2021年 うつ病学会&認知療法学会 参加まとめ3

 メモ書きを書き残していきます。大会のビックイベント、マインドフルネスのシーガルの講演についても書いてます

CT海外招待講演

マインドフルネス認知療法-新たなフロンティア-

モチベーションが低い人へはどうしたらいいか?

  • クライエントは何を求めてきているかを知ります
  • いくつかの治療選択肢を渡します
  • それほど悩んでいない場合は、あらゆる行動変容のスキルを教えます
  • マインドフルネスは様々な豊かさを与えることを思い出します

教育現場へはどう適用するか?

  • 11歳から実行機能が発達します

どういう人がベネフィットを受けてどういう人がマイナスを受けるか?

  • 反復性うつ、慢性疼痛は結果が出ています
  • どういったスキルを届けるのが役に立つのかを考えます
  • 誰に教えるのか、何を教えるのか、そして自分自身の適性について知ります

 シーガルのQ&Aです。講演も良かったのですが、それを押さえて藤澤先生の通訳がかっこよかったです

認知療法とも重なるマインドフルネス認知療法の特徴的な作用機序

  • 寛解後抗うつ薬を辞めると1年後の再発率は50%ですが、抗うつ薬を飲み続けると32%になりました
  • 認知療法を受けると21%になりました
  • 抗うつ薬と認知療法を併用すると15%になりました

なぜ寛解期はCBTでなくマインドフルネスなのか?

  • 寛解期には認知療法の素材になるようなネガティブな出来事がいつも起こるわけではありません
  • また認知療法のセラピストは急性期治療にリソースを割かれます
  • マインドフルネスと抗うつ薬維持療法には再発率に差がありません
  • マインドフルネスと認知療法では2年後の再発率に差がありません
  • 介入後、32の質問紙を2年間定期的にとり続け因子分析をかけると、脱中心化、ストレス耐性、残遺症状の3つが抽出されました
  • 治療終了後、脱中心化とストレス耐性は向上を続けましたが、残遺症状には変わりはありませんでした
  • ネガティブ感情への耐性が上がり、自分の体験を観察して見守れるようになりました
  • 終了時の脱中心化得点は再発なく過ごせるかを予測しました
  • 終了後、瞑想、呼吸法、思考記録表を続けている人はほとんどおらず、練習量は再発との直接的な関係はありませんでした
  • リラックスでなく、脱中心化について教えることが重要です

 世界の最先端を行く研究者が最新の研究を発表されてました。マインドフルネスはやたらといろいろな所で適用されている印象なのですが、「反復性うつ病の寛解期に行い、再発を防ぐ」というのが最も強いエビデンスです。

 相談に来られた方を見ていると、脱中心化が獲得できればいいだろうと思うことはあっても、マインドフルネスという手続きをしようと思うことがなかったのですが、こういう理由だったんだなーとか考えてました

CT教育講演

「うつ病のリカバリーを目指した認知行動療法」

  • 患者自身が最も重視することはうつ症状や機能の改善ではなく、ポジティブなメンタルヘルス(楽観主義、活動力、自信など)です

 これはなんか、患者さんが症状や機能の改善を重視してないわけでなく、なかなか寛解までいかないからという理由のように思いました

成人期ADHDの時間処理障害に焦点づけた認知行動療法

ADHDの支援の原則

  • 症状を治すのでなく、症状を補う対処を身に付けるのを目指します
  • ターゲットは行動です
  • 普通になることを目指さず、ADHDを活かして自分らしく生きることを目指します

学校で実施するメンタルヘルス予防プログラム

  • 小中高の暴力行為の発生件数は、7万8787件で最悪の件数を更新しています
  • いじめの認知件数は、61万2496件で過去最大です
  • 小中学校の不登校生徒数は、18万1272人で過去最大です
  • 不登校の要因で最も多いものは、無気力・不安で39.9%です
  • 中学1,2年生の4.9%がうつ病です

子どもの認知行動療法の効果指標

  • 不安(ShortCAS)
  • 抑うつ(DSRS-C)
  • 怒り(ASCA)
  • いらいら(ASI)
  • 自己効力感(GSESC-R):チャレンジ精神、安心
  • 総合的困難さ(SDQ):行為面、多動不注意、情緒面、仲間関係+向社会性
  • ユニバーサルタイプの介入は床効果が出やすいため効果が示されにくいです

 ユニバーサルタイプというのは子ども一般を対象にした、いわゆる予防的な介入です。それは確かに平均値で結果は出にくいでしょうから、臨床群へ移行した人数の割合とか出したらどうかなとか思いました。かいじじょう検定ってやつです

統合失調症/精神症に対する認知行動療法

  • 精神病や統合失調症のあらゆる人に提供します
  • NICEガイドラインによると、急性期を含めたあらゆる時期、入院中も開始可能です
  • 個人療法として最低16回以上で行うべきです
  • 効果量は小です
  • 陰性症状には効果が出にくいです
  • 抗精神病薬とCBTpでは効果に差がありません
  • 併用療法はCBTp単独より高い効果が出ています
  • しかしこれは海外の研究で、日本とは治療環境が違います
  • 仕事、教育、レジャー、スポーツ、家事、育児などの活動時間は、イギリスでは週63時間が平均です。30時間未満だと低い社会的機能の指標です

