認知行動カウンセリングの実際を読む「13章 うつ」

よくわかる認知行動カウンセリングの実際: 面接の進め方とさまざまな感情への応用

今日も読んでいきます

うつ

 CBCでは「不健全な感情問題としてのうつ」と「健全な感情としての悲哀」とを区別します

 西欧諸国において大うつ病の診断を受けた人は、過去6か月では5,6人に1人の割合です

 CBCではうつの程度を弱めようとすることは生産的ではなく無駄だと考えます。真の喪失体験に直面した時に健全な悲哀を感じられるようにすることを目標とします

 悲哀はたとえ状況が変わらないとしてもその状況を見つめて、問題に取り組む気持ちをもたらします

 うつはその程度が小さくても、引きこもりや問題からの回避をもたらしてしまいます

うつに関するABCモデルのC

 憂うつ気分、意欲低下、楽しめなさ、社会的関係や日常的な活動からの引きこもり傾向がうつの特徴です

 うつに伴う主な認知的な結果は、「感情を変えることが出来ない、あるいは将来が暗くて絶望的だという結論に至ること」です

 うつで生じやすい評価は「僕は人間失格だ(あるいは、悪い人間だ、価値のない人間だ)」です

 自己批判的な評価から、自分は役に立たないとか、将来は絶望的だという結論に至りがちです

うつに関するABCモデルのA

 うつのクライエントが語る不幸な出来事はほとんどが喪失や失敗体験です。これらは「実際の体験とその記憶」だったり、「過去の喪失や失敗と関連したイメージ」だったり、「喪失や失敗だと思っている体験の振り返り」だったりします

 喪失は愛する人の死のように客観的にわかりやすいものばかりではないです。語られるのは、対人関係の破綻、失業、能力の喪失、機会の喪失などです

 失敗したと感じてうつになったと言っても、多くの場合は恥や罪悪感が関連しています

 愛する人に嫌われたことをあげて「ひどい扱いを受けたのでうつになった」というクライエントがいます。この場合は嫌われたことを不当だと思っているのであれば、「うつ」というよりも「傷つき」として整理する方がよいです

 うつ自体が別の感情的問題を引き起こす新たなAになります。失敗したことでうつになっていれば、敗者として振舞います。今度はこの振る舞いが新たな失敗体験となり、うつであることによってうつになります

うつに関するABCモデルのB

推論

 うつをもたらす推論をベックは「ネガティブ自動思考」「非機能的な思い込み」と呼びました。うつの推論は過去や現在の体験と関連しています

 CBCでは、失敗や喪失の責任を感じない時に起きるものにうつを分類します(失敗の責任を感じているならば、恥や罪悪感に近いです)

 自分には責任がないと思っているので、その状況を変える力がないと推測しています。例えば「僕に出来ることはない」といいます。自分を哀れむ形でうつになっていると、「こんなの不公平だ」といいます


「責任」と書いているのはコントロールの所在のようなものか?

評価

 うつの中核的評価で重要なものの1つは「自己批判」です。「僕は愛されないんだ」「僕には価値がないんだ」と決めつけます

 喪失や失敗に自分の責任はないと思いつつ、被害者として自分を責めます。この評価は強烈で、うつ感情を強固にしてしまいます

 次に「その状況に耐えられない」という評価が重要です

 うつから抜け出すための取り組みを勧めても、多くのクライエントが「それはつらすぎる」と言います

 うつの人すべてに共通する特徴として、「推論通りになる/する」ことへの強いこだわりがあります。

 どんな場合でも自分は失敗するはずがないと信じていれば、失敗した時に自分の人間性を否定してしまいますし、失敗をうまく克服したかつての経験を否定します

うつに対する中核的治療目標

 うつへのCBTで重要な介入戦略の1つとして「行動活性化」があります。しかし経験がうつにつながることもよくあります。そのため、CBCでは行動活性化に修正を加えています

