認知行動カウンセリングの実際を読む「14章 怒り」

よくわかる認知行動カウンセリングの実際: 面接の進め方とさまざまな感情への応用

怒り

 怒りの問題には診断基準はありませんが、間欠爆発症やパーソナリティ障害群などに含まれます

 怒りは「程度が強すぎる、持続時間が長すぎる、あるいは深刻で重大な態度として体験されるもの」と定義されています。このような定義は、程度を弱める方に向かい過ぎています

 論理情動行動療法では、健全な怒りと不健全な怒りを区別することが有益だと考えます

 不健全な怒りは、暴力や抑圧や健康問題といった自己破壊的な結果をもたらします。健全な怒りは、受容、正当な抗議と自己主張といった自己成長をもたらします

 CBCでは不健全な怒りの程度を弱めるだけではクライエントの役に立つとは考えません。程度が弱まっても依然として自己破壊的な方向への行動の動機づけは変わらないからです。

怒りのABCモデルのC

 不健全な怒りは生理的興奮と関連しています

 怒りの生理的興奮は不安とよく似ているので、闘争か逃走か反応状態になっています

 不健全な怒りを抑えてしまう人は、心の中で争いが起こり「罠にはまって何もできない感じ」を抱きます

 メタ感情、つまり、怒りを表出することへの恥や罪悪感を持っていると怒りが最も抑圧されやすいです

 怒りを持つと敵意を認知しやすい準備状態になります

 不健全な怒りの結果としての認知は、敵意、復讐、反抗です

 怒りの認知モデルの文献によると、敵意帰属バイアス(他者が敵意を持っていると考える傾向)は怒りを生み出す認知システムの中に含まれます。

 しかしCBCでは敵意帰属バイアスを不健全な怒りの認知的結果の1つとみなします。不健全な怒りを持つと、他者(あるいは状況)からの敵意を向けられているという認知が維持されると考えます

怒りに関するABCモデルのA

 怒りの感情は健全であっても不健全であっても欲求不満に言い換えられます。欲求不満をABCモデルで明確に理解することが重要です

 不健全な怒りのAは、他者に関するものだけではありません。内的な出来事、例えば体の痛みについて怒りが生じる場合もあります

 不健全な怒りのAとして典型的なテーマは、「個人的な目標の挫折」です。この目標の挫折には、「他者の行動のせい」という解釈が潜んでいるかもしれません

 怒りのAは、「対人関係での不当な扱い」と「自分の目標が妨げられる出来事」の2つに分類できます

 怒りはそれ自体がAになることがあります。怒りをAに置く時には、怒りが健全か不健全かを確認することが重要です

 自分の感情体験を受け入れられないクライエントには、感情体験で価値を決めるのでなく、無条件で自分を受け入れるように支援します

 自分に対する不健全な怒りを向けるクライエントは、自分が何も変えられないことについて落ち込んでいるかもしれません

怒りに関するABCモデルのB

推論

 怒っている時に生じている「推論」は、感情を加熱する「評価」の土台になります

 怒っている人は他者の行動に目を向け、他者の行動の不適切さとその人の意図に注目しています。「自分に対してひどい行動をとる人だ」と考えるためには、「相手が意図して行ったものであり、その責任は相手にある」と推論する必要があります

 推論の第2段階は他者の意図の推測です。「相手が意図的にひどいことをしているだけでなく、何らかの不利益を自分にもたらしている」と推測する段階です。この第2段階は他者の動機についての推論です。多くの人は、「他者が自分に悪意を持っているのでひどいことをするのだ」と結論付けます

 このような推論は、低い自尊感情の投影だとベックは指摘しました。実は自分自身のことをネガティブに捉えているのですが、他者からネガティブに思われているととらえてしまうのです