 「急性期から開始が推奨されている」「薬物治療とも効果に差がない」と言うのが興味深いです。日本の医療機関だと、統合失調症の急性期は、入院してまず保護室に入り薬物治療になるでしょう。薬物治療が遅れたら回復困難になるとよく言われてますが、実際の阻害要因は何なんでしょうね。

Recovery-Oriented Cognitive Therapy:CT-R

  • 重症精神疾患が対象です
  • 1人1人の望む人生や生活の達成に焦点をあてます
  • 学業、仕事、社会福祉、人間関係、地域生活、信仰を扱います
  • 興味、価値、熱意に関わる広い課題を扱います
  • 1回50分、最長18か月 週1回をベースに平均50.9回です
  • 陰性症状、陽性症状、社会機能に、6か月後から効果が見られました
  • 罹病期間の長い慢性群へは、18か月後から効果が見られ始めました

 最近ベック研究所で開発されてるものです。週1で50回、6か月後、長いと1年半後から効果が見られ始めるという、なかなかの長期介入です。

精神疾患患者の喫煙と行動変容

  • 精神疾患罹患者は平均22.2年寿命が失われ、死亡率は健常者の3倍になります
  • 精神疾患があると、若年女性の喫煙率は倍増します
  • 禁煙は不安、抑うつ、精神ストレスに0.3くらいの効果量を持ちます。抗うつ薬の半分くらいの効果量です
  • 母親の喫煙は子どものIQを低下させます。田中ビネーで20程度下がると言う報告があります

 精神疾患でなく、媒介要因になる喫煙の治療をすると言う発想です。数字に換算するとなかなかすごいですね。

医療従事者の苦悩を癒すのは -マインドフルネスとコンパッションを中心に-

  • 共感をすると疲労します
  • コンパッションと共感は使われる脳の部位が違います
  • 慈悲は他者を助けようと思うことです
  • 共感しながらも巻き込まれず、相手の苦しみを取り除いてあげたいと願います

不眠の認知行動療法

  • アメリカ成人の35%が不眠です
  • 日本では21%が不眠です
  • 病院を受診する人の69%に不眠があります
  • 高齢者の57%が不眠です
  • レストレスレッグス症候群、睡眠時無呼吸症候群には、睡眠薬は効果不十分です。悪化の可能性もあります
  • 概日リズム睡眠覚醒障害には睡眠薬は効果不十分です
  • 抗うつ薬SSRIは不眠の原因になることがあります
  • 不眠のCBT、4週間は治療者が付き添い、その後4週は自分で取り組みます

認知症の人に合わせた「行動活性化」

  • 2030年には世界の認知症患者は1億3500万人になります
  • 日本には500万人認知症患者がいます
  • 日本の認知症有病率は非常に高いです。世界は1%ですが日本は4%を超えています。2050年には8%を超えることが予測されています
  • 認知症の社会的コストは14兆円を超えています

学習療法(計算や音読など、1日30分、週5回)

  • コントロール群は1年後要介護3になっていましたが、介入群は要介護2を維持していました
  • 要介護度が1低いと、1人辺り20万円費用が下がります
  • 認知機能は実施直後は差がありましたが、1年経つと差がなくなっていました
  • 認知機能でなく、行動活性化が作用しているのではと考えられます

エビデンス治療からこぼれ落ちる摂食障害患者を救う、次の一手!:対人方略をキーワードとして、治療の未来を描く

  • 摂食障害の病理には、失感情や失体感が存在し、他の不安症等と同様、認知的、もしくは行動的な感情回避が生じていると考えられている。逆に行き詰まる基本感情が適切に処理され(感じられ)れば、二次反応である摂食障害の病的症状は、自然に消退する。
  • 対人関係療法は認知療法よりも古い1960年代に始まります
  • 効果発現が遅いが、1年後はCBTと同等、6年後はCBTを上回ります
  • 行動療法の効果は6年後低下しています
  • NICEガイドラインでは、成人にはCBT、子どもから青年にはFBTが推奨されています

家族だけ療法

  • 親がカウンセリングを受けます
  • 子どもへの受容共感傾聴を繰り返します
  • 摂食障害尺度 EDE-Q 
  • 母親自身も自分の母親から情緒的交流を受けていないことがあります
  • 目指すところは一次感情の回復です

 外からの刺客という感じで、おもしろい発表でした。本人でなく、親のコミュニケーションスキルを問題とすることで本人が治っていくそうです。考えたのは、親のコミュニケーションは症状を悪化させているのか?改善させられてないのか?どっちなのかというところです。前者であれば親と離れて暮らしてもよくなるでしょうし、後者であれば良くならないだろうから。摂食障害の世界には、濱中禎子さんというすごい専門家がいるそうです。家族だけ療法は慶応大学でやってるそうですよhttps://hc.nikkan-gendai.com/articles/275462

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