エキスパートに学ぶ精神科初診面接 「パニック障害」を見た感想

 

今日は2例目のパニック障害男性の初診面接動画を見る

演者は中尾智博、中村敬、松木邦裕

わたしが一番楽しみにしていたのがこの松木先生のデモンストレーションをみることだった

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中尾智博のデモンストレーション
中尾先生はとても丁寧で礼儀正しい。質問や提案を慎重に行っているのが伝わってくる。ワンダウンポジションってやつだと思う。患者も自然と自主的に話をされる。受診歴、経過、生活習慣など丁寧に聞いていかれる。状況を聞いて「ハードな生活ですね」などと伝えて問題意識を持たせている。パニック障害と確信されてるみたいだけど、確定はさけて慎重に治療を始めることにされた。
書籍の方で書かれているけど、発症から受診までの経過が短く、パニック発作を心理的な問題と捉える早さに何か背景があるのではと中尾先生は目をつけていたらしい。この点は新しい視点をもらった。また最後まで身体疾患の可能性を疑っていたらしい。姿勢は受容的でありながらも、慎重で、客観的に患者を見続ける。中尾先生、一緒の職場にいたら医学についていろいろ教えてくれそう

中村敬のデモンストレーション
中村先生の声はダンディーな感じで、専門家の雰囲気が強く出ている。森田療法がご専門らしいので、パニック障害は経験豊富なのだと思う。来談経路、発症からの経過、生活への支障、環境の変化や自分の性格の自覚など、治療に必要なことをなめらかに聞いていく。どんな話が出てきても想定内で、治療者が驚くことがないので患者も安心して話しができる。精神分析的な性格理解とまた違い、どちらかというと心理学的な性格理解をされる。終盤は予期不安や回避行動の範囲、全般性不安障害やうつ症状について情報をとり、ほぼパニック障害と確定されて病気の説明と治療まで説明された。
中村先生初めて見たけど、専門家ってのはこうあるものなんだと思った。

松木邦裕のデモンストレーション
松木先生は対面に向きあって座られる。声は少し高く聴きとりやすい。細かい相槌を打つことで、自分が理解に努めていることを患者に伝える。なんというか、聴診器で音を聞いているような感じだ。「電車は混んでましたか?それとも…」とセレクティブな質問を繰り出していく。「降りたら息ができるようになった」と、患者の先を読むように話をされる。一つの話に留まらず、治療者が主導権を握って話を変えていく。先の二人にはなかった家族関係や性格形成についての質問もされる。そこにも長くはとどまらず、仕事や趣味など次々と話を変えていかれる。まとめては新しい疑問を聞いていく。
途中で問題場面の般化を聞くんだけど、そこが心理的なやりとりに見えるのがおもしろい。書籍の方に解説されているけども、診断や患者のコミュニケーションのとり方、精神機能の水準に気を付けながらも、それと同時に力動的なアセスメント、症状と患者の関係の理解を驚くスピードで進めている。
わたしは松木先生の事例をいくつか読んだことがある。精神分析をするときの松木先生はロジャーズの面接とも似ていて、ひたすら解釈(理解)を伝えるということをされている印象があった。医者として質問を繰り返す松木先生は期待したイメージと違った。それと分析の時は「あなた」と読んでいたけど、今日の動画では「はしもとさん」と固有名詞で呼んでいた。分析をやるときの映像をなんとかみれないかと思うけど、先生のクライエントにならないと無理かなー

どの先生も患者に自由に話をさせすぎず、主導権を握られて話を進められていた。話題は一見行ったり来たりを繰り返しているように見えて、それでいて前の話に戻るわけでなく、一つ上の層にあがるように面接をされているように見えた

続きはまた次回