 うつになりやすい人はひきこもり行動をとりやすいという特徴があります。何かを始める意欲を高められないということです。

 なにかを始める際には、それがその人の目標となり、それに伴う新しい代替信念が出来た時に活動を促すようにします

 信念への介入についてはCBTではネガティブ自動思考の根拠を検討します。気づいてもらえなかったとか無視されたという数回の体験から「誰も僕のことを好きではない」という推論を導くのはあまりにも極端な推論だと話し合います。この推論は「人から好かれないと幸せになれない」というこだわりから生じていると考えます

 CBCはCBTと違って、推論への介入の前に評価への介入を勧めます

 クライエントは誰かに好かれているという証拠があれば「表面的には」安心するかもしれません。表面的という言葉を使うのは、「周りの人から好かれないと幸せになれない」という生活上のこだわりに従って生活しているなら、好かれていないという出来事が1つでもあればうつに容易に戻ってしまうからです

 CBCでは最初にクライエントのこだわりを明確にすることを重視します。こだわりに対する確信を弱めることによって、ネガティブな出来事が起きた時でも同じような推論をしなくなると考えます

 うつの人は感情的な反応を面接場面で示しやすいものです。例えば、涙を流したり、激しく自己批判したりします。感情的な反応を十分に表現させることは、問題の土台にある認知を理解するうえでとても重要です

 うつへの早期対応の1つは、適切な目標を明確にすることです。「どのような気分になりたいですか?」と尋ねると多くのクライエントは、「幸せな気分になりたい」「何も感じないようになりたい」と即答します。幸せな気分や何も感じないことが役に立つと思うかどうかを尋ねます

 目標設定をしたら、ソクラテス式質問を用いて、問題に関する思考や信念を尋ね、具体例を探していきます

 「その時どんなことが頭に浮かんでいましたか?」という質問はなるべく使わないようにしています。そう質問してしまうと、その時の感情的体験から離れてしまいやすくなり、結果的に思考や信念にたどり着かなくなってしまうからです。感情が高まっている時は、その問題について素直に語ってもらうようにします

 評価の中でも「低い不快耐性」「自己批判」は比較的捕まえやすいです。しかし「こだわり」の明確化は難しいです。このこだわりの扱い方が介入の鍵になります。効果的なのは、「どうなるはずだと思っていたのですか?」「何が起こるべきではなかったと思っているのですか?」という質問を控えめに行うことです

 目標を設定し、推論と評価を明確にしたら、代替思考や代替信念を検討する作業に入ります。

 この段階では、クライエントが代替信念を信じることでなく、別の視点を受け入れることを期待します。その後代替信念がクライエントの感情的目標となるかを話し合います

 
 思考を算出し、それから確信度をあげていく。この辺りの手続きがこれまでしていた認知療法とはずいぶん異なるところだ

 こだわりと低い不快耐性信念は、うつ以外の問題でも出てくることがあります。しかしうつの場合は、全体的な自己評価(自己批判)に注意が必要です。自分を受け入れられる視点を探すように支援し、現実性、論理性、有用性を検討します。

 ネガティブ自己評価の検討は、うつでは特に重要です。この評価が無力感や絶望感といった認知をもたらすからであり、最も変化しにくい信念だからです。

全体的な自己評価への介入

 全体的な自己評価とは、恣意的な基準に基づいて自分自身を分類することです

 人の価値について自分なりの基準を持っていて、自分には価値がないという結論を出しています。この基準を明らかにすることが介入にとって有益です

 ポイントは、人は過去や現在の体験だけで決まるものではなく、明日以降の未来がどうなるかということは誰にもわからないということです


 ABCモデルのAとCは出来事と結果に決まっているわけでなく、出来事も思考も感情も全て入れることが出来る。一方でBに入るものは思考だけというところが認知モデルだなあと思う
 うつと傷つきを別の感情問題としてフォーミュレートするところが興味深い。結果的にうつの範囲は限定され、良くなっていくことになる

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