 慢性疼痛は特に「破局的認知」が関係しています

破局的認知

  • 痛みがもっとひどくなる
  • 痛みのせいで人生おしまいだ
  • 痛みはどうにもできない
  • 自分はこの痛みに耐えられない など

セッション4 リラクセーション

  • 筋緊張は痛みを強めることが多く、不安や落胆、ストレスを強めます
  • 思い切り笑うとその後自律神経が落ち着き、リラックスできます
  • 痛みを緩和するには腹式呼吸でお腹を使って思い切り笑うのが良いです

セッション5 安全行動分析

  • 痛みを避ける行動を「安全行動」と言います
  • 安全行動を繰り返すと、痛みが実際に起こりうるのか検証することが出来ません
  • 実際に行動してみて、予想と結果の違いを体験で知る必要があります


1番のポイントは、痛みを反応でなくきっかけとしてフォーミュレートするところかなと思う。痛みを制御すべき従属変数にすると行き詰まるので、痛みを先行刺激に置いて、痛みの刺激性制御力を弱める、というのが介入の目指すところのようです

慢性痛の認知行動療法(高強度マニュアル)

  • 16セッションで構成されています
  • 適宜順番を変えたり、同じセッションに取り組んだり、必要でなければ実施しないなど柔軟に使用できます

セッション

  1. 動機づけ・目標設定
  2. 心理教育
  3. ケースフォーミュレーション
  4. リラクセーション
  5. 注意シフト
  6. 安全行動分析
  7. 認知再構成
  8. 中間まとめ
  9. 運動イメージの鮮明化
  10. ビデオフィードバック
  11. イメージの書き直し(痛み記憶)
  12. ペーシングと行動実験
  13. 行動活性化
  14. 認知再構成(スキーマワーク)
  15. 再発予防
  16. まとめ・ふりかえり

慢性痛の評価尺度

痛みと苦悩の違い

  • 痛みは身体感覚の1つで、苦悩は痛みから生じる様々な反応です
  • 対処すべきは痛みの感覚そのものでなく、痛みから生じる苦悩の方です
  1. 主観的な痛みの強さの評価:Numerical Rating Scale(NRS)
     その⽇1⽇の痛みの平均を10点満点(0-10:最⼤の痛みが10)で評価します。最大の痛み、最小の痛み、通常時の痛みの3つを評価します
  2. 痛みの認知⾯の評価尺度:Pain Catastrophizing Scale (PCS)
     痛みを感じている時の考えや感情について。13項⽬です
  3. 疼痛⽣活障害尺度:Pain Disability Assessment Scale(PDAS)
     痛みが⽇常⽣活に及ぼしている障がい度について。20 項⽬です

目標設定

  1. 短期目標(セッション中盤2、3か月後までに達成したいこと)
  2. 中期目標(終結時4から5か月後に達成したいこと)
  3. 長期目標(1から2年後に達成したいこと)

怒りと疼痛の関係

  • 怒りは筋緊張を強め、痛みを増強します
  • 怒りを体験すると、否定的なことに注目しやすくなります
  • 活動量が減るとネガティブな気持ちが出やすくなります
  • 活動しないと筋肉が固くなり、身体反応として痛み物質が出ます

セッション5 注意シフトトレーニング

  1. 目を閉じて「痛い部位」に触れる
  2. さする、なでる、などいろいろな触り方を試してみる
  3. 痛み以外の感触を探る
  4. 触れた感じについて言葉で表現する(1分以上)
  5. 目を閉じて「痛い部位以外」に触れる
  6. 身の回りのものに触れる
  7. 触れた感じを言葉で表現する(2分以上。疼痛部位より長くとる)
  8. 痛い部位と痛い部位以外を2往復以上する
  9. 痛みへの注目度を0-100%で付け、トレーニング前後で比較する

