メモに取った重要情報と考えたことを書き残していきます
Table of Contents
大会長講演
認知療法・認知行動療法における個別性の意義について-身体症状症を例に-
身体症状症および関連症群
- (かつての)身体化障害、身体表現性障害、心気症の一部
- 変換症、転換性障害
- 病気不安症
- 時点有病率は5-12%です
- 不安、抑うつと複合していることが多いです
身体症状症の維持モデル
- 急性の痛み→身体の不快感→身体への注意→誤った解釈、結論づけ(重い病気の兆候、全く手に負えない)→不安→安全行動(安静にする、横になる、外出しない)
- 身体症状症の患者さんの40%が休職/退職になっていました
慢性疼痛の3分類
- 侵害受容性
- 神経障害性
- 非器質性疼痛
- 痛みには明確なバイオマーカーがなく可視化できません
- 治療の早期中断が多いです
- 初診のみでの中断が28%です
- 症状が不変だと半数が3か月以内に中断します
- 痛みには孤独などの心理社会的誘因があります
- 認知症による訴えの場合もあります
ポジティブ心理学的手法によるCBT
- 問題解決志向でなくウェルビーイング志向です
- 現在の問題ではなく将来の可能性を意識します
- コミュニケーションを重視します
- 現状を肯定します
- 良かったこと、楽しかったこと、ありがとうの記録をつけます
ポジティブ手法
- ポジティブ思考
- 楽しいコミュニケーション
- 強みの気づきと伸ばし
- 一生懸命
- 感謝
- 親切
- 絆の拡大
- 問題を視点とした会話から、人を視点とした会話へ
- 問題が相対的に小さなものになります
最後の、「問題が相対的に小さなものになる」、というのが割とカウンセリングでは大事なんだよなあ、とか思いました。主訴は移り変わるので目標設定の方が大事、とかもそんな話です
大会特別企画
成人期の注意欠如・多動症の認知行動療法
- ADHDの有病率は2%です
- 症状は12歳になる前から存在する必要があります
- ADHDは併存症が多いです
- 大人の38%に気分障害 47%に不安障害 18%にうつ病があります
ADHDのCBT
- 注意持続訓練
- 自己報酬マネジメント
- 認知再構成法
自己報酬マネジメント
- まずスケジュール帖にご褒美を1週間分書き込みます
- 「スケジュール帖を開ける+ご褒美が載っている」でスケジュール帖を開けることを習慣づけます
- ADHDのCBTは終了2か月後の効果が一番大きいです
- ガイドラインに沿うと「生活の構造化」が推奨されています
- スキーマ(わたしはダメ人間だなど)と、補償方略(隠す、先伸ばし、空想など)を聞いておくのも重要です
発達障がいってわたしは今見てないのだけど、自閉スペクトラム症だとTEECHとABAの対立とかあったと思う。TEECHは環境の方を構造化して、本人が出来るだけ困らないでいいようにする、ABAはエクスポージャーを用いて個体の環境への適応を目指す。情報処理を問題とするか感情障害を問題とするか、みたいなわけ方でもいいのかな?重度だと前者しかないのだろうけれど、社会を構造化すると言う方向には限界がある。ADHDは構造化が推奨されているみたいだけど、その辺りどうなのかな?日本と海外では社会環境も違うだろうから、とか考えていました
不登校を中心とした学校臨床における認知行動療法の実践
- 不登校とは年間30日以上欠席した者です
- 不登校は6年連続増加中です
- 不登校の認知行動療法には、「登校復帰を目指す手続き」と「自立や適応を目指す手続き」があります
不登校からの復帰
1.家での生活が続いたら
- 生活リズムを確認します
- 朝起きる時間をコントロールします
- 学校の時間割に合わせた生活をします
2.中期
- 家での生活は楽しすぎてないか?
