オンライン開催だったので参加してきました
見終わりましたが結構時間がかかりました。さすがに全部は無理でした。
いつもながら有益情報を書き残しておきます
Table of Contents
特別講演
自閉スペクトラム症の二次障害の成り立ちの理解
- ASの人は興味がないのに責任を伴う生活にストレスを感じます
育ち方の5タイプ
- 特性特異的教育タイプ
- 放任タイプ
- 過剰訓練タイプ
- 自主性過尊重タイプ
- ハラスメントタイプ
- ASの人はこだわりを持ちやすく、過剰にノルマ化しやすく、意欲低下が起こりやすいです
- 感覚過敏により興味が狭くなる。依存が起きやすくなります
- 良好な記憶保持とイマジネーションの欠如により、フラッシュバックが起きやすくなります
- ASの被害関係念慮は背景に低い自己評価が見られるのが特徴です
- こだわり→過剰適応→二次障害(強迫とうつ)
- インクルーシブ教育では、同じ場所にいるが活動はアレンジします
- ASの人は、やるべきことが増えてもやりたいことを削れません
- ストレス発散も増えるので、身の回りのことや睡眠時間が削れられます
- やりたいことから順にして、やるべきことは余った時間にすると良いです
- TOIRO 子育てアプリ
臨床的な話でおもしろかったです。「歳をとると発達特性は無くなり、2次障害が出て来る」と言われてたのだけど、それは発達特性が問題というのかは微妙に思いました
うつ病と双極性障害の鑑別診断の重要性と治療ガイドライン
- うつ病による経済損失は1兆2900億円です
- MES 躁病エピソードスクリーニングシート
- 「これまでの人生で、気分が高揚し、ハイテンションで、怒りっぽく、普段の調子を超えた時期が数日以上続いたことがありますか?」
- 1項目でも高い特異度があります
- 怒りっぽいうつ病、しゃべりすぎるうつ病、お金を使い過ぎるうつ病、夜更かしするうつ病は、混合性うつ病の可能性があります
- 抗うつ薬を服用せず自然回復する割合
- 3か月で63%、半年で77%、1年で85%、2年で88%です
- 抗うつ薬で6割、偽薬でも4割はかなり良くなります
- 頻回に通院する(週1)方が良くなりやすいです
うつ病を専門にする人には、うつ病は治りやすいと言う人と、治りにくいと言う人がおられますが、同じ結果をどう意味づけするかの違いなのは精神医学の良い所だと思います。途中で出てきた、「服薬しなくても2年で88%が回復する」と言う研究結果は初めて見た情報で、2000年の日本のデータだそうです。よく引用されるstarDでは、抗うつ薬を服用しても改善率5割、寛解率3割でうつ病は治りにくいと主張されていますが、これは単に測定期間の違いということでいいのかな?とか考えてました
行動療法士限定研修会
ナラティヴ・エクスポージャー・セラピー -人生史を語るトラウマ治療-
- 2000年代初頭に難民のPTSDを対象に開発されました
- 適応は長期反復的なトラウマです
- 曝露療法+証言療法
- 誕生から全人生を語ります
- 聞き手が語りを文章化し、次回加筆修正します
- 否定的認知には心理教育をします
- トラウマ記憶をそれぞれの時期に置いていきます
- 侵入症状が強いタイプは早期から楽になっていきます
- 回避解離傾向の強いタイプは切り離したものとつながりしんどさを感じます
- 併存症も良くなりますが、アルコール依存と薬物依存は軽減しにくいです
なかなか興味深い講演でした。花と石とキャンドルでトラウマを人生史にマッピングしていくところとか興味深いです。本を買おうとみてみたら、すでに絶版になってるみたいで、すごい値段になってたので一旦諦めました。結構な効果を出せてるのですが、普及されずに無くなっていくとは残念ですね…
自主企画シンポジウム
制御困難な思考や記憶を理解する-基礎研究から産業・労働分野における諸問題-
反芻のHEXAGONモデル
- Habit
- Executive functioning
- Abstract processing style
- Goal discrepancies
- Negative biases
- 反芻の実験
- ネガティブなシナリオを聞き、それをイメージする条件と、その意味を考える条件にわけます
- 状態不安はイメージで上がり、意味を考えてもそれほど上がりません
不安を消去するにはイメージが必要で、コーピングとしては意味を考えることが有効ということかな?