 推論の最終段階は、「他者の行動についての結論」です。結論は評価と直結しています。「あの人たちは私のことを大切にしていない」とまとめることが出来ます

 一方で、状況についての怒りの推論は異なります。ここで起きる中核的な推論プロセスは、状況や人生が不公平だというものです

評価

 評価が健全な感情か不健全な感情かを決定します。不健全な怒りの評価は、「こだわり」、「低い不快耐性」、「(他者、自己、状況に対する)全体的評価」です

 健全な怒りの評価は、こだわりのない指向性(好み)、高い不快耐性、(他者、自己、状況に対する)無条件の受容です

 対人関係でのこだわりは、「他者に大切にされなければならない」というこだわりです

 大切に扱われたいという欲求が、他者が守るべきルールやこだわりになります

 こだわりに反すると推論が生じ、他者評価が引き起こされます

 健全な怒りに伴う好みは願望(大切にされたい)です。「人から大切にされたいけれど、絶対にそうじゃないといけないわけではありません」になります

 ものや状況に対するこだわりもあります。不健全な怒りでは、望みではなく、こだわり、すべきこと、当然のこと、になります。例えば「状況(あるいは成果)が怒りを感じさせるようなものであってはならない」というルールを作ります。「友人知人も、ものや機械も、けして自分の目標達成を邪魔してはいけない」、というこだわりを持っています。自分の願いが叶うようにばかり人や状況は動きませんから、このこだわりは生活の役に立ちません

 状況に対するこだわりは、「失敗は許されない」というものです

 自分への怒りをもたらすこだわりは、状況に対するこだわりと内容が似ています。状況を自己の知識、行動、予測力に当てはめます

 こだわりの次に重要な評価は「低い不快耐性と全体的評価」です。これらは怒りの感情をさらに強めます。対人関係での怒りではどちらも見られ、状況に対する怒りでは低い不快耐性が見られます。自分に対する怒りではどちらも見られます。これらの評価は自分のこだわりが正しいと考えていることが条件です

 低い不快耐性の原則は、耐えられないと主張することです。これは多くの感情的問題の中核にあると思いますが、不健全な怒りで顕著です。健全な怒りをもたらす代替信念は「その経験は耐えることが難しいけれども、耐えられる」という高い不快耐性です

 自己や他者への不健全な怒りでは、自己や他者を見下すような全体的評価が生じます。うつの中核にある自己についての全体的評価と同じです

 他者に対する全体的評価は、まず自分の基準と矛盾した他者の行動(あるいは他者の考え方など)を批判し、それからその人の行動に基づいてその人全体を評価するという流れとなります

 このような非難が始まると、怒りの認知的な結果として、その人に対する敵意バイアスが生じます。相手を悪人だと確信していると、相手は自分のことを大切にしない行動をとるに違いないと予想し、相手を敵視続けます

怒りに対する中核的治療目標

 怒りへの介入の第1段階は、クライエントが自分の潜在的な問題を認められるように支援することです

 この段階ではクライエントのAに共謀しません。欲求不満状況での不健全な怒りを、クライエント自身がもたらしていることを自覚できるように促します。不健全な怒りがなくならなければ問題に対処することは難しく、不健全な怒りは問題解決に何の役にも立たないことを指摘します

 次に、不健全な怒りがもたらす行動が目標実現の障害になっていることを理解できるよう支援します

 多くのクライエントは、怒りによってエネルギーに満ち溢れた感じを抱くので自分を正当化しがちです

 暴力を振るってしまうのであれば、求めている「他者から大切にされること」を満たしてくれるかを振り返ってもらいます

 クライエントが健全な怒りの経験を思い出せないなら、健全な怒りとは何かについて教えることが必要です

 その後健全な怒りは問題に対する適切な解決に役立ち、仕方がないと受け入れることを伝えていきます

 怒りの処理は、Aを定め、Cと感情的な目標を設定してから、推論と評価を見つけて、論駁技法を使います


 怒りを困りごとにしたカウンセリングでは、モニタリングとメリットデメリットの勘案(怒りを持つことがいかにデメリットが多いか)で改善される印象だったのだけど、爆発的な怒りとかだともっとちゃんとフォーミュレートしないと難しいのだと思う。不安への介入とも似ているのだけど、怒りを扱う時は、「自分がどうなりたいか、どう振舞えるようになりたいか」の目標行動の設定が重要に思う。自発的に目標行動が出てこない時はモデリングも役に立つように思う。子どもとか特に、「どう振舞うことが適応的か」をそもそも知らないってこともあると思う。相手や状況に問題があるととらえている所を、自分次第でどうかできる、自分にコントロールの所在がある、と合意できるかどうか。怒りから怒り駆動行動に移る間でモニタリングが出来る頃には改善は見られてると思う。「認知行動モデルでは、敵意と捉えることで怒りが生じる」と考えるのに対して、「CBCでは、怒りを感じることで敵意に帰属しやすくなる」、とモデル化している所も興味深い

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