- 学校に行く時間のゲームテレビマンガは制限します
- 散歩や運動など身体を動かします
- 何を避けて何に接近したいのか、将来どうなりたいかも扱います
3.学校復帰のタイミング
- 家での生活や別室登校が出来る理由、なぜこれが出来ているのか考えます
- 時期でなく、毎日の行動を基準に目標を立てます
不登校は、昼間の生活の基準がすでに家になってしまっている場合は、家での目標設定、課題設定から始める、というのが基本的に重要な部分だと思います。なので、慢性化しているとそれだけ時間がかかりますね。奥田先生でも休んだ期間の3倍かかるとか言われてました。不登校にカウントしない技術は発展してるみたいですけど、それでも不登校は増えてるんですね。わたしはスクールカウンセラーしてないのだけど、子どもは減り、スクールカウンセラーは増え、不登校は増えるって、どういうことなんだろうか
教育講演
中高生の定期検診の中に心の部分を盛り込んでいく試み/テクノロジ-と認知行動療法
- G7国の15~34歳の死因の1位が自殺なのは日本だけです
- アメリカの児童精神科医の数は8000人です
- 日本は371人です
- 健康診断→アプリによる介入KAT-Uを開発しています
スポ-ツとCBT
- トップアスリートの精神障害の発生率35%です
- 男子チームトップアスリートの抑うつや不安を呈する割合45%です
- 大学生アスリートのうち、抑うつや摂食障害を呈する割合25%です
- 成人期以降に何らかの精神疾患に罹患している者の内、50%は10代前半までに、75%は10代後半までに何らかの精神科的診断に該当しています
心的トラウマと認知行動療法
- 一生の間に何らかのトラウマ体験をする人60%です
- PTSDを罹患する人1.3%です
- トラウマ記憶の「恐怖(過覚醒)から出てくるのが恐怖症、パニック」
- 「無力、絶望(麻痺)から出てくるのが解離性障害」
- PTSDはその間を行ったり来たりする病態です
- 恐怖とは認知構造です
- 恐怖刺激「熊」
- 恐怖反応「心拍数の増加」
- 刺激に関連した意味「熊は危険」
- これらへの意味づけ「早い心拍数はわたしが怖がっていることを意味している」
- 恐怖構造の要素同士はつながっても「危険」とつながらなくなります
- 「危険なものは危険」「危険でないものは危険でない」となります
- PEでは回避されている記憶に安全に向き合います
- 今記憶を思い出すことは危険ではありません
- 過去のクライエントでなく、今つらい体験を話しているクライエントに共感します
- 自分の行動が合理的な反応だったことを思い出します
- 「自分がこうだと相手がこうなる」と言う認知を扱います
新型コロナウィルス(COVID-19)pandemic時代の認知行動療法:遠隔医療におけるCBTの可能性とその課題
ブレンド型CBT(人+Digital)
- 自宅学習で学び、対面で確認します
ブレンド型認知行動療法vs薬物療法の効果比較研究
- 抗うつ薬を6週以上、十分量服用しても中等症以上のうつ症状のある人が対象
- ブレンド型CBT 30分×12回
- 12週後の評価で、ブレンド型CBTに有意な効果が出ました
- (というか薬物治療を続けてもほとんど変化なし)
このブレンド型CBTから「対面とオンラインのブレンド」というアイデアが浮かんだのは大きな収穫でした。オンラインは補助的に用いるというイメージだったのだけど、TRACE高宮には何名か他県から通われている方もおられるので、遠方から来られる方にも頻度を落とさずにカウンセリングを受けてもらうためにブレンドは積極的に採用していこうと考えました
精神疾患患者の健康行動と行動変容
- 精神疾患を持つと2.2倍死亡リスクが増えます
- どの精神疾患も死亡リスクは増加します
- 時代とともに増加しています
- 最も多いのはアルコール使用による死亡です
- 10年20年スパンでは、自殺より生活習慣病による死亡率が伸びます
- 自殺、心血管疾患、がん、による死亡が多いです
- 肥満は精神疾患患者では2倍になります
- 高齢になると低体重が増えます。年齢より長期入院の影響が大きいと言えます
- 双極性障害、統合失調症患者は平均400キロカロリー過剰摂取しています