現場で出会うトラウマを身近に考える-トラウマへの気づきと認知行動療法的観点からの提言-
DSMの戦争に匹敵する稀なトラウマ
- ひったくり被害
- 身体接触を伴わない性的虐待
- 面前DV
- アナフィラキシーショック
- 自分の子どもがダンプにひかれて死んだ(目撃なし)
トラウマ支援マニュアル
- SAMHSA
以前は非日常的な体験をPTSDの診断基準にされていましたが、日常的な出来事でも認定されるようになってきてるみたいです。SAMHSAというマニュアルがおすすめされてました。検索するとネットに落ちてるので、読まれてみるといいと思います
マインドフルネスとセルフ・コンパッションの関係を探る
コンパッションとは
- 優しい気持ち
- 人間みな同じと言う感覚
- 今ここでの経験にバランスよい注意を向ける態度
3つのコンパッション
- 自己に対して
- 他者に対して
- 他者から自己に対して
コンパッションへの恐れ
- 他者に対するコンパッションへの恐れ
思い過ぎることは、人を軟弱にしたり付け込まれやすくする - 他者からのコンパッションへの恐れ
人が自分に優しかったり思いやりを示したりすると、不安や決まり悪さを感じる - 自己に対するコンパッションへの恐れ
自分を思いやりすぎると、自己批判をしなくなり、自分の欠点が露呈しそうで怖い
自殺念慮の心的過程
- 敗北感→エントラップメント(逃げ道がない感覚)→自殺念慮→自殺行動
- マインドフルネスにセルフコンパッションを追加したプログラム
- いきなり優しく迎え入れるのは難しい。コンパッションをネガティブ→ポジティブへの置き換えと捉えられることをさけたい。そのためセルフコンパッションはマインドフルネスより後半に導入しました
- 西洋のシェイムは恥ずかしさではなく、良心の呵責、悪いことをした敗北感です
- 日本のシェイムは八方ふさがりでなく、顔をつぶすやメンツを潰すニュアンスが強いです
- セルフコンパッションは躁症状には効果が見られず、反芻や心配に効果が見られています
- プログラムでは、自分が苦労することは他人でも苦労することを知ります
個人的には今大会はセルフコンパッションの情報が目的でした。コメンテーターの大谷彰先生という方がまさにカウンセラーという雰囲気で良かったです。西洋の恥と東洋の恥の違いの話が興味深い所でした
ケーススタディ
思春期の傷つき体験が契機となり長期に渡って対人交流が困難であった社交不安症当事者に対する認知行動療法 -イメージの書き換えを取り入れた事例-
マニュアル通りの介入はしたことがないのですが、結構最後の方になってから改善が見られるんだと知りました。
社交不安症で学習するソーシャルスキルとしては、いろんな場面を無難に乗り切れる汎用的なスキルが良いのか、あまり考えずに自由に振舞ったり自己開示したり出来るのがいいのか、どっちなんだろうか、ASがある人の場合は、前者が学習されると良くなりそうだな、とか考えてました
嘔吐恐怖を有する子育て中の20 代女性に対するエクスポージャー
- 脱フュージョンとは現実と思考のズレを知覚することです
- フィールエクササイズ ゆっくりお茶を飲むなどの方法があります
症例に関しては、知覚から予期する反応が嘔吐に偏っているので、嘔吐以外の反応レパートリーに増やせると良いかも、とか考えました
軽躁状態の認識の難しい双極Ⅱ型障害の女性にセルフモニタリングの工夫を行った事例
鈴木先生のコメントで、双極症状を、「うつの時 何もしない(好子の遮断化)→軽躁時の強化価が増える」と説明されててなるほどと思いました
感覚過剰反応を伴う強迫症への行動療法の症例報告 - 離れていても触れたような感覚がする強迫症状 -
強迫観念を侵入思考と意図的思考にわけてフォーミュレーションされていたのが勉強になりました
ワークショップ
行動活性化療法入門
行動活性化を教える先生は何人かおられますが、首藤先生の研修がおすすめです!圧倒的にわかりやすいです
- 健康的な行動。健康な人が行う普通の行動(人と会う、挨拶する、仕事する、顔を洗うなど)
- 抑うつ的な行動(人や会話を避ける、家や部屋で過ごすetc.)
- 健康行動は、気分の悪い時でも継続できる活動を選びます
行動活性化の研修は何度か受けてるので知識として新しいものはないのだけれど、心理教育が重要になると強調されていました。また、行動活性化はうつ症状を直接改善するよりも、OOLを改善させることを媒介してうつ症状を改善させるのではと言われてました
行動活性化の理屈としては、「行動して気分を切り替える」「気分に振り回されずとりたい行動をとる」「行動しても気分は悪くならないことを知る」、など色々あるのかなと考えていました
反芻への介入は、意図的な思考を対象にしているように思ったのだけど、侵入思考に対しては何かできるのか、機会があれば聞いてみたいと思いました。
コンパッション・フォーカスト・セラピーのエビデンスに基づく実践
- 個人カウンセリングよりもグループの方がエビデンスが豊富です
- グループで2時間のセッションを12週実施します
- 感情は何かの欲求が阻害された時に生じます
- 動物は自己イメージに悩みません
- コンパッションは優しさだけでなく、強さや勇気が必要です
- コラム。「思いやりを持った他者ならなんと言うか」を書きます
CFTの感情、動機づけの3つのシステム
- 脅威
- 安心
- 獲得
CFTのケースフォーミュレーション
- 過去の経験→カギとなる恐怖→対処/安全方略→望まない結果
CFTの特徴は、悩ましい感情を無くそうとするのでなく、他の感情を感じられるようになることと、脳の話が出て来るところに思います。エクササイズも盛りだくさんで、部分的にも使えそうな感じでした。理論的には安心、脅威、獲得の3つのバランスという感じでざっくりしているのですが、背景に脳の研究があることで説得力があるように思いました。
今年の学会はこれで終わりと思います。また来年参加したら書き残そうと思います