続きを書いていきます
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シンポジウム
トラウマおよび周辺病態におけるトランスレーショナルリサーチ
- ネズミを使ったPTSDの実験
- 恐怖記憶の3分の想起では記憶は再固定化され、30分の想起では消去されました
- 消去とは記憶の忘却でなく、条件づけの記憶は残ったまま、条件に反応しなくていいという新しい学習です
PTSDというか恐怖症の実験?と言う印象でした。恐怖反応と回避行動はあるにしても、ネズミに記憶やフラッシュバックがあるのか?疑問です。記憶というのは内容がカテゴリーでもあるので、特定の内容の記憶に薬が効くということがあるのか?とかまじめに考えてました
わが国の全般不安症
- 抗うつ薬は量を増やしてもさほど効果は変わらず、有害事象は増えます
- 量を増やすよりほかの薬を試すべきと言われています
- 同じSNRIでも不安の併存によって効果が異なります
- ベンラファキシンでは不安症状の重い方が寛解率が高いです
- ヂュロキセチンでは不安症状の軽い方が寛解率が高いです
- 双極性障害の不安症併存は53.2%です
- うつ病の不安症併存は37.2%です
- 不安症が併存する程うつ病は寛解しにくくなります
併存疾患の数とうつ病の寛解率(おおよそ)
- 0 35%
- 1 30%
- 2 25%
- 3 15%
- 4 15%
- 不安症を併存すると変薬してもうつ病は寛解しにくいです
- 難治性うつ病とされている人には、双極性障害、不安症、パーソナリティ障害の併存が多いです
- うつ病に先行して不安症が発症していることは多いです
- 臨床判断では20%しか付かなかったものが、SCIDを使うと60%不安症の診断が付きました
- うつ病に全般性不安症(GAD)を合併すると難治化します
- うつ病の中で「不安性の苦痛を伴うもの」は54から78%あります
- GADの生涯併存疾患率は90.4%、時点併存疾患率は65%です
データ盛りだくさんで興味深いです。双極症の不安症併存率が50%超えていると言うことは、双極症の人がカウンセリングに来たらおおよそ不安症にも悩んでいると予想していいと思います
そしてお薬の話。そもそも精神科の薬は有効性が低く多剤併用になりがちです。抗うつ薬だと反応率5割、寛解率3割とかです(風邪をひいて病院で出された薬を飲んだのに、7割の人は治らないなんてないですよね)。それでもたくさん出せばあたるものは増えます。ではどのくらい増えるかというと、うつ病の人100人に薬を出すと、1剤目で寛解する人が30/100人、2剤目で21/70人、3剤目で15/49人、3つの薬を飲めば66%の人は治るように思うのですが、残念ながらそうではありません。最初に出された薬が効かない場合、残念ながら薬を変えても効果はさほど変わらないことが明らかになってきています。その理由が「併存疾患があると寛解が非常に難しくなる」と言う今回の話です。そして多くの人に併存疾患があります。
不安症・強迫症診療ガイドライン
- 英国精神薬理学会(BAP)、世界生物学的医学会(WFSBP)、英国国立医療術評価機構(NICE)、ドイツ(S3 guideline)、カナダ不安症学会(ADAC)など世界では精神疾患のガイドラインが発表されているが、日本には診療ガイドラインはありません
今、精神科の診療ガイドラインを作っているみたいですが、日本で行われた研究が少なく推奨できる治療法がほとんどないそうです
VUCA時代に備える一般市民への不安症啓発と専門家育成
精神疾患の一般認知度
- うつ病 94%
- パニック症 80%
- 社交不安症24%
- 強迫症 36%
- 全般性不安症 7%
- PTSD 75%
- 統合失調症 43%
- 診療報酬下での認知行動療法は年々算定されなくなっています
- 全国の病院の、うつ病治療での抗うつ薬単剤治療率は60.2%です
- 施設間差が大きいです
- 統合失調症治療における抗精神病薬単剤治療率は57.1%です
- 施設間差が大きいです
精神科ではまず医師が認知行動療法を算定できるようになったものの実施する人が増えず、看護師が算定できるようになったものの実施する人が増えず、次は心理士になるのでしょうけれど、まあおそらく、「認知行動療法」という名前の下でなんでもないものが行われるようになるだろうと思ってます
時間軸で見た不安症 -特に神経発達症との関連を中心に-
ASD(自閉スペクトラム症)の併存症
- ADHD 28%
- 不安症 20%
- うつ病 11%
- 双極症 5%
- 統合失調症 4%
- 強迫症 9%
- 睡眠覚醒障害 13%
成人のADHDとASDにおける併存症
- うつ病 ADHD37.3% ASD29.3% ADHD/ASD24.1%
- 強迫症 ADHD10% ASD8.6% ADHD/ASD24.1%
- 物質使用障害 ADHD26.6% ASD3.5% ADHD/ASD20.7%
ADHDと強迫症
- 衝動型のADHDでは、他害の心配と確認が多いです
- 不注意型のADHDでは、ミスをする不安と確認、ため込みが多いです
- ADHDにチックが見られる場合、対称性、物の配置のこだわりが多いです
- ASDの30~80%はADHDの診断を満たします
- ADHDの20~50%はASDの診断を満たします
- 行動の量的問題がADHDの問題で、行動の質的問題がASDの問題です
高校生の心療内科受診と中断
- 1回のみ受診29.9%、2回のみ受診39.3%でした
良いも悪いもない平均的なデータなんですけれど、子どもには病院すすめた方がいいのかわかりませんね…
不安と実存-どこに治療の視点を置くか-
- 医療につながってもガイドラインに沿った治療を受けられている患者は27%です
…不安症学会、データから医療の現状を批判的に発表したものが非常に多い気がするのですが、気のせいですかね
恐怖症に対するヴァーチャルリアリティを用いた曝露療法
- 社交不安症にはVRが適応しにくいです
- VRの開発にはお金がかかります
- 電車の撮影をするのに数千万円かかります
- 医療機器として認定を受けるのに数億円かかります
- 医療機器でないので「療法」「不安」などの用語が広告に使えません
- コストから病院では使ってもらえません
- 個人で使いたい人は多いので個人向けにシフトしていきます
グーグルアースみたいに映像を使えたらいいんでしょうけれど、権利の関係で色々難しくCGを作成しているみたいです
途中で、「恐怖症の治療に脱感作は必要ない」という昔からある話が出ていたのですが、それは消去には逆制止は必要ないと言う話で、手続きとしてない方が良いかは別だよなー、ドロップアウトとか減りそうにも思うなー、とか考えてました。ややこしい話ですが…
後はワークショップと研究発表が残ってるので、パラパラ見てまた書きます