第20回日本認知療法・認知行動療法学会 視聴まとめ3

これで最後です

研究セミナー

精神療法のRCTの経験をシェアします

閾値下うつ状態に対する認知行動療法

  • 通常治療vs通常治療+電話CBT
  • 結果(4か月後)
  • BDIⅡ
  • 通常治療 17→16点
  • 通常治療+電話CBT 18→11点

薬物治療抵抗性うつ病に対するスマートフォン認知行動療法

  • 薬物治療変薬vs変薬+こころあぷり
  • 結果(9週後)
  • PHQ9
  • 変薬のみ 13→10
  • 変薬+こころアプリ 13→8
  • BDIⅡ
  • 変薬のみ 26→23
  • 変薬+こころアプリ 28→19
  • 寛解率
  • 変薬のみ 16%
  • 変薬+こころアプリ 30%
  • 反応率
  • 変薬のみ 22%
  • 変薬+こころアプリ 43%
  • 薬の副作用の評価
  • CBTを受けている方が、少なく評価する傾向がありました

一般演題

習慣逆転法に複数の認知行動療法技法を組み合わせた抜毛症治療プログラム開発の試み

抜毛症の2タイプ

1.Automaticタイプ

  • 前駆衝動がありません
  • 無自覚に症状が生じます

2.Focusedタイプ

  • 不快感や感情への反応として生じます
  • 葛藤的で、抑うつや不安と関連します
  • 意識を集中させて行っています
  • OCDには、cognitiveタイプ(認知プロセスが明白)と、motoricタイプ(衝動性、習慣性が強い)があります
  • OCDは不安を中心とした学習理論だけでは説明できなくなりました
  • 抜毛症には直前の不快感、直後の快感は必須ではなく、やめようとするけどやめれない、強迫性が本質です
  • 症状による分類だけでなく、症状持続の意味を心理社会的文脈で理解していくことが必要です

基本的な習慣逆転法

  1. 抜毛行動の意識化(5つの質問「いつ、どんな状況で、どのような姿勢で、どちらの手を使うか、どこの毛から抜き始めるか、どのようなことを感じているか」、セルフモニタリング、CBTモデル化)
  2. 拮抗反応の学習
  3. リラクセ-ション
  4. 新しい習慣を維持する(動機付け、目標確認、トークン)
  5. 汎化練習(イメージトレーニング、エクスポージャー)
  • 拮抗反応にトークンを合わせます
  • 習慣性の抜毛症にはトークンが効きます
  • 葛藤性には効きにくく、他行動が出ます
  • 葛藤性の抜毛症には、抜毛を無くすより、楽になる対処法を憶えます(SSTやストレスコーピング、感情の心理教育)


 習慣性の抜毛症にはトークンが効き、葛藤性には効きにくい、と言うのは一般的な知見なんだろうか?(トークンというか機序は拮抗反応の方だと思うけど)。習慣性は不快感がないので意識すれば止められて、葛藤性は不快感があるから意識しても止められない、と言うことなのかな?強迫症の治療だと、不安のある強迫には曝露が効いて、不安のない強迫には曝露が効きにくいと思うので、葛藤性の抜毛症こそ拮抗反応(曝露)が効きそうに思うのだけど、逆の知見になるみたいだ

システマティックレビュ-とメタ解析によるテレビ会議を用いた遠隔での認知行動療法の有効性検証

vCBT(テレビ会議CBT)vs消極的治療(通常治療、ウェイティングリスト、注意トレーニング)

  • 抑うつ
  • vCBTが有意に有効性が高いです
  • 不安
  • vCBTが有意に有効性が高いです
  • 脱落率
  • vCBTは0-33%です

うつ病のvCBTvs消極的治療

  • うつ病のCBTは有意に有効性が高いです

不安症のvCBTvs消極的治療

  • 不安症のCBTの方が有効性が高いが、有意差はありません

vCBTvs対面CBT

  • vCBTは対面CBTより有効性が小さいが、有意ではありません

うつ病のvCBTvs対面CBT

  • vCBTは対面CBTより有効性が高いが、有意差はありません

不安症のvCBTvs対面CBT

  • vCBTは対面CBTよりも有効性が低いです
  • 個々の研究はモジュールや介入頻度、回数のばらつきが大きいです
  • 反応率、寛解率はわかっていません


 この発表も興味深かったです。まだまだ研究数が十分ではないのだけど、精神疾患ごとに、オンラインカウンセリングがいいか対面が良いか変わるかもしれないと言う結果です。TRACE高宮は基本的に対面を推奨してるのだけど、これからは相談内容によって、オンラインを勧めたりしていくかもしれません

摂食障害の認知行動療法(Enhanced Cognitive Behavior Therapy)の試みとス-パ-バイズ過程

過食症への認知行動療法

  • 全20回、ステージ1では週2回行います
  1. ステージ1(0-7) 治療の基礎を確立し、早期の変化を達成する
  2. ステージ2(8-9) 進歩を吟味する、変化の障壁を特定する
  3. ステージ3(10-17) 主要な維持メカニズムに対処する
  4. ステージ4(18-20) 得られた変化の維持、再発を防止する
  • 体重ではなく過大評価が問題と考えます

過食症のスケール

  • EDE-Q
  • CIA 生活への影響
  • 体型より生活の充実度が自己評価に影響します
  • 体型以外の生活領域を強化します


 症例は社交不安症でよくやる「社会実験」がよかったとのことなのだけど、自己評価に対して不合理感がなくても、割と効くなるものなのかな?ということが気になりました

境界性パ-ソナリティ障害(BPD)傾向のある18歳女性の自傷に対する認知行動療法(CBT)に心理士と共に主治医も同席し奏功した一例

  • 支援者としての親の機能を強化します


長くなりましたが以上です。認知療法学会は毎年参加してるのだけど、データが豊富で結構好きな学会です(会場に行けばランチョンセミナーでお弁当もでる)。なかなか盛沢山な内容で、最新の知見をアップデート出来てよかった

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