- 統合失調症患者は、1日8時間を座って過ごしています
- 若年女性患者では喫煙率が高いです
- 飲酒率は全年齢で精神疾患がある方の方が少ないです
- バランスをとった食事とうつ病は、20年追跡しても関連がありません
- 白肉(魚鶏)と赤肉(牛豚)の比較では、白肉を食べているとうつ病リスクは半減しました
- オメガ3系脂肪酸はうつと不安に有効です
- 過去の抗生剤(ペニシリン)の曝露は不安症、うつ病の発症リスクを増加させます
- 腸内環境は健康に影響します
- 運動とうつ病には関係がありますが、生理的な機序よりも、トレーニングなど心理的な機序の影響が考えられています
- 不安、うつ、ストレスいずれも禁煙者の方が良好です
疫学的なデータが豊富でおもしろい講演でした!研究者は趣味に走らずこういう発表をして欲しいです。治療法の開発は進んでいるはずなのに、死亡リスクは増え続けているというのはなかなか衝撃的な結果です。個人的に食事とうつ病の関係とか興味津々です。治療の手段としてカウンセリングは奥の手だと思いますし、カウンセリングの効果が出やすくするためにも食事で改善する部分は改善させておきたいですね。地中海食とかフィッシュオイルとかいいみたいです。
不眠の認知行動療法
- アメリカ成人の35%が不眠です
- 日本の21%が不眠です
- クリニック受診者の69%に不眠があります
- 高齢者の57%が不眠です
- 女性は男性の1.5倍、不眠有病率が高いです
不眠の原因
- 身体疾患 (病気や痛み)
- 生理的要因 (時差、不規則勤務、環境変化)
- 薬物的要因 (アルコール、カフェイン)
- 精神疾患 (うつ病、不安症)
- 心理的要因 (精神的ストレス、生活環境変化)
身体疾患
- レストレスレッグス症候群、睡眠時無呼吸症候群
- 睡眠薬を飲むと悪化の可能性がある
生理的要因
- 概日リズム睡眠覚醒障害
- 体内時計の遅れ、進みが原因
- 生活指導、高照度光療法、メラトニン受容体作動薬を考える
- 睡眠薬は効果不十分
睡眠薬
- ベンゾジアゼピン受容体作動薬
- メラトニン受容体作動薬
- オレキシン受容体拮抗薬
- 不眠が改善したらすぐに睡眠薬の減量に入ります
- 1錠の睡眠薬を減らすときでも22週かけて減らします
- 1,2週目は土曜日を半錠に減らします
- 3,4週目は1日おきに半錠にします
- 5,6週目は全日半錠にします
- 7,8週目は土曜日を1/4にします
- 9、10週目は1日おきを1/4にします…
- アメリカのガイドラインでは薬物治療より先に認知行動慮法が推奨されています
不眠の認知行動療法
- 治療目標 昼間の症状の改善
- 寝る前1時間喫煙を避けます
- 寝る前に体温のあがる行動(入浴、熱いものを飲む)はしません
睡眠力をあげる方法
1.睡眠環境・条件づけ
- 睡眠衛生 刺激コントロール法
2.ホメオスタシス 疲れれば眠くなる
- 睡眠制限法 刺激コントロール法
3.サーカディアンリズム 体内時計
- 睡眠制限法
刺激コントロール法
- 寝床(夜)―睡眠 条件づけ
- 寝床以外ですることを決めておきます
- 見ないように時計を外しておきます
睡眠制限法
- 寝床にいる時間を短く設定します
- 寝床の上にいることで疲れをとらないようにします
- 1週間ずつ15から30分伸ばしていく計画をします
- 1日おきではありません
私も薬物治療関心がある方なので、減薬のすすめ方とかおもしろいですね。多数の研究が明らかにしてきてますけれど、薬物治療と認知行動療法を並行するのがいいというのは堅い知見になってきています。
マインドフルネス認知療法のフロンティア-低強度、長期効果、職場での介入も含めて
- ボディスキャン(身体)
- 座瞑想(呼吸&身体)
- マンドフルヨガ(動きの中での身体感覚)
- 音と思考の瞑想(音、思考)
- 困難を探索する瞑想(不快な体験)
呼吸や身体の感覚
↓
思考・気分
↓
不快な思考・気分
- 不安になっても一緒にいられます
- 不快な体験に対する新たなかかわり方を教えてくれます
- 嫌悪を示しても不快なものは無くなりません
- 嫌悪を示すことで2次的苦痛が大きくなります
- 不快な体験に優しい好奇心を向けて観察します
マンドフルネスのエビデンス
うつ病の再発予防