セッション7 認知再構成

7コラム

  1. 状況(痛み)
  2. 感情
  3. 自動思考
  4. 支持する証拠
  5. 否定する証拠
  6. 前向きな対処の思考
  7. 感情の再評価

セッション9 運動イメージの鮮明化

  • 疼痛部位の動作をしている所をイメージします
  • イメージをすると、その動作に必要な部分の筋肉も反応を示します

セッション10 ビデオフィードバック

  • ミラーセラピーでは、健常な反対の部位が痛みなく動いていることを見ることで、喪失した部位が痛みなく動いているよう脳内に認識させ痛みを軽減させます

セッション11 イメージの書き直し

  • 疼痛患者の78%は、痛みを経験している時に最もつらい気持ちを引き起こすイメージ「インデックスイメージ」をもっています

セッション13 行動活性化

  • 痛みをもって活動しても最悪の事態にはならないことに気づきましょう
  • 行動活性化の目的は、否定的な予測の反証です

セッション14 認知再構成法(スキーマワーク)

慢性疼痛に特徴的な信念

  1. 痛みに対する警戒と無力感
  2. 条件付き信念
  3. 無条件の信念
  • 痛みに対する警戒と無力感、条件付き信念は行動活性化で対処可能な場合が多く、無条件の信念は認知操作の追加を検討する必要があります


 読み終わって感想を書いてみます

 毎回やることが変わる忙しいプログラムというのが感想です。技法が増え続けるCBTの世界で、それぞれの領域の著名な研究者の意見を採用しつつ、何とか16セッションくらいの短期のプログラムを作った、という感じなのかな笑。介入の対象としては、身体、感覚、注意、行動、思考と順繰りしています。

 セッション3のケースフォーミュレーションは社交不安症とパニック症のCBTモデルが援用されてます。中心に置く概念は、社交不安では自己注目、パニック症では破局的な死のイメージ、慢性痛では痛みへの注目になります。慢性痛ではさらに「痛みを強めるイメージ」が追加されていて、痛みを感じた状況で、「痛みを強めるイメージ」が起き、自動思考が生じる、とフォーミュレートされます。

 セッション5の注意シフトトレーニングは、意図的にエクササイズで練習をしてから、偶発的な状況、実際の生活の文脈で実践されます。エクササイズから生活の文脈で、という流れは、わたしもカウンセリングでうまくなれたらと思っている所です。問題の事象を実験的に扱える形で取り出せるようになれたらなと。

 セッション9の運動イメージの鮮明化は、痛みなく動かせるイメージを繰り返すことで、イメージと痛みの連合に消去をかけるということをしているのかな?16セッション通して、課題という名のいろんな理由を付けて動かすことを促している、と言うのが共通してしていることに思う。恐怖の強い不活動型の疼痛にはよく効きそうに思う。イメージを使ったエクササイズとかリハーサルってわたしも関心を持ってるところなんだけど、その道の専門家って誰になるんでしょうね?ワークショップとか実際の映像とか見る機会があればみたいのだけど。スポーツ心理学とかにあるのかなとか思う

 セッション11のイメージの書き直しでは、インデックスイメージに対して、どうだったらいいかを尋ね、良いイメージを思い描いてもらう、と言う手続きみたいだけど、それで書き直しになるのか?疑問だ。社交不安症のIRの手続きのような、人称を変えて語り直して、最後に統合するような手続きはされてないみたいです

 セッション13の行動活性化は、うつ病の行動活性化とは用いている理論が全く違うように思う。行動活性化というよりも行動実験的に使われてます

 セッション14のスキーマワークは単純にセッション7の追加のようで、特別な技法の変更はないように思う。無条件の信念に関しては、認知再構成法は思考の内容を基にして論理的に進めていくのが手続きなので、無条件の信念のようなその状況から論理的に導き出されていないものは積極的には扱わない、と言うのが私のやり方かな。じゃあ無条件の信念はどうやって変わるかというと、これまでと違う経験の積み重ねによっていつか変わるように思う。「自分はダメだ」「自分は嫌われている」みたいな漠然とした思い込みに認知再構成法を使うなら、過去を振り返ってダメだを支持しない証拠を集めるよりも、「自分はダメだ」を持っていることにメリットデメリット分析をかけて、不合理感を持たせ、これまでと違う行動をとり、出来た経験を積み重ねることで中長期的にダメだに変容をかけていくように思うのだけど、どうなんだろうか?

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