- 通常治療 60週後再発66%
- 通常治療+マインドフルネス 再発37%
不安症への効果
- マインドフルネスの不安症への効果は出ていませんでしたが、最近出てきています
- 長期効果は出ていません
- マインドフルネスはうつ病の再発予防を除いてデータが十分ではありません
これもいい発表です。2次的苦痛の話とかそのままカウンセリングで使えます。「身体→思考→不快な体験」のエクサイズの順序とかも、知ってるだけで全く違います。マインドフルネスは不安症に対して効果が出てないらしいです。不安症は状況によって構成されているので、状況への接近を組み込まないと、マインドフルネスだけでは自分から接近していくようにはならない、と言うのが問題なのではないかな?とか考えました
うつ病のリカバリ-を目指した認知行動療法
うつ病の治療目標
- 治療反応 評価尺度の50%改善
- 寛解/回復 一定点数以下
- 機能的リカバリー 症状の消失+機能の回復
- 機能的リカバリーに到達してない場合、12か月以内に48%が再発します
- 治療開始後うつ症状は2か月で下がるが、機能障害は軽度から中等度で長期に残ります
- 「選択的注意、ワーキングメモリ―、長期記憶障害」は、症状回復後1,2年残存します
Aspiration
- 人がこころから願うこと
- 生活で大切なもの
- 人生で何がしたいのか
- 大人になったらどうなりたいと思っていたか
- リカバリーオリエンテッドCBT
- 「こころコンディショナー」ストレスケアアプリ
アメリカではベックの認知療法もリカバリーオリエンテッドになっているらしいです。ACTの影響か?と思ったけど、精神医療のアウトカムとして重視するものが変わった、と言うのが大きいみたいです。Aspirationとか、カウンセリングも精神性の方向に向かっていますね
子どもの認知行動療法-20年の歩み-
子どもの不安症とうつ病に対するエビデンス
不安症
- CBT(個人)
- CBT(親)、薬物療法
強迫症
- CBT(家族)
- CBT(個人、非対面)
PTSD
- CBT(個人+親、個人、集団)
- CBT(集団+親)、EMDR
うつ病児童
- 十分に効果のある治療なし
うつ病青年
- CBT(個人、非対面)、IPT(個人)
- IPT(集団)
子どもの不安症へのCBT
- 60から90分×8セッション
- 自然回復は12%に対し、CBTを受けると50%が回復しました
- 6か月後は66%が回復。終了後にも回復が続いていきます
8セッションで50%が診断基準からはずれる、と言うのは驚異的な改善です。そして疾患によって効果的な面接構造が違う、と言うのがおもしろいです。子どもの認知行動療法の効果が明らかになっても、なかなか普及しないのが残念なのですが、大学院教育でまずプレイセラピーを第1主義的に学ぶ、と言うのが問題なのだと思います。
慢性疼痛に対する認知行動療法的アプロ-チの変遷をたどる
- 痛みとは。不快でない体験、ちくりとする針でつつかれた感じは、痛みと呼ぶべきではありません
- フォーダイスは痛み行動に焦点をあて、痛み体験の信ぴょう性を疑問視しないこととしました
- 「長引く痛みが続いているために普通の生活ができない」と捉えると「長引く痛みを取り除きましょう」となります
- 「痛みに関連した行動が維持しているために普通の生活すらできない」と捉え、「普通の生活に必要な行動は何か?その行動を阻害しているものは?」と考えます
痛み行動
- 痛い痛いと訴える
- 脚を引きづる
- 痛み止めが欲しいという
- 病院を受診する
痛み行動の分類
- 苦痛や苦悩、不平を言う
- 音を立てる(うめく、ため息)
- 身体的な姿勢や動き(足を引きづる、さする、顔をしかめる)
- 機能的な制限や障害を示す(過剰に長い時間横になっている)
- 痛み行動は本人の意図と無関係に維持しています
最近勉強する機会の多い痛みの研究です。武藤先生はいい先生です。研究も実践もどちらも重視しておられます。問題を解決するときに、一旦人を置いて、現象の操作という観点から考えるのは重要です。慢性痛は痛みを「感覚と感情から構成されている」、ととられるところが重要です。痛み=感覚だと心理学では改善できませんからね
パート3に続きます